ロレンツォのオイル/命の詩
「“ごう慢”の語源はラテン語の“アロガレ”です。この言葉の本来の意味をご存じ? 自己を主張するという事です。これが語源です。自己を主張する事・・・私は子供の命を守るため闘う権利がある。どんな医者も研究者も基金財団も・・・私が子供を救うため質問する権利は奪えない!」実話に基づいた映画というのは、何と言っても内容に説得力がある。訴えようとする主題も明らかだし、いい加減な気持ちでは見られないという緊張感も生まれる。それだけに心理的にはかなり重い作品だ。日ごろ我々は息をしていることを意識していない。唾を呑み込むこと、排泄すること、会話すること、全てが日常的で自然な行為なのだ。 だが、抱えた病気によってはそれが非日常的で、そういう人たちが世の中には多く存在していることを忘れてはならない。また、そういう患者を抱えている家族の必死の努力、切なる願い、血反吐をはくほどの生活環境は、同じ状況にならない限り想像を絶するものがある。ならば周囲の者は何ができるだろう?正直、慰めの言葉すら不要かもしれない。しかし、せめてこの「ロレンツォのオイル」を観ることで、病気と闘う本人とその家族のことを少しでも理解する努力をし、共鳴しようではないか。ある日、小学校に通うロレンツォの奇異な行動により、担任からオドーネ夫妻に通達がある。原因が分からず医療機関で精密検査を行なったところ、なんと遺伝性の難病で副腎白質ジストロフィーであることが判明。症例が少なく不治の病とされていることもあり、医者からはさじを投げられ、オドーネ夫妻は治療法を探すために図書館に通いつめ、世界中の文献をあさるのだった。血の滲むような努力の結果、食餌療法として純粋なオイレン酸とエルカ酸の摂取が効果的であることを打ち出した。世の中には、せっかく授かった我が子を虐待する鬼畜のような親もいれば、「ロレンツォのオイル」に登場するロレンツォの両親のような身を削るほどの献身的な愛を注ぐ親もいる。何が幸せで何が不幸かなんて、簡単には計れるものではないけれど、我々はごくごく普通に生きて衣食住を与えられている環境に、感謝しなくてはならない。1992年公開【監督】ジョージ・ミラー【出演】ニック・ノルティ、スーザン・サランドンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)