チェ39歳別れの手紙
「我々は今、難しい局面にある。我々全員が何らかの過ちを犯したためだ。最悪の過ちは、私が薬を携行しなかったことだ。この闘争はある種の機会を与えてくれている。最も崇高な類の人間である“革命家”になる機会を。また人間として最も純粋な形で成熟する機会を」「もう学ぶ年じゃない。坂を転げ落ちるなら落ちるまでさ」本作を手掛けたのは、スティーブン・ソダーバーグ監督である。デビュー作は「セックスと嘘とビデオテープ」で、いきなりカンヌのパルムドール賞を受賞した経歴のある奇才なのだ。ヒット作には「オーシャンズ」シリーズなどがあり、大衆娯楽映画に求められる心地良いテンポを生み出すことを得意としておられる監督だと思っていた。だがそんなソダーバーグ監督の2000年以降の作品には、娯楽映画から離れた実験的な試みが各所に感じられる。二部作構成になっているうちの後編である「チェ39歳別れの手紙」は、言わずと知れたチェ・ゲバラの晩年をドキュメンタリータッチで表現している。1965年3月、夕食を済ましたチェ・ゲバラはその後、消息不明となる。ゲバラの行方を尋ねる民衆の世論が高まる中、返答に窮したカストロは、キューバ共産党中央委員会の場でゲバラがカストロ宛てに書いた手紙を読み上げることにした。そこで分かったのは、なんとゲバラは再び革命の旅に出るため、キューバを去るとのことであった。1966年11月にボリビアに入国したゲバラが目にしたもの、それは軍事独裁政権のもと、圧政と貧困に喘ぐ農民の姿であった。前作ではキューバ革命を成功させるまでを描いたストーリー展開のためか、ゲバラを中心としたその仲間の内に秘めた情熱・パワーが炸裂していくプロセスが非常に印象的だった。一方、本作ではブレないゲバラの信念だけが浮いて見えてしまうほど、周囲の兵士たちの士気の弱さ。あるいはキューバ革命の時とは状況が一変していることの危機感が見て取れた。余談だが、マット・デイモンがほんのチョイ役で出演している。ちゃんと見ていないと見逃してしまいそうなぐらい、一言二言のセリフでの出演だ。本作は、チェ・ゲバラの半生を知る上で、実に有益な資料となり得る作品なのだ。2009年公開【監督】スティーブン・ソダーバーグ【出演】ベニチオ・デル・トロまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)