三国志
『五虎将軍は劉備のため決死の覚悟で戦ったが、時勢は蜀に味方せず、一人また一人と倒れた。最初に討たれたのは勇猛なる関羽。次は張飛。・・・関羽の仇を討とうとして散った。五虎将軍で最後に一人残ったのが・・・常山の趙子龍だった』近年公開されて、世界的大成功を収めたジョン・ウー監督の「レッド・クリフ」前・後編の2作は、まだ記憶に新しい。その原作となった「三国志」は、日本においてもマンガやゲーム、あるいは小説などで幅広い層から支持されている。一体なぜ2000年も前の歴史がこれだけ話題を呼ぶのかと言えば、まずは登場するキャラクターの、それはそれは魅力的な、あるいは悪役然としてアクの強い、とにかく多彩な顔ぶれで彩られていることであろう。さらに、貧しい片田舎の、それこそ名もない若者が志しを持って天下統一のために命懸けで闘う勇壮な物語であることなどが、庶民の絶大な人気を誇る所以かもしれない。吟遊映人の愛読書でもある「三国志」は、一言では語れないほど雄大で、鮮烈で、そして重厚な旋律に奏でられている。もしも未読であれば、ぜひとも一読をおすすめしたい歴史小説である。とは言っても、その概略すら知らない方々には、まず登場人物のめくるめく多さに混乱されるに違いない。そのため、子ども騙しじゃないかとお叱りを受けそうだが、岩波少年文庫から出ている「三国志 上・中・下」の全3巻を読むのをおすすめしたい。小・中学生向きの平易に書かれていて、しかも大筋はしっかりと掴める。読むのはどうも苦手だという方々、ご安心あれ。横山光輝氏の描いたマンガは、実に伸び伸びとしていて、見事な歴史ドラマに仕上がっている。DVD化もされているので、そちらもおすすめしたい。だが何と言っても王道は、日本人にとっての「三国志」と言えば、誰もが口を揃えるに違いないが、吉川英治氏の著書である。長編で読むのに時間はかかるが、それだけに読みごたえがあり、読了後の感動と言ったらチューブを描く爽快な波に、全身を奪われてしまうほどなのだ。という具合で、下手な読書案内になってしまったが、ほんの少しでも参考になれば幸いだ。余談が長くなってしまったが、本作「三国志」は、五虎将軍の一人である趙雲にスポットを当てたストーリー展開となっている。趙雲と言えば、日本では孔明に次いで人気の高いキャラクターではなかろうか。勇敢で男気があって、何よりずば抜けた強さに誰もが魅了される。貧しい農村出身の趙雲は、志しを抱いて軍人になるための面接を受ける。たまたま面接官であった平安とは同郷で、兄弟の契りを結ぶ。人徳のある劉備軍の前線で一兵卒として戦ったところ、見事な戦いぶりを披露し、軍の重要なポジションを任されることになる。その後、劉備軍は曹操軍10万の大軍に攻め込まれ、散り散りとなってしまう。一方、劉備の夫人とその子(阿斗)の護衛に当たっていた平安は、敵の追跡から逃れる途中、夫人たちを見失ってしまう。その失態に激怒した関羽と張飛は、平安を処刑しようとするが、趙雲は許しを請い、代わりに夫人らの救出に向かうことを進言するのだった。出演者の中にサモ・ハン・キンポーがいたことには驚いた。サモ・ハンと言えば、かつての盟友であるジャッキー・チェンとともにカンフー・アクション・ブームの担い手となったキーマンなのだ。しかしながら、90年代に入ってブームも去り、サモ・ハンは専らアクション・シーンのないドラマ性の高いものに出演するようになった。(ウィキペディア参照)そんな中、嬉しいことに日本ではサントリーの黒烏龍茶のCMに出たりして、その健在ぶりを披露してくれた。趙雲役を演じたアンディ・ラウとも息のピッタリと合った演技で、なかなかの存在感をかもし出している。久しぶりに見応えのある、颯爽とした歴史映画であった。2008年(中)、2009年(日)公開【監督】ダニエル・リー出演】アンディ・ラウ、サモ・ハン・キンポーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)