グリーン・ゾーン
「銃を下ろせ! 下ろすんだよ、フレディ! なぜ殺したんだ!?」「あんたたち(アメリカ人)に、この国のことは決めさせない」本作は、言わずと知れたマット・デイモンの出演により、躍動感のあるアクションと重厚にしてキレのある演技に完成されていた。メガホンを取ったポール・グリーングラス監督とも、ピッタリと息が合っているのが分かる。と言うのも、グリーングラス監督の代表作である「ボーン・スプレマシー」や「ボーン・アルティメイタム」においても、マット・デイモンとはタッグを組んでいるからだ。どこまでも完璧さを追求する英国人監督を納得させるマット・デイモンという役者さんは、申し分なく一流俳優と言えるだろう。本作について一つだけ難を言えば、すでに冒頭のところで最後のオチが分かってしまったことだろう。ストーリーの流れとしては、アメリカ軍がイラク政府の隠す大量破壊兵器の在り処を、必死で捜索するというものだが、たいていの視聴者が“そんなものは存在しなかった”というオチを知っていることだ。これはサスペンス映画としてみたら、謎解きの楽しみを半減させてしまっている。実に残念でならない。ただ、この作品をアクションモノとして鑑賞するのであれば、完成度の高い映画であることは間違いない。イラクに駐留するアメリカ軍のMET隊は、イラク政府の隠した大量破壊兵器を捜索していた。ロイ・ミラー上級准尉は、確かとされる情報をもとに度々戦闘をくり広げるが、3度目の空振りに合うと、情報の出どころに疑問を抱き始める。そんな中、地元イラク人男性のフレディが、イラク政府の要人が集まるアジトを見つけたと情報をもたらす。フレディは、戦争により片足を失い義足を装着していたが、英語が堪能なことから通訳として採用するのだった。この作品の評価すべきところは、やはりラストであろう。吟遊映人が目を見張ったのは、最後の最後に来て、義足のイラク人フレディが決着をつけたシーンである。この場面をどう捉えるかで、作品の印象はかなり違って来るに違いない。正義の味方という立場を死守するアメリカではあるが、本作では見事にそれを裏切ってくれた。一見、アメリカはイラクに対し、救いの手を差し伸べて、優しい微笑みさえ浮かべる救世主的存在を誇示するが、実はそれは国家ぐるみの偽善でしかない。イラク戦争で辛酸と苦杯を嘗めたイラクの一般市民にとっては、正義をかざすアメリカ人と言えども、部外者にほかならない。アメリカ映画でありながら、自国をシニカルに描くことができたのは、やはり英国人監督の気質であろうか。アクション映画として評価したい、臨場感あふれる作品だった。2010年公開 【監督】ポール・グリーングラス【出演】マット・デイモン、エイミー・ライアン、グレッグ・キニアまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)