ウォール街
「分からんのか、奴はお前を利用しているんだ」「いや、パパは息子が自分より出世してそれを妬いているんだ!」「お前は財布の大きさで人間を測るのか?」「パパはデカい勝負をする勇気がなかったろ?!」「・・・おれはどうやら間違った父親だったようだ」先日「ウォール・ストリート」を観たら、やっぱり80年代に話題を呼んだ「ウォール街」もおさらいしておこうかという気になった。本作でも、やはり父と息子の関係がクローズ・アップされている。オリバー・ストーン監督の十八番であろう。しかも、チャーリー・シーン(息子)とマーティン・シーン(父)は、実の親子でもあり、演技が生々しい。もっと突っ込んだことを言わせてもらうと、役柄上ブルースター・エアラインの飛行機整備工であり、組合活動にも熱心な父親役マーティン・シーンは、実生活でもリベラル派である。この起用は、オリバー・ストーン監督の目の付け所の高さを表している。素朴で、しかし威厳のある父親が、チャラ男の息子に向かって「金は厄介だ。生きていく分だけあればいい」と言い放つセリフはシビレる。全体的な完成度の高さは、断然「ウォール街」に軍配があがるのは否めない。N.Y.のスタイナム社に勤務するバド・フォックスは、証券マンとして日々電話でのセールスに明け暮れていた。年収は約5万ドルもの所得がありながら、マンハッタンという土地柄のせいで、高い家賃、車のローン、大学の奨学金返済に追われ、度々父親から借金するのだった。そんなある時、ゲッコー&カンパニーの代表取締役であるゴードン・ゲッコーと、わずか5分の面会にこぎつける。ゲッコーは凄腕の投資家で、どんな手段を使ってでも利益を得ようとする金の亡者であった。しかしながら、第1級の美術品収集家でもあり、物事を的確に評価し、冷静に判断する知識、能力は、ずば抜けていたのだ。本作でマイケル・ダグラスは、アカデミー賞主演男優賞を受賞している。はて、それほどの演技だったか? ある意味、勢いだけのような・・・。無論、当時の人気の凄さに水を差すつもりは毛頭ない。だがどうだろう、吟遊映人の個人的感想を言わせてもらうと、マイケル・ダグラスの魅力は2010年の「ウォール・ストリート」によるゴードン・ゲッコー役において開花したのではなかろうか。私生活の上でも、様々な艱難辛苦を乗り越え、最後に愛する娘のために一肌脱ぐところなど(「ウォール・ストリート」2010年)、正にマイケル・ダグラスのこれまでのキャリアと映画でのキャラクターがリンクしているではないか。最近のチャーリー・シーンが見る影もなく老け込んでしまったのに比べ、良い意味で枯れたマイケル・ダグラスの昨今は実におくゆかしい。本作はやはり、向学のために観るべき一作品かもしれない。1987年(米)、1988年(日)公開【監督】オリバー・ストーン【出演】マイケル・ダグラス、チャーリー・シーンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)