メカニック
「なぜ銃が置いてある?」「今夜街を流してカージャッカーを何人か殺す」「手当たり次第にか?」「中には運よく親父殺しに当たるかもしれない。復讐さ」「それで気が晴れると?」同じ殺し屋でもジェイソン・ステイサムが演じると、どうしてこうもスタイリッシュでクールな殺し屋になるのだろう?行為そのものは、倫理観の欠如した非道なものなのに、何やら知的で仕事のデキるクール・ガイとして描かれている。もともと『メカニック』という作品は、70年代にオリジナル版があって、今回はそのリメイク版という形を取っている。オリジナル版の方は、残念ながら観ていないため、比較の仕様がないが、リメイク版である今回の作品に限って言えば、アクション映画としてはすばらしいと思った。特にハラハラさせられるシーンと言えば、殺し屋のアーサー・ビショップが、恩人の息子であるスティーヴと二人でターゲットを暗殺するところだ。当初予定していた暗殺方法から別の手口に変更し、見事殺害に成功するのだが、スティーヴのふとしたミスで、ターゲットの取り巻きに気付かれてしまうのだ。その際の脱出シーンは、レベルの高いアクションとして冴え渡っている。とある豪邸内のプールで、一人の男が泳ぎを楽しんでいた。南米コロンビアの麻薬王だった。男はその最中、何者かに足を取られて暗殺されてしまう。殺し屋であるアーサー・ビショップは、殺人の痕跡を残さないため、麻薬王の死も、単なる溺死として片付けられてしまった。アーサーは犯罪組織から金で雇われ、確実にターゲットを仕留めることで定評があった。 そんな中、アーサーに次の暗殺依頼の話が来る。それは、アーサーの恩人でもあるハリー・マッケンナを殺害するというものだった。身体の不自由な車椅子生活を送るハリーを殺ることに抵抗を感じつつも、アーサーは粛々と実行に移すのだった。ジェイソン・ステイサムのスマートな演技も、ベン・フォスターの役柄としての青臭い演技も、それなりに評価できるものであるが、いかんせん脚本に無理があるような気がしてならない。というのも、放蕩息子であるスティーヴが、父の死をきっかけに自分もプロの殺し屋になろうと、アーサーのもとで修行(?)するのだが、そのアーサーが実は父を暗殺した張本人であることを知り、やがて復讐するくだりはマズイ。これではラストを観た時、視聴者が納得しないのではないか?(放蕩息子に感情移入してしまった視聴者のブーイングがあるのでは?)父の敵討ちという大義名分のあるスティーヴだが、もしも人柄がサイアクで極悪なイメージが強ければ、ラストの結末にも納得がいくだろう。が、決してそうではない。つまり、キャラクター設定に問題があるとも取れる。生意気で恐縮だが、ストーリー展開に異議を感じてしまった作品だ。2011年公開【監督】サイモン・ウェスト【出演】ジェイソン・ステイサム、ベン・フォスターまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)