マージン・コール
「俺は去年、25万ドル近く稼いだ。しかも画面に数字を打ち込むだけだし。刺激を求める連中は、情報に飛びついてしたり顔でカネを注ぎ込むんだ。あいつら投資をしてなけりゃ競馬にでもハマる連中さ。勝者がいれば敗者もいるってこと」「そう簡単な話じゃないだろ」「まぁね」金融業界が破綻を来していく過程を(わずか一日のことだが)、役者の演技力に支えられて見ごたえのあるヒューマン・ドラマに帰結した作品だ。内容は淡々としているため、パニック的な要素は薄い気がする。役者の顔ぶれを見ると、英国人俳優が多く、かつ舌が良くて身のこなしにキレがある。 こういう淡々とした映画には、英国人俳優の華のある芝居がとても効果的だ。おそらく主役と思われるケヴィン・スペイシーは特に注目で、緩急の切り替えが見事だ。 自分が職場で管理職の立場にありながら、愛犬が余命幾ばくもないことを気にかけ、思わず部下にグチをこぼすところや、ラストで愛犬を葬ろうと狂ったように穴を掘るシーンなど、なんとも言えない孤独、寂寥感に包まれている。こういう芝居のできる役者さんは、ハリウッド・スターを見渡してもそうたくさんはいないような気がする。ニューヨークのウォール街が舞台。某投資銀行のリスク管理部門の責任者エリック・デールは、突然のリストラを命じられる。部署が部署なだけに、やりかけの仕事もそのままで、ケータイの通話も全てストップされてしまうのだった。身の回りの荷物だけを手に取り、オフィスから退去しようとエレベーターに乗りかけた際エリックは、見送りに来た部下のピーター・サリヴァンにUSBメモリを手渡した。早速メモリの中身を調べることにしたピーターは、データを分析するのに成功。だが驚くべきことに、会社は今日明日にも大損失を出すのは避けられないという結論を導き出してしまう。上司のサム・ロジャースは、すぐに緊急役員会の必要性を進めるのだった。世の中、理不尽さを感じてしまうのは、やっぱり経済の中心を担っている銀行マンや証券マンの、並外れた高額収入を知ってしまった時だ。一方でつましい生活をしている一般市民の、汗水流して働いたお金が、こんな具合で回っているのかと、愕然とする。それもこれも、今ある自分が選んだ職種、選んだ人生、全ては自己責任という結論につながるのか。この作品は、日本では劇場未公開だが、資本主義の実態を淡々と描いていて、富裕層がどこまでも金持ちでいられるカラクリを暴いている。必見作だ。2011年(米)公開 ※日本では劇場未公開【監督】J.C.チャンダー【出演】ケヴィン・スペイシー、ポール・ベタニー、デミ・ムーアまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)