ああ、風天(ふうてん) その壱
ゆうべの台風どこに居たちょうちょ 風天作者の風天(ふうてん)は、『フーテンの寅さん』こと渥美清氏の俳号である。この句風、どことなく山頭火のようではないか。情景が目に浮かび、思わず頬が緩むのである。寅さんも山頭火も、大いなる愚人であった。その魅力は、人をひき付けて離さない「愚人」ぶりであったといっても過言ではあるまい。「人はみなひそかに愚人を求めている。」評論家 外山滋比古氏は『人間的』でいみじくもそう述べている。さもありなん、かつて我が国では幇間という職業も存在していたわけで、彼の国では、道化師は王様のおかかえであった。みな愚人が大好きなのだ。愛すべき、大いなる愚人 寅さん。1969年8月末日、『男はつらいよ』シリーズの第1作が公開された。 2012年8月30日、寅さんを偲ぶ。