フライトプラン
【フライトプラン】「機長! 聞いて、私は法を破り運航を妨害した。でも娘は見つかる・・・娘は見つかる! 機長として娘に謝って。」「やめろ、プラットさん。送金は要求通りにした。小型ジェットも待機している。・・・子供の話はもう無用だ。」「何の話・・・?」これからのサスペンス作品は、過去の秀作を乗り越えていかなねばならないプレッシャーもあって、かなりの努力とか独創性を強いられることになるであろう。鑑賞する側として批判することは簡単だが、製作者サイドの血のにじむような映画作りのプロセスを考えたら、むやみやたらな論評は避けたい。この作品の冒頭部は、これから始まる悲劇を暗示するかのような、暗く陰鬱な雪の街ベルリンが効果的に映し出されていた。その後、舞台は飛行機の客室に移った。さて、ここからがサスペンス映画としての本領を発揮するところだ。当管理人はヒッチ映画の大ファンであるため、密室における事件に関しては、アクションこそ欠けるものの、退屈どころか多いに興味をそそられる設定であった。限られた空間の中で、人一人が忽然といなくなる。これほどまで謎めいたサスペンスツールが他にあるだろうか?不慮の事故で夫を亡くしたカイルは、ニューヨーク行きの飛行機に搭乗していた。6歳の愛娘ジュリアと二人で傷心を引き摺りながらも、実家のあるニューヨークで養生するつもりだった。精神的に疲労困憊していたカイルは、数時間前に服用した安定剤が効いたせいか熟睡してしまう。眠りから覚めたカイルは隣りの席にいるはずの我が子の姿が見えず、慌てふためく。しかし、乗客の誰も目撃しておらず、乗務員も心当たりがないと言う。カイルは航空機設計士という職業柄、娘が何者かに誘拐されたのではと、懸命に捜索するのであった。本作のテーマは、ひとえに“無関心な人々”であろう。社会が複雑化すればするほど人々は己の身を守るのに必死となり、他人に対して粗雑になる。同じアパートの隣同士と言えども、顔すら知らないという都会のそれだ。面倒なことに巻き込まれたくないという心理が大衆規模で働き、無関心であることが当たり前のようになってしまうのだ。他人に対してむやみやたらな干渉が良いとは言えないものの、適度な相互干渉は希薄となった人とのつながりを緩やかに修復することになり得る。身近なところで誰かが、社会の孤独で冷徹な波に呑み込まれてしまう前に、無関心であることの危険性を学ばねばならない。2005年(米)、2006年(日)公開【監督】ロベルト・シュヴェンケ【出演】ジョディ・フォスター