読書案内No.174 群ようこ/ぬるい生活 ほどほどの生活が一番心地よい
【群ようこ/ぬるい生活】◆ほどほどの生活が一番心地よいこれまで数々のエッセイを読んで来たけれど、庶民的で共感が持てて、何よりおもしろいなぁと思ったのは群ようこのエッセイである。群ようこは小説も書いているし、それなりに読める内容だが、私個人としてはエッセイの方がだんぜんおすすめだ。 『ぬるい生活』は群ようこが50歳を迎えようとしているころから、ちょうど50歳を迎えたころまでの連載を文庫化したものである。女性なら必ず通るであろう更年期についても触れられていて、ものすごく参考になる。たとえば「精神の健康」という章では、更年期障害の酷い友人について書かれている。シングルで仕事もバリバリやって何事にも一生懸命の彼女は、あるときパニック障害を起こしたと。体が丈夫だとうまく更年期と付き合っていけてるような錯覚に陥りがちだが、実は肉体の健康もさることながら、メンタルの健康もさらに大切なのだと語っている。 「現代は体よりもまず精神が丈夫でないとやっていけなくなっているのである」 なるほどと思う。当たり前のことだけれど、これだけストレスにさらされていると、自分のメンタルがマヒしてしまい、知らず知らずのうちに自分に対してムリを強いている場合もあるのだ。心と体のバランスを取るのは意外にも難しい。(更年期ではない世代だって難しい。) さらに、「少し希望がみえてきた」の章では、更年期障害の酷い友人が、それこそ藁をもつかむ思いであの手この手の治療に挑戦したことについて書かれている。こんな治療があるのかとびっくりしたのは、ホメオパシーというものだ。これは、「病気に対する同毒療法」とのこと。つまり、ヒ素やトリカブトなどの毒性のものを利用して、体内の毒素を排出するらしいのだ。(人間が持っている免疫を利用するものなのか?)これが画期的に効いたらしい。このように、群ようこを取り巻くシングルの友人たちとのユニークな交流や、ひそかに始めた小唄と三味線のお稽古事についても、おもしろおかしく描かれている。 結婚する自由もあるし、しないという自由もある。シングルでも充実した毎日を過ごせれば、それはそれで良いのではないか?群ようこは三十代以上未婚で子どもなしの、世間で言う「負け犬」の部類に入るのかもしれないけれど、可愛いネコちゃんに支えられてそれなりに楽しい生活を送っているようだ。シングルで中年に差し掛かった女性には、癒しともなり得る必読の書である。 『ぬるい生活』群ようこ・著★吟遊映人『読書案内』 第1弾はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾はコチラから