横山光輝「三国志」第一巻
【横山光輝「三国志」第一巻】「我ら、生まれた日は違えども、死すときは同じ日!」小学6年生の時、クラスの男子がコミックトムで盛り上がっていた。私はいつもフレンドやマーガレットを愛読していたので、少年マンガには興味がなく、コミックトムはスルーしていたのだが、本屋でたまたまチラ見したことがある。中でも横山光輝の『三国志』はチラ見では済まず、夢中になって読んだ。大人になってから知ったのだが、コミックトムは潮出版社から発行されており、某宗教の媒体となっている。とはいえ、宗教色の強いマンガなどほとんどなかったような気がする。 さて横山光輝だが、数々の大ヒット作を手掛けている人物なので、その名を知らぬ人などいないとは思うが、代表作に『鉄人28号』『魔法使いサリー』『バビル2世』『三国志』など数えきれないほどある。もともとは銀行員だったせいもあるのか、「商業作品は第一に経済的に成功させなければならない」という点で、自作の映像化にはとても寛容だったらしい。(ウィキペディア参照)その点、白土三平あたりとは主義主張が全く異なる。 今回私は、テレビ東京系列で1991年~1992年まで放送されたアニメ三国志を見る機会を得た。現在、全話収録のDVD-BOXが発売されており、その中の第一巻(第一話~第四話まで収録)を見た。 第一話 桃園の誓い第二話 激闘! 義勇軍第三話 死闘! 鉄門峡第四話 勅使の罠 ストーリーはこうだ。おおよそ2000年前の中国が舞台。世の中は乱れに乱れていた。飢饉が続いて百姓たちは食べることにも困り、略奪が横行した。また、腐敗し堕落した役人たちによって、国家存亡の危機を目前にしていた。そんな中、怪しげな妖術を使う太平道の教祖・張角とその弟らが決起してクーデターを起こす。彼らは黄色い頭巾をかぶり、盗賊まがいのことを始めたため、いつしか黄巾賊と恐れられた。そんな乱れきった世の中を憂えた劉備玄徳、関羽雲長、張飛翼徳らは義兄弟の契りを結び、義勇軍を募って黄巾賊の討伐に立ち上がった。とはいえ、リーダー(長兄)である玄徳は、貧しい農家の生まれであり、志は高くとも資材は全く持ち合せがなかった。言うまでもなく、官職もないせいで何かと下に見られ、辛酸と苦杯をなめること数知れずであった。そんな中、弟分である関羽と張飛はよく玄徳になつき、よく仕えた。一方、後漢を司る霊帝は、宦官である十常侍たちに操られ、ますます国家は滅亡への道をたどるのであった。 アニメ三国志は概ね原作に忠実で、生き生きとしたキャラクター作りにも好感が持てる。あえて難を言うなら、ジブリやディズニー作品に慣らされてしまった昨今においては、時代性を感じてしまうかもしれない。昭和の古き良きアニメと言えば聞こえはいいが、いわゆるアナログというものだ。 歴史というカテゴリと真摯に向き合った結果なのか、笑いの要素はなく、アニメ版の大河ドラマを見せられているような錯覚すら覚える。第一巻はまだまだ物語としては序の口で、ややおもしろみには欠ける。だが、義兄弟の契りを結んだ劉備、関羽、張飛ら豪傑たちが、今後どのように活躍し、歴史の一ページを刻んでいくのか楽しみで仕方がない。長編小説を読むのが苦手な方、『三国志』を一通り知りたい方、このアニメ版三国志なら、知的好奇心を充分に満足させてくれるに違いない。 【発売】2003年【監督】奥田誠治ほか【声の出演】中村大樹、辻親八、藤原啓治