神社・寺院・史跡 其の四、火防(ひぶせ)信仰 ~可睡斎~
【火防(ひぶせ)信仰 ~可睡斎~】思えば私の二十代は激動そのものでした。両親の死、私の離婚、そして購入して間もない自宅が火事に遭うというとんでもない災難のオンパレードでした。もしも当時を振り返って過去を占ってみたら、きっと大殺界と天中殺が同時期に重なっていたことでしょうね(苦笑)火事はお隣の出した火の不始末のせいで我が家にも影響を及ぼすことになりました。いわゆる〝もらい火〟というやつです。不幸中の幸いにも、私は仕事に出かけており、子供も保育園にいる時間帯だったおかげで、家にはだれもおらず、命に関わることはありませんでした。火を出したお隣は年配の男性の独居世帯で、煙を吸ったらしく病院に運ばれ、全焼したその家には二度と戻ることはありませんでした。あとでご近所から聞いたところ、お隣は生活保護を受給しており、弁償などはしてもらえないだろうとのことでした。そんなわけで、我が家に謝罪の言葉は一切ありませんでした。我が家が受けた被害は相当なものでしたが、私がかけていた火災保険がおりて自宅はどうにか修復。しかし、母の形見の着物や思い出のアルバムなどの写真は見る影もありませんでした。悔しさから泣くに泣けず、発狂一歩手前でした。右耳の裏には五円玉ほどのハゲはできるし、やけ食いで体重は一気に7〜8キロ増加。あのころの絶望的な気持ちを簡単に言葉に置き換えることなど到底できず、今も思い出すだけで胸がざわざわしてきます。それでも私はどうにかこうにか今に至ります。それもこれも神仏のご加護のおかげです。だからと言うわけではありませんが、私は火防の神社やお寺にお参りに出かけることがあります。そこでお守りを買うのは安心を得ることにもつながり、心に平安をもたらしてくれるのです。とは言え、火防の神として有名な秋葉神社の上社も下社も山のかなり草深いところにあって、容易く出かけられる神社ではありません。(秋葉神社は浜松市天竜区春野町にあります。)その点、袋井市にある可睡斎は交通の便も良く、格式の高い曹洞宗のお寺です。明治からは春野町にあった秋葉三尺坊大権現(秘仏)がこちらの寺院に移されて、以来、火防の信仰を集めて来たのです。『静岡県の仏像めぐり ほとけ道里あるき』参照そんなわけで今回は、遠州三山の一つである可睡斎(かすいさい)に行って来ました!5月18日から8月31日まで風鈴まつりなるものが開催されており、山門から本堂までいくつもの風鈴がつるされています。私が出かけたときは髪の毛がボサボサになるほど風が強く、勢いよく風鈴がチリンチリンと鳴り響いて、そこに風流を感じることはありませんでした。とは言え、本格的な夏の訪れとともに冷やしぜんざいなど食べながら風鈴の音色に耳を傾けられたら、何と贅沢なひとときであることか!目を見張ったのは売店の〝精進アイス〟です。コーンの上に抹茶アイスと小倉あんが乗っかっていて、いかにもお寺のスイーツ⁈らしいではありませんか!禅宗のお寺で涼のおもてなしを受けられるのは、日本人に生まれて本当に良かったと、幸せをかみしめる瞬間でもあります。ここまで来ると火防信仰の何たるかを語るより、売店のスイーツについてあれこれ講釈つけたいところがホンネです。遠州三山は可睡斎の他に、法多山と油山寺があります。期間中は三ヶ所のお寺のどこでも色とりどりの風鈴がつるされており、涼しげな音色を聴くことができるようです。〝花より団子〟と申しますから、参拝のお帰りにはぜひスイーツもお楽しみくださいね!!