刑事モース〜オックスフォード事件簿〜case1
【 刑事モース〜オックスフォード事件簿〜case1 】◆華麗なる賭け先にお断りしておくのは、毎回映画レビューをする際、冒頭に気に入ったセリフを紹介がてら入れるのだが、今回は割愛させていただく。(というのも、amazon primeで無料の視聴を一度しただけなので、ご容赦を)さて、刑事モノや探偵モノは、やはり人気が高い。特にキャラが際立つものは、見ていて飽きないし、面白いからだ。もちろん視聴者各人の好みもあるし、ストーリーの良し悪しもあるので、一概には言えないけれど、一話一話完結していてシリーズ化されているのは、安定感があるし、落ち着いて視聴できるのでありがたい。私にとって刑事モノと言えば、ピーター・フォーク主演の『刑事コロンボ』が大好きで、いまだそれを超える刑事モノを知らない。探偵モノなら金田一耕助シリーズで、特に市川崑監督作品が素晴らしい。とにかくキャラクターが見事に完成されていて、ブレがない。何でもそうだけど、キャラが際立っていなければ見ていて面白くないので、これは重要なポイントと言える。『刑事モース』は、イギリスのテレビで放送された刑事ドラマである。私にとってイギリスで放送された人気ドラマですぐに思い浮かぶのは、『シャーロック・ホームズの冒険』である。主演はジェレミー・ブレット。日本語の吹き替えは露口茂なのだが、正に、ホームズの格調高く優雅で紳士的ムードを正確に表現することに成功していた。そう言う洗練された名作に数多く出合ったおかげか、本当の意味でミステリーを堪能させてもらう機会に恵まれた。『刑事モース』は英国の歴史と伝統と、ちょっぴり辛口な国民性を垣間見せてくれるイギリスチックな作品だと思う。とは言え、制作が2000年代に入ってからの、比較的最近の作品なだけあって、1960年代の英国を舞台にするには、ちょっと画面がキレイ過ぎるような気がした。あらすじはざっくりさせてもらうが、なにぶん1回のみの視聴(amazon prime)なので、記憶違いがあるかもしれないのでご容赦を。1960年代のイギリスが舞台。カーシャル・ニュータウン警察の新米刑事モースは、退職届を出すつもりでタイプしていた。死体を直視できないし、血液の飛び散った凄惨な現場に立ち会うのが苦手だったからだ。(他にも理由はあるが)そんな折、メリーという少女が失踪したことで、モースも捜索のためオックスフォードへ出向くことになった。同時期に、オックスフォード大学の学生マイルズが死体で見つかる。一見、自死にも見えるが、断定はできないでいた。さらには失踪と思われていたメリーも、その後、死体で発見される。そのメリーという少女は、15歳という若さでありながら、男性遍歴があり、オックスフォード大学の学生であるマイルズの他に、教授のストロミング、自動車整備士のジョニーと関係があり、誰の子かは不明だが、中絶した経験もあった。モースがストロミング宅へ聞き込みに行くと、ストロミングは留守だったが、その妻ロザリンドとばったり遭遇した。見れば彼女は元オペラ歌手であることがわかった。モースは彼女の熱狂的なファンなので、見間違えるはずもなかった。この作品、あらすじを書くのに手間取る。というのも、いろんな伏線があって、最後に回収されていくのだが、単純な犯人探しの推理ドラマと違うからだ。ポイントとなるのは、一般的にホワイトカラーと称される立場の大学の教授や官僚らが、つまらない賭け(ゲーム)をやったことが発端となる。一方で、作中、警視正の娘が怪しげなパーティーで一服盛られて、恥ずかしい写真を撮られて、父親の職業上、真実をなかなか明かせないという、要所要所で捜査が劇的に進展しない理由が詳らかになる。私はわりと刑事モノとか推理ドラマは、気軽に楽しくサラリと見るのがモットーなので、最後まで犯人は誰なのかとドキドキしながら見るのは苦手である。その点、『刑事モース』は、ハマる人はハマる作品だと思われる。英国製らしく、品はあるし、絵的にもキレイで、それでいてドロリとした人間の業を表現している。だがあくまで私個人としては、たまに見るなら雰囲気に酔えて楽しめそうだけど、毎週放送されるTVドラマとしては、見忘れることもありそうだ。きっと私が求めるようなユニークなキャラクター設定ではなく、どこまでも大衆受けするような人物像におさまっていたからかもしれない。私の中で一番は、やっぱり『刑事コロンボ』なのだ。2012年放送【監督】コルム・マッカーシー【出演】ショーン・エヴァンズ、ロジャー・アラーム、フローラ・モンゴメリー