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吟遊映人 【創作室 Y】

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2017.07.08
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【特捜部Q 檻の中の女】
20170709a

「なぜ捜査をやり続けるのですか?」
「俺にはこれしかないからだ!」

友人から「コレはおもしろいから絶対レンタルしてみて」と言われ、それなら一つ借りてみようとTSUTAYAに出かけた。
ところが私としたことが、聞いたそばから作品のタイトルを忘れてしまったのだ。
「何というタイトルだっけ?」と友人にメールで問い合わせると、しばらくして「特捜部Q」というたった一言の返信が来た。
味も素っ気もない返事だ。
この日は雨天で、裾を濡らしながら傘をさしてTSUTAYAまで出かけたというのに、そりゃないだろうと半分ふて腐れた。
私としては、「これからTSUTAYAに出かけるの? 足もとの悪い中、たいへんだね。『特捜部Q』というタイトルなんだけど、期待を裏切らない作品なのでぜひレンタルしてね」ぐらいの返信をして欲しかった。まったく。
とはいえ帰宅して見てみると、かなりおもしろかった!
ストーリーとしては決して斬新さはないけれど、安心して展開を見守ることができる。
正にスタンダード・サスペンスだ。
まず設定からして、警察署内でけむたがられてる存在が主人公で、窓際的部署で事件を解決していくのは、ドラマ『相棒』と同じパターンだし。
かなり個性的な主人公をサポートしていくパートナーも、いい感じで魅力的だ。
デンマーク映画というのは初めてだが、日本人好みのテイストで想像以上の満足感を味わえる。
20170709b

ストーリーは次のとおり。
デンマーク・コペンハーゲン警察殺人課のカール・マークは復職したものの、もとの殺人課には戻れず、「特捜部Q」という閑職に就くことになった。
というのも、カールは前回の事件で同僚一人を殉職させ、もう一人は障害のある身体にさせてしまい、また自分自身も負傷して休職を余儀なくされていたのだ。
「特捜部Q」は過去の未解決事件などの資料整理という形だけの部署だった。
助手には人の好さそうなアサドがいるが、たった二人きりの「特捜部Q」だ。
資料整理などにやりがいを見出せないカールだったが、そんな資料の中から5年前に世間を騒がせた美人議員失踪事件の捜査ファイルを見つけた。
その事件は結局、本人自殺という形で処理されていたが、カールはその捜査に違和感を抱く。
カールはアサドとともに、フェリーから投身自殺をしたとされる「ミレーデ失踪事件」の再捜査を始めるのだった。

この作品にはいくつかのテーマを感じる。
その一つが“子どものころの過失といえども許されないものがある”という強烈なテーマである。
ここから少しネタバレになってしまうが、事件の引き金となったのは、被害者ミレーデが幼いころ車の中でふざけて、運転する父親の目を手で隠したことがきっかけなのだ。
娘のいたずらによって父親は他人の車も巻き込む大事故を起こしてしまう。
このとき巻き添えをくった側の車に乗っていた少年は、この事故によって父と妹を亡くし、母は下半身不随という重傷を負って、この上もない憎しみをミレーデに抱くのである。
こちらに何の非がなくとも、相手のちょっとしたミスに巻き込まれてしまうというトラブルは、多かれ少なかれ我々の日常にはつきものである。
笑って許されるものもあれば、そうではない場合もある。
この作品における犯人は、自分の受けた理不尽な境遇を憎悪と復讐という手段によって生きる糧に変換させた。
この驚愕すべき執着心は、もちろん異常性のなせる業かもしれないけれど、事件のきっかけと過程、そして結果を充分に納得できるものにさせている。
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主人公の相棒役であるアラブ系と思われるアサドについては、異民族の共生・共存を支持するかのように、好人物に描かれていた。
イスラム教徒を見れば、どうしてもテロリストのイメージが付きまとうのだが、それがつまらない先入観でしかないことを思い知らされる。
『特捜部Q』は、いろんな含みを内包し構成された脚本であり、ハリウッド・サスペンスとはまた一味違う面白さがあるのだ。

2015年公開
【監督】ミケル・ノルガード
【出演】ニコライ・リー・カース、ファレス・ファレス


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最終更新日  2017.07.09 05:00:09
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