未熟な作家の気まぐれファンタジー小説blog

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• 落雷疾風記　第5章　護衛（ガルド）　続き7

  そのころ僕は日記帳を開き、今日あった出来事を書いていた。『6月22日　今日は仲間や知り合いがたくさん増えた。途中で磁神『ガウセル』を仲間に加え、レヴェナーンに戻っている中、ヴィルム島首都ベルティナ出身のセルクさん、バルクさん、アルヴァスさん、ジャスミンさん、メイルさん、ミリアさんと出会い、今、紹介された宿泊亭で宿泊中。今日1番面白かったのは、なんといっても模造剣を使って生き残りを賭けた、サバイバルゲームが印象的だった。惜しくも賞金100ガルンまでには及ばなかったが、僕達は未成年での生き残り最長記録を更新し、特別賞に、昔はベルティナでしか作る事が出来なかった「バルセンダー」をプレゼントされ、嬉しい限りの1日だった。明日はやっとの事で、レヴェナーンに帰れる事だろう。父さんや母さんは心配しているだろうけど、ジンが神風言流で伝えてくれたから、多分問題ないはず・・・・・・』久々に少し長い文を書いて、僕はベッドへドッと寝転がり、ぐっすり眠った。「う・・・・・・朝か・・・・・・。起きなきゃ・・・・・・。」僕は眼を擦り、ベッドからムクッと起きると、ウィルが身支度（みじたく）をしていた。「おや、クローヴィス。やっと起きたかい？早くしないと、おいてくよ！」僕は慌ててベッドから降り、バックから着替えを取り出し、着替えると、下へ降りた。下のフロアを少し歩いて行くと食堂があり、そこで軽く食事を摂り終えると、僕は一旦外に出て、革袋に収められたバルセンダーを取り出し、鞘から抜いた。そして、朝日を両面に満遍なく当てると、僕は鞘にしまい、ベルティナ全ての水分はここが元だとセルク達に教えられた所へ行った。そこは池の様な所で、水が湧き出ていた。朝日を撥ね返し、何mもある底まで見えそうな位透き通った水で、先程のバルセンダーをチャポンとその水に晒（さら）すと、さらに磨きがかかり、鋭さも増した様だった。僕はその湧き水を、持って来ておいた栓のできる入れ物の中に入れ、持ち帰った。なにせここの水は持ち帰り自由とか。玄関口には、皆がセルク達にお礼を言っているところだった。「おやクローヴィス君、どこへ行っていたのですか？置いて行くつもりでしたよ。」僕は皆に軽く謝り、セルク達に僕もお礼を言うと、別れを告げた。少し歩いた所の十字路まで見送られ、僕達はその宿泊亭を後にした。「ねぇ、みてみて！朝市が開いてるよ！少し行ってみない？」アイリが興味深そうにネックレスの商店へ足を延ばすと、朝日に照らされ、ピカッと光り輝く商品が、若い女性達を虜にしていた。僕達は食物がたくさん売られているゾーンへ差し掛かると、ウィルが少し買い物をしようと提案し、食料調達をする事になった。「おっ！そこの兄ちゃん！この新鮮な野菜達に目をつけるとは、なかなかいい目を持ってるじゃないか！どうだい？ここは1つ、何か買って行かんかい？」ウィルに購入勧誘がかかった。ウィルはにこやかに笑い、少し高めの野菜を手に取ると、値引き交渉が始まった。「では、このジャガイモを。今2個1メルツですか。ん～・・・・・・。」ウィルはジャガイモだけを買うと見せかけて、ニンジンも買い、合計金額値下げを謀りに訪れた。「兄ちゃん。世の中甘く見ちゃいけねぇ。2個で1メルツ。これ以上安い物はねぇよ！」「んじゃぁ、4つ3メルツに割高払う代わりに、1本2メルツのニンジンを1メルツにしてくれませんか？」「あぁ、それならいいぞ！」「じゃぁ、ジャガイモとニンジン、それぞれ8個ずつください。えっと、1マリン4メルツですね。」ウィルはお金を払い、ジャガイモ、ニンジンそれぞれ8個ずつ受け取ると、顔がにやけた。本来なら、2マリンも払わなくてはならない。陰で見ていた僕は、少し尊敬した。僕も1回でもいいから値切りに成功してみたいものだ。ウィルはさらに交渉を続ける。「ではさらに、この2個3メルツのタマネギも頂きます。その代わり、1メルツ引いて1個1メルツにする代わり、8個3メルツのトマトを2メルツも上の、5メルツにしていいですよ！」「いいだろう。持ってけぇい！」「それじゃぁそれぞれ8個ずつ、お願いします。はい、1マリン3メルツです。」これもウィルの作戦だ。本来原価だと、合計1マリン5メルツ。相手がとても得をしているように見えて、実は自分が得をしている著しい罠だ。僕はこうしてはいられないと思い、僕は緊急用の薬を買う事にした。その為、その周辺を歩き回っていた。朝市に薬屋など無いと思うが、見事に屋根まで構えてあった。ここの人も喜作だった。「よぅ、そこのお兄さん！ここは一つ、健康薬とか買っていかないかい？」僕はもちろん立ち寄り、商品を眺めた。薬なので、少々お高い。「俺がオススメするのは、この薬を水に煎じて精霊に飲ませると、少し魔法の威力が上がるんだ。とてもいい品なんだが、値段は2マリンと少々お高い。が、どうだいお兄さん？男なら、何でも強くなくてはいけないと思うんだがなぁ・・・・・・」さすが商売人だけあって、口が上手い。さぁ、ここはどうやって値切ろうか。今ある金額は1ミニル。これをそのまま購入すれば、残り8マリン。そのままではすこしダメージが大きすぎる。ここは2マリンを切りたい所だ。「それじゃぁ・・・・・・2マリンのところ1マリン5メルツにしてもらってもいいかい？その代わり、この傷に効く丸薬を4メルツから1マリンにしてもいいですよ。」「おっ？！そんなに上げてもらっていいのかい？うれしいなぁ！」「では、その薬を3つ、丸薬を2つください。はい、6マリン5メルツです。」「よし。いいだろう。ありがとう！」お礼を言わせてもらうのはこっちだよ！と、僕は密かに思った。原価合計は6マリン8メルツ。3メルツも得をした。その後、僕はいろいろ買い物をし、ついに1ミニルを全て使った。窓際からすこし見える大きめな時計を見ると、もう10時を回っていた。その為、集合場所の噴水がある広場へ行った。まだヴァンスしかいなかったが、どうやら値切って安く購入した物を、商（あきな）いを開いて、購入した物の原価で売っている様だ。ヴァンスの店には6人ほど人が集（たか）っており、何でも屋なのだが、短い時間でも繁盛していた。「どうですかヴァンスさん？売上げの方は・・・・・・？」「あぁ。だいぶ順調だ。まぁ4ガルンは儲かっている事だろう・・・・・・。」そういいながら、お金を貰っていた。ヴァンスの店は品揃えがよく、飛ぶように売れていった。「お疲れ様で～す。商品調達にいってきました。この紙に書いてあるのがそれぞれの値段で～す！」アイリがアルバイトの様な事をして、お小遣いを貯めているようだ。「あぁ、ご苦労様。もう少しだから、後一回ぐらい行ってきてはくれないかい？3ミニル預けるから。」アイリはお金を貰うと、高速で走り去った。ヴァンスは呆れた顔で見送ると、僕にも皆が帰ってくるまで手伝ってとの声がかかった。僕はヴァンスの隣へ座ると、ヴァンスに頼まれた物を包装する手伝いをした。その30分後、ジンやウィル、アルメやアリアも大体同じ時間に帰ってきた。僕達は手分けして店終（みせじま）いし、売上金を数え上げた。「・・・・・・8ガルン9エデム4ミニル2マリン5メルツだな。やはり金額が大きくなると、数え難いな・・・・・・。金額改正をして、100メルツで1マリン・・・・・・100エデムで1ガルンにならないのだろうか。」「本当にそう思いますよ。でも、ナイトメアを封印すれば、その事を称（たた）えて、金額改正をしてくれるかも・・・・・・」と、僕は仮説を立てた。皆は頷き、ヴァンスが続けた。「その為にも、今日中にレヴェナーンに着かなければならない。近いうちにローレライも攻めてくることだろう。」皆が固い顔の中、ウィルはにこやかに笑い、出発しましょう。と、集落の方へ歩き出した。その笑顔と言葉に皆の表情は柔らかくなり、ウィルについて行った。

  2007.04.01

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• 落雷疾風記　第5章　護衛（ガルド）　続き6

  「・・・・・・ヴァンス殿。少し御用件がありまして・・・・・・。」ヴァンスがドアを開けると、磁神ガウセルが片足を立てて跪いていた。「おや。どうしました、ガウセル。・・・・・・とりあえず中へどうぞ。」と、ヴァンスが部屋の奥へ手を差し伸べると、ガウセルは遠慮無く、という一言を加えて中に入った。「話は過去に戻ります。先程、ローレライのカルディスに遭遇されたと思われますが、相手が去った時に相手がこういう物を落としまして・・・・・」ガウセルは手を出すと、掌（てのひら）に羽がレリーフの小さな指輪が。そして、その指輪をテーブルの上に置いた。「この指輪です。一見鉄の様に見えますが、よく見ていてください。・・・・・・『ロンガスト』！」ロンガストは、磁霊の金属反応魔法で、もしも唱えた者に物が引き寄せられれば、それは磁力に反応するかしないかを判別する事ができる。しかし、その指輪は動かない。逆に、その部屋の小さい鉄物を引き寄せた。「このように、この指輪は磁力に反応しないことが分かります。」「うむ。どうやらそのようですな。しかし、それがどうかしたのですか？」ガウセルはその指輪をまた手に取り、ヴァンスに手渡した。「・・・・・・それを指に着けてください。」ヴァンスはその指輪を右手の薬指にはめると、ガウセルが頷いた。そしてまたロンガストを唱えると、ヴァンスが引き寄せられた。「しかしながら、この指輪を着けると、磁力を発するのです。この指輪は普段は磁界を張ってないものと思われますが、中に物、つまり、先程のように指を入れますと、磁力を発するという特殊金属です。」「ほぅ。しかしその指輪と、我々とは何の関係があるのですか？」ガウセルは指輪を受け取ると、その裏を見せた。「ん？『カイラマ＆セライ』と記してあるな・・・・・・つまり、『カイラマ島とセライ島』と言うことですか。」このラグナロク諸島には、7つの島々があり、その1つはヴィルム島。その他の6つの島々の名前を、ヴァンスは知っていた。「ヴィルム、カイラマ、セライ、ディヴァル、メイリル、ウォンバー、フェイギルの内の2つですね。」ガウセルは頷き、続けた。「つまり、これらの2つの島々はローレライか、カルディスになんらかの関係があると思われます。しかも・・・・・・」そういうと、ガウセルはその指輪を粉々に砕いてしまった。「なっ・・・・・・ガウセル。これは一体・・・・・・」床に落ちた粉々になった指輪を見ると、どんどん元の形へと戻ってゆく。ヴァンスはしばらく動揺していたが、ハッと見ると、もう指輪は亀裂（きれつ）すら残ってはいなかった。「これらは装着し、外してから4時間磁力を発します。なので、すぐ外れた場合ならしばらくの間は砕いても、磁力の力で元に戻ります。つまり、一時の『不砕（ふさい）の指輪』ということが発覚しました。」ヴァンスはしばらく悩み、口を開いた。「つまりその情報は、例え身元を離れても、少しの間なら存続しているが、相手が指輪に対して諦めを抱いた時に、効力を失う。ということはなにかメッセージを残した可能性があるな。」ガウセルが頷くと、指輪を拾い上げ、もう一度テーブルの上に置いた。「しかもこれは、隙間に精霊石を仕込んであったのですが、その精霊石は蒼かった為、水霊石と見なしました。しかし、相手が水霊石を持っている事はおかしいのです。多分、その2つの島々で採れた物か、ロリヤックかライトエルフ、ラレスの誰かから盗んだ可能性があります。が、中には何も入っていなかった為、どこかで採ったものと思われます。」ヴァンスは椅子に深く腰を掛け、ガウセルが来る前の飲みかけだった氷水を一気飲みし、顔を横に振ると、深く深呼吸し、テーブルの上に置いてある指輪を手に取り、眺めた。「そうか。では今度攻めて来るローレライを払ったら、その島々へと行ってみる事にしましょう。」ガウセルは顔を縦に振ると、ヴァンスの部屋から出て行き、アルメ達の部屋に置いてある鋼色の精霊石へ戻った。ヴァンスは軽く笑い、部屋の時計を見た。「・・・・・・10時48分か。まだ少し早いが、寝るとしよう。」そしてヴァンスは床に就いた。

  2007.03.23

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• 人形遣い　第1章　人形の吐息

  冬の早朝。日差しが緩（ゆる）く、まだ寝たいときにこそやってくる時間だ。剣吾は今15歳。両親は次の世界に旅立ち、寂しく過ごしているが、その寂しさを消し飛ばしてくれるメンバーがいる。葵や和希も、もう両親はいない。なので、3人同居して、仲良く生活している。生活資金は、住んでいるアパートの住民の人達に貸してもらっている。大家さんも優しく、周りの住民の人も優しいからだ。もちろん家賃は0円。受験生になり、早半年が過ぎ去った。今は冬休みで、勉強の真っ最中な3人だが、最近3人とも『マリオネット』にはまっている。時々押し入れに入っている3体のマリオネットで遊ぶのだが、最近夜になると、押入れからカタカタという音が聞こえ、怖さに震える毎日が続いていた。この3体のマリオネットは、学校から程近いゴミステーションに3体捨ててあったもので、恐らく捨てた人もこの音で怖さを覚え、捨てたに違いないと最近思い始めた信吾達だった。ある日、3人で買い物に行った。先に自分のアパートの扉の前に来た葵は、その扉をあけて悲鳴を上げた。剣吾や和希が駆けつけると、3体のマリオネットが、立っていた。「カタカタカタカタカタカタ・・・・・・」葵は扉をはさんで怯えたままだ。「ど、どうした葵。この人形自分の足で立ってるぜ？ここは驚く所だろ。」和希が軽々しく言うと、葵はいつもの元気が吹き飛んでいて、引きつっている。「お、お、驚くって・・・・・・あんた達さ、よくそんな人形の前で立っていられるわね。マ、マリオネットはねぇ、う、動かない程度が丁度いいのよ・・・・・・。」そう言い切ると、和希が呆れて部屋の中に入った。「ちょ・・・・・・和希、それ～・・・・・・なんか危なくないかい？」剣吾が促すと、葵は激しく首を縦に振っている。しかし、和希の返事がない。「か・・・・・・和希・・・・・・？」返事はない。「和希！大丈夫か？！」ドアを剣吾が激しく叩くが、いつの間にか鍵が掛かっている。葵はもう半泣き状態に陥っている。口が聞けなくなってしまったようだ。そうすると、隣に住んでいた若い男の人が気付き、部屋から出てきた。「剣吾君？一体何が・・・・・・って葵ちゃんまで。どうしたんだ？」剣吾が短く事情を説明すると、その男の人は驚いて、近くの鉄鋼場から鉄パイプの尖ったものを数本取ってきて、ドアをこじ開けようとしていた。その騒ぎで大家さんも気付き、ドアを強行突破し、3体のマリオネットと和希のいる部屋へと侵入していった。「かっ・・・・・・和希・・・・・・。おい！和希！大丈夫か？！」和希は3体のマリオネットを操るためのテグスのような糸で縛られており、天井から吊り下げられていた。3体のマリオネットからは刃が和希に向かって突き出ていた。「モゴ？！ンン～ッ！！（剣吾？！葵～っ！！）」僕は台所の包丁を持ち出し、急いで吊るしているテグスを切断し、葵と男の人、大家さんは、それぞれ各1体ずつマリオネットをバラバラにしていった。「うぅ～・・・・・・ゴホッゴホッ・・・・・・」巻かれていたものを全部取り除くと、和希は汗をたくさん流していた。相当焦っていたらしい。「ハァ・・・・・・ビックリした。入った途端にグルグル巻きにさせられるんだもの。焦った焦った。」そう和希がいいながら微笑していた。3体のマリオネットはバラバラになったまま。動く気配もない。「このマリオネット・・・・・・ただの遊び道具じゃないな。」男の人がそう述べる。

  2007.03.19

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• 人形遣い　前書き

  皆は、人形遣いという者を知っているだろうか。その者は文字通り、人形を操り、物事をこなす人物だ。しかし、この現代に至った今、とある少年少女達が、この『3体の人形』に手をつけてしまい、ある時『人形遣い』と化してしまった。この物語の主人公は3人いる。真面目な人で、何もかも忠誠にこなす彼の名は、日々久保　剣吾（ひがくぼ　けんご）。興味津々な事柄が耐えなくて、好奇心旺盛な彼女の名は、十二神島　葵（おつるい　あおい）。いつもは元気だが、ある事に集中すると人柄が変わる彼の名は、一尺八寸　和希（かまつか　かずき）。この3名が、人形遣いとして目覚める・・・・・・。

  2007.03.19

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• 落雷疾風記　第5章　護衛（ガルド）　続き5

  そこは、ホテルのような大きな鉄の建物で、セルク達の宿泊亭らしい。「多分まだ空き部屋が5～6室あったと思います。ここはアパートなのですが、実際アパートとしての部屋は10室ある反面、少しの間だけ泊まる人用の個室部屋が3部屋、3人部屋が4室、10人部屋が1室あります。アパートとしての部屋は全て埋まっているのですが、個室部屋と3人部屋がまだ余っているので、そこで泊まると良いでしょう。貴方達の場合は3人部屋を2部屋、そして個室部屋を1部屋借りた方が良いでしょうね。」と、ジャスミンが丁寧に説明してくれた。僕達は早速中へと入ってみた。窓には黄色と緑のチェック柄のカーテンが小刻みに揺れ動き、その付近にある待合テーブルの奥には、小さな植木鉢に植えられている、小さな黄色いマリーゴールドの花が、玄関から放たれている電灯の柔らかな光を受けて輝いていた。しかし、その輝かしい姿を消し去るように、外は雷雨の渦。「・・・・・・しかし、よくカルディスはこんな事しますよね。とても腹が立つわ！」アルメとアイリが窓から顔を覗かせ、雲を睨んだ。「・・・・・・まぁそれはともかく、部屋へと行きませんか？」僕達は靴を脱ぎ、室内用の靴に履き替えると、2階へ上がった。「それでは、私が個室部屋を借ります。クローヴィス君、ジン君、ウィル君で1部屋、アルメ姉妹で1部屋を借りてください。そして言い出しっぺのジン君には、レヴェナーンのセルヴォイさんの所に連絡をしてください。お願いしますよ。」ヴァンスが簡単に部屋を割ると、それぞれの部屋に入っていった。ジンは精神統一をし、神風言流を試みた。「ジン、その『かみかぜことながれ』って言うのは、どこで・・・・・・」僕は質問しているウィルの口を抑え、ささやいた。（ウィル。こうやって精神統一しないと、話せれないから、少し黙っててよ！）ウィルはその場で固まると、ジンの眼が開き、何かを暗示するように喋り始めた。「・・・・・・リルバイマルシレイドセルヴォイ。デルバッセイルガーメイドウゼンダベルティナ、フィーナゲルメイドウセイダガマローレライイル。オルゲスベルピナイダ？ウィキライルスローレライデカルゼイラー、イウォンシルグダイレ。マイネルセンダルト、キリメライドローレライダイレイマールセルヴォイ。ヘルケメイルワイルストバイルセルカオール。ウェイルセルド、デイメルシンガルドレヴェナーンジェルドマイラ、クレイドルバナーライセデッケルス。エレンタリアーメイトルジェルドハイメリアズム。リクルメイバルストイルム。」そう言い終わると、ジンはベッドへどっかりと寝転び、フゥーと息を抜いた。「ジン、今なんて言ったの？」ジンは眼を擦りながら起き上がった。「んあ？・・・・・・えとな、『セルヴォイさんへ宛てる。私達は今ベルティナという所で休んでいますが、先程ローレライと遭遇しました。ビックリしましたか？しかしそれらのローレライは前にも出会っており、危険を感じたのかすぐ去りました。しかしながら、ローレライはセルヴォイさんの命を狙っています。とりあえず攻防態勢を整えておいてください。私達は明日、レヴェナーンに到着する予定ですが、最新の注意を払って行動してください。もしかしたら到着できない場合もあるので。では後ほど。』と言ったんだ。でも、俺が言っとったのは、神風言流の魔法文だがな。今言ったことに関しての。」そして、そのままジンは寝転び、ぐっすり寝てしまった。

  2007.03.19

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• 落雷疾風記　第5章　護衛（ガルド）　続き4

  あれから3～4時間、僕達は持ちこたえたが、結局、最後には剣を背中に当てられ、退場した。背中に当てられるほど、僕達は遊び疲れていた。しかし、僕達の顔は当てられた悲しみは1つも無く、生まれて初めてこんなに楽しむ事ができた事に関しての、嬉しい気持ちでいっぱいだった。「よう！兄ちゃん達！どうだい？楽しかったろう？けど兄ちゃん達、結構な数を倒したんだろ。兄ちゃん達が入ってしばらくすると、どんどん人が抜けるもんだからビックリしたぞ。しかもその年齢でここまで保ったのは、初めての事だ。参加賞はもちろんだが、兄ちゃん達は特別賞として、これをプレゼントだ！」そう言い終わると、手に持っていたベルをカランカランと鳴らし、その事を知らせた。すると、あっと言う間に人だかりができてしまった。「兄ちゃん達には特別賞として、1人ずつにベルティナでしか作る事のできなかった秘剣『バルセンダー』をプレゼント！遠慮はいらないよ！」そうして僕達1人ずつその剣を貰うと、手渡される度に拍手が湧いた。賞金は貰えなかったが、この剣の方が100ガルン以上の値打ち物だ！と、僕はふと思った。帰り際にジンがバルセンダーを夕日に翳しながら見惚れていた。「ハァ・・・・・・。この剣、デザインや刀身の質とかいいなぁ。真似（まね）でもしてみようかなぁ。それか、この剣を今度レヴェナーンで作ってみようかな･･････」などと、抑えきれない笑顔を背景に、微笑しながら独り言を絶えず口ずさんでいた。その間に、ヴァンスが集合場所にしていた所に辿り着いた。アルメ達は持っていても食料品購入以外に使う事が無かった『お金』という物を使って、初めて『城下町で買い物』という事ができた事に、とても満足していた。アルメとアイリは新しい衣服をまとい、アリアは首飾りや腕輪、左腕にラレスの族模様の刺青（いれずみ）をいれてもらい、どちらにしろ、3人の外見はガラリと変わった。なにせアルメ達が持っていたお金は、総額10ガルン。時々食料調達の為、距離はあるが周りに住む人から郵便で送ってきてくれる支援金を、少しずつ貯めていたからだ。「それじゃあ、そろそろベルティナを出発しますか。先程見た時計では、只今の時刻6時24分。そろそろ出て、なるべくレヴェナーンに近い所で休まなければ。」と、ヴァンスが少し注意をした。辺りはまだ賑わっていて、これからの夜が本番の屋台も開き出した。そして、何か武器でも作っているのか、金属音がしきりにする。「・・・・・・そういえば、セルク達は？」と、僕はふと思い出したので、皆に聞いてみたが、皆は首を横に振るだけ。」「しかも、さっきから人の気配の無い所から聞こえる金属音も怪しいな。」ジンも少し警戒している様だ。しばしの間、沈黙が目の前を横切ると、ヴァンスが喋り始めた。「・・・・・・まさかとは思いませんが、とりあえずあちらの方へ行ってみませんか？」ヴァンスが金属音のする方向を細い指で指すと、皆はそこへ走り出した。僕達は息を潜めながら音のする方へ耳を傾けると、息の切れる声と、どこかで聞いた事のある声が･･････「ククク・・・・・・。こんなに動きが鈍いとは。惨（みじ）めなものだ・・・・・・。」カルディス共だ。今回攻撃を仕掛けてきた金髪の種族『ローレライ』のリーダーだ。相手は3人と、セルク達の方が断然有利だが、セルク達もあの『ハーライド』とやらに苦戦していた。「ハァ、ハァ・・・・・・。なんて強さだ･･････。」セルク達はその場に屈（かが）みこんでいた。「・・・・・・やめなさい。こんな事をして何が楽しいのですか。」ヴァンスがセルク達の壁にしてカルディスの前に立ちはだかり、論じた。「やぁ。また会ったねぇ。ご無沙汰（ぶさた）してたかい？ククク。」相変わらずの憎しみを込めた声でヴァンスをからかった。「弱肉強食。弱き者は強き者に滅ぼされるのが当たり前だろう？それの何がおかしい。」「カルディス。お前が弱き者だ。たかが手を上げて勝ったとしても、それを根拠に相手を見下す事自体は、自分を強く見せつける為の、弱き者が使用する手段だ。強き者は、全てを平和に保っている者が、邪悪な者、つまり弱き者をこの世から消し去る。その事を意味しているのだ。だからカルディス、お前は例え世界最強でも、扱いは一番下だ。覚えておくが良い。」さすがはヴァンス。相手の使用した言葉をうまく利用する事は、彼の得意技だ。その言葉にカルディスは舌打ちをした。「・・・・・・その言葉、そっくりそのまま返してやるからな。だが、今はこちらの方が断然不利だ。一旦引かしてもらうよ。今度会う時は、レヴェナーンが滅びた時だ。あのナイトメア様を封印したケルイバル・レンターアムの子孫を滅ぼした時に・・・・・・。」そう言って、突然やって来た雨雲の稲妻に打たれ、消え去った。その後、雨が盛んに降り出した。「・・・・・・助かりました。自分達が何とかしなければと思い、あまり人がいない所を選んだのですが、面目無い･･････。」「そんなことをすれば、無駄死にです。どうせなら皆で戦ったほうが良いでしょう。先程も結局、我々が来るとすぐその場を退けたから。」その言葉にジンが苦笑した。僕がなぜ笑っているのか尋ねると、「やっぱり相手は弱いな。自分が強いと言いながらも、自分から逃げたからな！」皆は少し間をおいて大笑いした。そしてセルクが笑いをこらえて喋りだした。「そういえば、この後はどうなさるんですか？」「私達は、近いうちにあのローレライと戦う事になります。その為、今日はなるべくレヴェナーンに近い所に宿泊する予定です。」バルクが少しがっかりしていた。「それはしょうがない事だな。今日はベルティナで休んでもらおうかと思ったのだが・・・・・・残念だ。」その時、ヴァンスが悲鳴をあげた。僕は不思議に思い、後ろを見てみると、ジンが密かにヴァンスの腰の部分をつねっていた。「何をするんですか！痛いではあり・・・・・・」ジンがヴァンスの口を塞ぎ、耳元で何かをささやくと、しょうがないな。という顔で話し始めた。「今日はここベルティナで宿泊したいという要望があった為、今回限り、ベルティナで休ませて頂きたい。どこか良い宿はご存知ですか？」すると、セルク達に笑顔が戻り、1人1人に手を引かれ、僕達はある場所へ連れてかれてしまった。

  2007.02.24

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• 落雷疾風記　第5章　護衛（ガルド）　続き3

  「・・・・・・ここです。ようこそ『ベルティナ』へ！」そこは人々で賑（にぎ）わう城下町だった。賭場（とば）やバー、遊ぶ所もあり、人生ここで暮らせば、これ以上の贅沢は無いと言うほど、飽きの来ない町並みが続いていた。僕はヴァンスに許可を貰い、ジンやウィルと賭場へ向かい、アルメ達は初めての洋服店へ行き、色々な洋服やアクセサリーを見に行った。「ヘイ！そこの兄ちゃん！ここで少し遊んでいかないかぁ？」と、声をかけられたのはジンだ。「おっ！それはどんな遊びだい？」「ケケケッ！よくぞ聞いてくれました！皆、1マリンを払って模造剣を買うんだ。それで障害物のたくさんある広場へ行って、先に相手を斬ればいいんだ。もちろん、模型だから少し痛いだけだ。死にゃせんから安心しな。そして、最後に生き残った者には賞金100ガルンだ！どうだい？3人1チームで挑戦してはみないかい？例え倒されて退場になっても、参加者全員に、ベルティナ限定のピアスが貰えるぞ！だが100万分の1チームの確率で･･････」と、僕達がワクワクしながら話を聞いている途中でその男は口を塞（ふさ）いだ。「おっといけねぇ、これは言っちゃあならねぇ事なんだ。ごめんよっ！それより、参加するのかい？」僕達はもちろん承知し、模造剣を3つ購入した。「この剣は参加の印として、持って帰っても構わないからね。それじゃあ、存分に楽しんでおいで！」僕達は、早速購入した模造剣を握り、目的地へ向かった。その広場は、その店の2軒ぐらい向こうにあった。僕達は早速入場し、腰を低く構えた。リーダーはもちろんジンだ。「いいか、俺が前へガンガン行くから、クローヴィス達は俺の援助をしてくれ。それで行くぞ！」ジンは毎回自分を中心におくが、たいていその方が効率が良かったりするから不思議だ。すると、ウィルがピクッと反応した。「・・・・・・そこだ！」ウィルは剣を振りかぶり、バシッとその人に当たった。しかし、それは人ではなく、ダミー人形。障害物のようだ。「そりゃないだろ・・・・・・。」と、ウィルがため息を吐くと、今度はジンが反応した。「こっちだぁー！」と、出てきたのは本物の人間大2人。賭け事に強そうな眼と、ガッシリとした体つきのある、ちょっと怖そうな人達だった。その人達は、あっさりジンの一閃をかわし、笑いながら逃げ去った。「くそっ！惜しかったなぁ。」「もうちょっとだよ、ジン。次々行かないと、あっと言う間にやられちゃうかも。さっさと行こう！」そうして僕達は一番道の広い、誰も通っていない道を突っ走った。その音を聞いたのか、周りの隙間からゾロゾロと人が出てきて、僕達を追いかけてきた。「へへっ！そう来なくちゃぁな！調子が狂うぜ！」目の前に立ちはだかる大人の壁を、僕達はまるでクッキーを割るように打ち砕いていった。僕達は身軽な為、相手の攻撃など、思った以上に受け付けなかった。バシッ！バシッ！という音が長い間広場中に響き渡る中、攻めて来た人達の3分の2を打ち破り、障害物の陰に隠れて、身を潜めていた。「・・・・・・これだけ倒せば、賞金100ガルンに少しずつ近づいているな。どんどん行こう。」僕は、こんなに気分が晴々としたジンを見たことがなかった。なぜなら、レヴェナーンは田舎と首都の間だが、微妙に田舎という方が近かった為、野外ではなく、このような遊び場が設けられている所に来た事が無かったからだ。ベルティナで過ごす1分位の短い間だけでも、僕達にとってはレヴェナーンで過ごす1年に感じた。多分これはアルメ達同じ様な事を感じていることだろう。僕がそう思っている間に、ジンは立ち上がり、また中心の戦場へと向かい、声を張り上げながらバシバシ斬っていった。

  2007.02.17

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• 落雷疾風記　第5章　護衛（ガルド）　続き2

  「・・・・・・ヴァンスさん少しいいですか？」「ん？どうしました？クローヴィス君。」「ミスリルとオリハルコンを錬金術で合成して頂けないでしょうか？」「うむ・・・・・・少しレベルの高い錬金合成の材料ですねぇ。そもそもなぜこういう事を？」僕はサウザント・クローの話を手短にヴァンスに説明した。「なるほど・・・・・・分かりました。少しやってみます。」すると、ヴァンスの身体からラールが出てきて、僕がカバンから出したミスリルとオリハルコンを包み込んだ。「頼みますよ・・・・・・。錬金魔法『ライトメニウム』！」すると、2つの鉱物が眩（まばゆ）く光りに輝き始め、やがて1つの光となった。「・・・・・・できましたよ。」ヴァンス自体は何もしていないのに、息が荒くなり、薄（うっす）ら汗もかいていた。「この・・・・・・鉱物の名は・・・・・・『オリミス・リルハルコン』。ただ単に・・・・・・組み合わしただけの、新出鉱物だ・・・・・・。昔は・・・・・・『アルテマイト』と呼ばれていたが・・・・・・。」「ありがとうございます。お疲れ様でした。」「・・・・・・いやいや。」ヴァンスはフゥと一息入れると、その場に寝転がった。早速僕はジンの所に行き、集中しているジンを襲撃した。「ねぇジン、さっきヴァンスさんに作ってもらったんだ、サウザント・クローの材料を。」ジンは未（いま）だ集中していたままで、そんな事はそっち除（の）け。「あぁ、今ちょっと忙しいんだが・・・・・・ん？材料？サウザント・クロー？」ジンはあたふたしながらも起き上がり、僕を見た。「それは本当なのか？だったら設計図を・・・・・・」そう言うと、自分のカバンの中を漁り始めた。「・・・・・・おっ、これこれ。だけど、今ここに金属を加工する為の道具が無いんだ。悪いが、材料のチェックだけしておいてもらえないか？」そしてジンは分からなかった鉱物の名前を書く所に『オリミス・リルハルコン』と文字を適当に書くかの様にサラサラと書いた。そして僕はジンから設計図を貰うと、早速中を見てみた。しかし、あまりにも複雑すぎて、何に対して何が描かれているのか、全く分からなかったが、僕は時に頷いて見せた。なぜかというと、主原料のオリミス・リルハルコンのつづりが、よく分からない単語だったが読む事ができ、その他の所に書いてある物を見ると、ほとんど金属の名前で埋められていた。鉄、鋼、精霊石、一部を除いて皮など、どれもレヴェナーンで採れる物ぐらいだった。精霊石とは、その石が付いている物に精霊を宿らす効果のある石の事で、精霊を持っている人なら誰でも持っているし、持ってない人でも精霊を扱うことが出来る、とても便利の良い石のことだ。僕はとりあえず設計図を折りたたんだ。するとヴァンスが出発の号令をかけ、僕達はロイドランゲイス湖を後にした。帰り道の東方向へ歩いて行くと、地面には芝が生え、少し歩いた所にはロイドランゲイス湖に繋（つな）がる川も有った。水中では魚が泳ぎ、水や魚の鱗（うろこ）が眩い太陽の光を撥（は）ね返していた。「・・・・・・にしてもおかしいな。たいていこの季節になると、雨が1週間ぐらい降り続いていたのに。これもナイトメアの力が回復し始めたのだろうか。」ジンが普通の声で独り言を言っていると、ヴァンスが受け流すように答えた。「・・・・・・うむ。そうかも知れんな。しかもまだこの季節にしては気温が高すぎる。異常だな。」僕はその頃、空を見上げていた。雲1つ無い、快晴の空を。空には鳥が円滑に飛び、来た時の気候とは打って変わって良かった。そしてジンがゼルガを召喚し、風を呼び起こす魔法『ケイルス』を唱え、僕達を涼ましてくれる。すると・・・・・・「いやぁ、いい風ですねぇ・・・・・・」他の集落の人と合流した。髪の毛は黒く、ライトエルフの人達の男性3人、女性3人の、合わせて6人だった。年も自分達と同じぐらいであった。「こんにちは。貴方達はどこの集落の人ですか？」僕はそう質問すると、彼達はこう説明してくれた。「僕達はここから南東の方に少し行った所にある『ベルティナ』というヴィルム島の首都へ帰る者です。商業が中心の町で、とても賑（にぎ）わっている楽しい町ですよ。一回来てみればいかがですか？」僕はヴァンスと顔を見合わせ、時間がまだあるという事で承知のサインを受け取ると、その人達がさらに続けた。「自己紹介を忘れていましたね。僕の名前は『セルク・トラバナス』、僕の隣が『バルク・レイルラス』。そしてその隣が『アルヴァス・レイトメニエル』。女性の方は、左から『ジャスミン・ディラー』、『メイル･エリシリンカー』、『ミリア・グルプナウル』です。自分達のことは呼び捨てでいいですよ。それでは早速行きましょう。」僕達はセルク達に案内され、ヴィルム島首都『ベルティナ』へ出発した。

  2007.02.03

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• 新小説執筆開始のお知らせ

  この落雷疾風記はまだ完結していませんが、ふとアイディアが浮かんだため、新小説を新たに書くことを決めました。題名は、「人形遣い」。載せるのにはまだまだ時間がかかり、更新は後々の方になると思いますが、更新すれば、ぜひ読んでいただきたいと思っています＾＾

  2007.02.03

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• 落雷疾風記　第5章　護衛（ガルド）　続き1

  「・・・・・・クローヴィス・・・・・・クローヴィス・・・・・・。」僕は声が聞こえたので、起き上がった。倒れた所の風景とは違い、鮮やかな楽園みたいな所で、昔、有名だった人もたくさん居た。そして目の前にはどこかで見たことのある顔つきの黒髪の男が立っていた。「君がクローヴィスか。賢そうな顔つきだな。」そういうと、その男は少し笑った。「・・・・・・あの・・・・・・貴方は誰ですか？」「私か？私は『ケルイバル・レンターアム』。お前の祖父に当たる者だ。」そう聞いた後、僕は思い出した。僕の家の額に飾ってあった肖像画の人にそっくりだからだ。この人が、あのナイトメアを封印した男・・・・・・「えっ、でも僕の父さんの苗字は『マクロフィア』ですよ？」「それは、セルヴォイがミルイさんの所に養子として行ったからだよ。」僕はその事を全く知らなかったので、少し驚いた。ケルイバルはさらに語る。「しかし今、ナイトメアが復活してしまったようだな。だが、後々そうなってしまうだろうと思っていた。君は死ぬには早すぎる。・・・・・・じゃない、死ぬべきではないのだ。君は私の代わりにナイトメアを再封印してもらう必要がある。お前はレヴェナーンを守るための重大な人物だ。その証拠に、予知能力があるな？その能力こそが、この後のレヴェナーンを救う重大な鍵となるだろう・・・・・・。お前だけにしか持てない精霊を授けよう。本来、お前は精霊を持てないのだが、予知能力を手助けする精霊を授けてやろう。お前だけにしか持てない･･････精霊を･･････」そう言い終わると、僕を立たせ、額に手を当てた。「・・・・・・健闘を祈る・・・・・・。」そうして僕の身体はその場から消え去った。「・・・・・・大丈夫ですか？クローヴィス君。」そこは休憩所のソファの上だった。頭には濡らしたタオルが置いてある。「僕・・・・・・毒蛇に噛まれて、昇天していた様です。あのナイトメアを封印した男でもあり、僕のお祖父さんに当たるケルイバル・レンターアムに会ったんです。それで、僕にしか持てない精霊を授ける。健闘を祈ると言われました。」ヴァンスは売店で買ったコーヒーを一口飲んでから、もう1つ問った。「ふむ・・・・・・。その精霊とやらは今どこへ？」「・・・・・・分かりません。」「そうか・・・・・・疲れているが、しょうがない。あの魔法を使おう。」するとヴァンスは『アヴァナス』の魔法を唱えた。『アヴァナス』は精霊を強制的に呼び出す魔法。しかし、僕の身体からは何も出ては来なかった。「ふぅ・・・・・・おかしいな。大半の精霊はこれで出てくるはずだが･･････少し様子を見てみよう。」ヴァンスがそう言い終わると、いきなり僕は身体の力が抜け、ソファに寝転び、ぐっすり眠った。翌朝、僕はなんと10時に起きた。皆はもう既に起きていたので、挨拶を交わした。売店は新しい商品が入荷されていて、人も何人か訪れていた。するとジンが近寄ってきた。「よぉ、クローヴィス。やっと起きたか。体内時計が狂ったか？」「いやぁ、偶々（たまたま）昨日寝るのが遅かっただけさ。」僕は思わず苦笑いを浮かべた。昨日噛まれた所を見ると、その傷跡は見事に残っていた。しかし今ここにいるということは、あの時ヴァンスさんが毒を中和してくれたに違いない。「・・・・・・どうした？クローヴィス。その傷跡は？」「あぁ、これ？いやぁ、なんでもないよ。」「そうか・・・・・・。ならいいが・・・・・・」そう言った後、ジンは僕から離れた。「皆、今日はとりあえず進める所まで進んでみようと思う。いかがかな？」ヴァンスはいつも冷静沈着で僕も見習いたいぐらいだった。「俺は行ける所まで行ってみたいものだな。」ジンや僕もヴァンスの意見に賛同し、休憩所の食物を少し購入してから、休憩所を後にした。2～3km位進み、木々や草原を抜けると、来る時には立ち寄らなかった『ロイドランゲイス湖』に辿（たど）り着いた。しゃがみこんで見ると、水平線が微妙に見える。「こんな広い所があったんですねぇ。初めて知りました。」ウィルはそう言うと、湖の水を手で掬（すく）い、顔を洗った。「まったくですね。少しここで休みましょう。」アルメが元家から持ち帰っている物の中からパンを取り出し、先ほど休憩所の売店で買ったサラダをおかずに、サンドイッチを作り、皆に配ってくれた。皆は美味（びみ）の一言しか漏らさない。「それにしても最近よく晴れるよなぁ・・・・・・雨季の時期は過ぎたのかな？」その言葉にアイリが鼻で返事をした。「んー・・・・・・。ウィンディーネならいつでも降らせれますよ！」「・・・・・・いやいや。僕はその逆がいいな。」僕はそう返答すると、アイリは頷（うなず）きながらサンドイッチを一口。その時、ジンは何かをブツブツと言いながら、小さめの冊子に何かを書いていた。「・・・・・・ジン？何をしているの？」「・・・・・・あぁ、これか？一昨日（おととい）の朝、俺の眼の下にくまが出来ていたと思うんだが、あの時4時ぐらいに起きてから黙々とこれに書いていたのさ。一見普通の本に見えるが・・・・・・ほら、見てみなよ。」と、僕の目の前で、その本に文字を書いた。すると、文字はしばらくそのページに残っているが、スゥーッと消えてしまった。「なぁ？不思議だろう？こうやって書いた後、自分が『消去』という文字を想像すると、想像した部分だけスゥーッと消えてしまうんだ。インクを消す為のナイフがいらない優れ物って訳さ。それで、すぐ近くに俺の日記帳があるだろう？それを写して、この本を日記帳にする予定なんだ。文字を消す時間が省（はぶ）けるからね。」僕はあまり興味が無かったので、適当な相槌（あいづち）をうってから、その場を立ち去った。それより、僕が気になっていた事があった。

  2007.01.28

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• 落雷疾風記　第5章（ガルド）　護衛

  ・・・・・・ここは小屋を出てから最初に訪れた休憩所。時刻は21日の夜中の11時を回り、外は暗闇と沈黙で静まり返っている。人は僕達と売店の当番の人以外、誰もいない。運良く、小屋からここまで雨が降らずに来たが、未だ道のりはある。ジンは地図や新聞を確認しながら、ウィルに奢(おご)ってもらった、ここの休憩所の名物『ミルクティー』を少しずつ飲み、ため息を吐くことを繰り返している。僕やウィルは退屈だったので、売店のお兄さんと、今までにあったあらすじを話していた。「・・・・・・そりゃぁ色々と大変だったんだなぁ。まぁここでゆっくりしていくといいよ。さっきから誰も客が来ないから、僕も退屈していたところさ。良かったらここで寝過ごしていってもいいよ。その方が僕も安心だし･･････。」と言う事で、ここで寝泊りすることになった。休憩所は見渡すと意外と広く、ソファも4mもあるのが4つ程あり、寝るには最高の場所を確保できた。「皆。これからの帰り道の件なんだが・・・・・・どうやら来た道には土砂崩れが起こっているらしい。カルメス山にいた時は雨が降っていなかったが、ここ周辺は土砂降りだったらしい。多分ローレライ共も行動できずに、どこかで待機していることだろう。こういう時こそ精霊を使えばいいんだが、未だ何十kmもある。途中で力尽きても困るし、土砂崩れに襲われてもいけないから、しばらく様子を見てみよう。」皆は頷き、ジンはまたミルクティーを啜（すす）った。そしてヴァンスが喋り始めた。「しかし、問題はローレライ共だ。彼らは我々よりも先に着くように素早く移動していることだろう。あの『ハーライド』とか言う武器で。おそらく彼らの方が断然早いが、人が少ないはずだ。もしも自分達の領土に帰るならば、4日間位の余裕の時間が我々にはできるだろう。それに今は賭けてみましょう。」そうヴァンスが提案し、皆承認した。僕は日記帳と羽ペン、インクを取り出し、こう書いた。『6月21日　今日、ついにミスリルとオリハルコンを発見することに成功！』ここまで書くと、急にあの事を思い出した。そう、『サウザント・クロー』製作だ。しかし、今日はヴァンスも疲れているだろうから、今日は諦め、続きを書き始めた。『そして、ジンは兄妹とも再会して、新しくアルメ、アイリ、アリアの3人が加わり、そこにいた精霊達（ラミアー、オルセン、サラマンダー、ウィンディーネ、シェーラ、ジョフィール）も仲間になった。しかし、途中でローレライと出くわしたが、ウィルとも合流し、追い払うことが出来た。さらに帰り際に磁神ガウセルも仲間に加え、最初に比べて何と11人も仲間が増えた。しかし、まだローレライとの戦いは終わった訳じゃないから、早く集落に帰らなくてはいけないな。』いつもより短く書き終えたのにドッと肩が重くなった。相当疲れているらしい。アルメ達や精霊は既に就寝していたので、僕もソファへ寝転んだ。その夜、僕は眠れずにずっとソファの上で眼を開けていた。というより、眼が開いていた。疲れているはずなのに、眠れない。「クローヴィス君、少し寝たまえ。あと1時間で明日だが、疲れていると動けないからだ。1分でも多く寝たほうがいい。」ヴァンスは万が一ということで見張りだったが、眠るにも眠れない。ただ今聞こえるのは時計の針がチッ、チッ、と鳴っているだけ。ほとんど無音なのに、眠れない。皆はスヤスヤと眠っている中、僕はムクッと起き上がり、ヴァンスに断りを入れ、外に出た。雲1つ無い快晴で、右から左へと風が吹く。樹がサワサワと優しい音を奏で、まるで子守歌の様だった。僕は大きく深呼吸し、肩を回した。さっきの肩の重みは消え、1日寝たような感覚だった。その時、足元に、シュルシュルという音がした。僕は怖々足元を見ると、蛇が地面を這っていた。その柄を見る限り、毒蛇だった。今動くと、噛み付かれるに違いない。しかし、逃げなければ噛まれる。僕は一か八か、足を引いた。しかし案の定、その毒蛇は僕の左足に邪悪な牙を向け、入り込むように噛み付き、逃げ去った。僕は悲鳴を上げずに倒れこみ、意識を失った。

  2007.01.25

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• 落雷疾風記　第4章　発見（ディスカバリー）　完

  「・・・・・・そこ・・・・・・！」アリアはジョフィールを召喚し、紫色の針状の物を数本、手の中で作り、音もせずそれを投げた。タンッタンッと、2本位だろうか、何かに刺さった。そしてすぐ、落下した。僕達は剣を構えたが、何と落ちて来た物は樹の板だった。「・・・・・・しまった！皆、飛ぶんだ！」ヴァンスの言う通り、その場を立ち退ける様に飛んだ。すると、地面が突然ヒビ割れ、あるローレライのハーライドが割れ目から刺してきた。そのローレライは、リーダーカルディス。「チッ。はずしたか。・・・・・・かかれ！」するとまた地面にヒビが。今度は2箇所、僕達の近くでもう2人出てきた。「・・・・・・そろそろ本格的に攻撃させてもらうよ。」そして3人がこちらに走ってきた。「クローヴィス君。君の「アレ」を貸してもらうよ。」ヴァンスはローブにしまってある物を取り出した。そう、それは本来クローヴィスの誕生日プレゼントの『翼の剣』であった。その剣を合わせ、二刀流。そしてヴァンスは無雑作（むぞうさ）に剣を振り回し、飛んでいるかの様に相手を切り刻みにかかった。そうやって見とれている内に、ヴァンスがローレライを1人斬った。「クッ・・・・・・たかが亀ごときに・・・・・・役立たずめ！」するといきなりカルディスの右腕がカッと光った。何か強敵でも現れるのか？！と思いきや、カルディスの足元にいるのは小さな鼠（ねずみ）1匹。「コイツの名前は『ティル（キルル科）』（鼠型♂）。体は小さいが、よく見ておけ・・・・・・。」すると気が付いた時にはティルがいなかった。するといきなりヴァンスが悲鳴を上げた。「グッ・・・・・・どうやら『感電』された！」ヴァンスの身体には、まだピリピリという音が発している。そしてティルはまだ地面を光速で走り、ヴァンスを苦しめた。「黙って見ている場合じゃない！こっちも行くぞ！」ジンはバリウスを召喚し、ヴァンスにくっ付いているティルを取っ払った。そして、スゥーっと消えていった。その事に激怒したのか、顔を真っ赤にさせて、さっきジンが作った雷球よりも遥（はる）かに大きい雷球を作り、投げようとした。すると、ある樹の陰から鎖の鞭が、ジャラジャラと音を立てながら水の様にうねり、カルディスの雷球に当たり、パチンと弾けた。そして、そのままカルディスの腹部を叩（たた）き、元の場所に戻る。「ゴホッ！・・・・・・誰だっ！」カルディスが少し怒り気味に叫ぶと、その姿を現した。「・・・・・・やぁ、クローヴィス。助けに来たよ。」その人は青髪のウィル・グリンディローだった。そう、彼は音楽家でもあり、鞭使い『ラッシャー』だった。その鞭は柄に鎌が付いていた。つまり『鎖鎌』だった。「えっ！でもウィル、なぜここへ？」「あの時ヴァンスさんに頼まれていたんだ。密(ひそ)かについて行っていたんだよ。でも、レヴェナーンを出て数十km位行った所で、いきなり2人が消えたものだから、今まで迷いながらここまで来たのさ・・・・・・。」と、ため息を大きく吐いた。「・・・・・・だけど、休んではいられない様だね・・・・・・。」その言葉を聞くなり、カルディスをキッと睨（にら）んだ。しかし、カルディスは背を向けた。「こちらの方が人数が少ないな･･････。今回はひとまず身を引かしてもらおうか。」風が少し吹いたかと思うと、カルディス達は砂の様に消え去った。少し間をおいて、ヴァンスが喋り出した。「もしかしたらカルディス達は、このままレヴェナーンに直行する気かもしれない。我々も急いで帰りの支度（したく）をしなくてはいけない。小屋に戻りましょう。」こうして僕達は急いで小屋へと戻った。「アルメさん達。今まで暮らしてきた小屋との別れを告げましたか？」そうヴァンスが語り始めた。ここは、昨日野宿で使用した洞窟周辺の森林。時刻は夜の9時を回っている事だろう。その時アルメとアイリは涙ぐんでいたが、なぜかアリアだけ無表情で俯（うつむ）いたままだった。アリアの手には親指の爪ぐらいの珠が腕輪状になっていて、丁度アリアの手に納まっている。まるで、『数珠』のようだ。さすがの僕も話しかけ辛かった。というより、まるで塞がれているかのような･･････。その時、少し頭髪が揺れる程度の風が吹いた。いつもの事なので、僕達は気に留めなかったが、アリアは何かに驚くように、足を引いた。「・・・・・・シェーラ、誰かいる。」アリアは無言でシェーラを召喚し、魔法『クラインホーリラ』を唱えると、樹の陰からよろめく様に何かがこちらへやって来た。どうやら精霊らしい。「グッ・・・・・・見事だ･･････。」僕は何が起こったのかサッパリ分からなかった。その精霊はさらに語る。「・・・・・・私の名は磁神『ガウセル（サピエンス科）』（人間型♂）。磁力の神だ。なぜ神がここにいるかと言うと、私磁霊は、この前まで何万という単位で栄えていた。しかしここ最近になり、『ローレライ』という者が攻めてきて、私以外、ほとんど全てローレライにやられてしまいました。しかも彼らは雷霊使い。磁力など、自分達には歯が立たない事を知っていて、攻撃して来たに違いないであろう。多分、もう全員やられてしまったのだろうと思っていたが、今彼女が持っている腕輪、それは、我々磁霊に伝わる代々受け継がれてきた磁力の腕輪『ガウスリング』。あの時ローレライに盗まれ、行方が分からなかった物だ。それは私がこの周辺をさまよっていた時に偶々、襲ってきたローレライを見つけたのだが、私に勝ち目はないと思っていたので、隠れていたのだ。しかし、その時貴方達がローレライを取っ払い、彼女はローレライが途中で落としたその腕輪を拾ったのです。私は返してもらおうと思ったのですが、その相手も雷霊使いがいました。しかしもう我慢できなくなり、自分の身がどうなってもよくなったので、貴方達よりも先回りをし、待ち伏せしていたのです。しかし、先ほどの様に見つかり、今に至っているのです・・・・・・。」ヴァンスは相槌を打つ様に話し始めた。そしてアリアはガウセルの前に行き、ガウスリングを手渡した。「それは大変でしたね・・・・・・。これはお返しします。良ければ私達と一緒にローレライを倒しませんか？私達も今、ナイトメア率いるローレライを倒し、私達の集落を護らなければならないのです。しかも、今人材が足りないのです。仲間になって頂けると有りがたいのですが・・・・・・。」その言葉に驚くようにガウセルは承認し、仲間が1人増えた。しかも精霊神の1人を。そして、僕達は集落防衛のため、走り出した。

  2007.01.21

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• 落雷疾風記　第4章　発見（ディスカバリー）　続き3　

  「そういえば・・・・・・どうしますか？僕の家に来ますか？」アルメ達は少し悩んだ後、こう言った。「迷惑にならないのであれば、身を任せたいです・・・・・・。」と、弱々しく言った。「なら、家に来てください。1人でも多くいれば、賑やかでいいですからね！」アルメ達は、少し照れながらも、「よろしくお願いします。」と、丁寧にお礼を言った。「もうお昼ですね・・・・・・。そういえばジン。寝床（ねどこ）は取ってあるの？」「あ・・・・・・すまない。昨日は確保できていたのだが、もしかしたらお世話になるかも知れないな。」ジンがそう言うと、アイリがニッと笑った。「なら泊まってよ！どうせ今日までなんだから。ゆっくりしていけばいいじゃない！」その言葉を聞いた時に、僕達はついホッとした。鉱物の事だけしか考えていなかったので、困っていたところだった。昼食は、皆で準備をした。もちろん精霊達も。僕とジンは狩りに出かけ、ヴァンスとアルメ達は山菜集め。精霊達は調理係だ。早速僕達は外に飛び出し、山と海に分かれた。僕とジンは、それぞれ愛剣取り出して砂浜を掘ったり、銛の様にして魚類などを獲ったりと、楽しい一時を過ごしながら、食料を集めた。少し時間が経ち、僕とジンは魚15匹、貝46個、塩（海水）、海藻類（ワカメなど）を獲る事が出来た。僕達が帰る途中にヴァンス達とも合流した。彼らは、図鑑で食べられる茸を調べ、効率良く採っていた。茸が78個、山菜類41個を採っていた。そう話していると、ヴァンスが異変に気付いた。「シッ！喋らないで。何か来る！」ヴァンスが言った通り、奥の茂みから何かガサガサという音が聞こえる。僕は草と草の間から、音のする方を見てみた。と、その瞬間、僕の声はガタガタになった。「・・・・・・ロ・・・・・・ローレライだ・・・・・・！」美しい姿が特徴で、金髪。それはまぎれも無くローレライだった。しかも10人。攻めてくる相手だ。ジンは思わずあたふたしそうになったが、今ここで気付かれると、10人対6人ではまるで歯が立たない。「・・・・・・確かに武器は持っていないようだ。」ヴァンスはそう確認すると、僕の持っていた一冊の本を取り上げ考え始めた。そう、その本とは『ケルーハの書』。開けてはならない危険な書物だ。しかし、ヴァンスは少し考えた後、思い切ってケルーハの書の封を切った。すると、ケルーハの書がカッと光り、眩しくなった。よく見ると、僕達の身体が砂になってゆく。しかも、その発した光で、ローレライ達が気付いてしまった。しかしローレライ達がこっちに来たものの、僕達は砂になっており、気付かれる事はなかった。そのことにローレライは怪しく思ったらしく、その場を去った。そして、いつの間にか僕らは元の姿へ戻っていた。「やれやれ、危機一髪だな。それにしても、その本はすごいな。」ジンが羨ましがると、ヴァンスも同感。「私もそう思った。なにせ1回も使った事が無い物だったようだ。」そうヴァンスが言った後、僕達は来た道を帰って行った。小屋に着くと、精霊達が待っていた。僕達は、ラール、ゼルガ、バリウス、ラミアー、オルセン、サラマンダー、ウィンディーネ、シェーラ、ジョフィールの、それぞれの長所を生かして調理した。ゼルガとラミアー、サラマンダーで火を焚き、ウィンディーネが食材を洗う。そしてバリウス、オルセンが食材を切り、シェーラ、ジョフィール、それと僕達で何かといろいろ調理し、約1時間後、とても美味しそうな料理が何点か出来た。スープやサラダ、メインディッシュは魚のムニエルなど、栄養豊富な料理がたくさん。「それじゃぁ、頂きましょうか。」ヴァンスが号令をかけると、僕達は限りなく湧いてくる話題をつまみに、楽しく食べた。「ねぇジン。明日1日で集落に帰れると思うかい？」僕はジンに質問すると、ジンは胸の辺りをドンと叩いた。ついでに噎せる。「ゲホッ。当たり前だ・・・・・・ゴホッ。少々迷うかもしれないが、大丈・・・・・・ゴホッ・・・・・・夫。」しかし、そこへヴァンスが口をはさんだ。「しかし、ラールの瞬間移動を使おうと思ったら大間違いだ。あれでも結構、ラールも私も体力を要する。瞬間移動した所がまだ道の真ん中だったりとかしたら、ジン君。君は私を担げるか？」その言葉にアルメ達や精霊達が微笑。ジンはムッとした。「んじゃぁ、本当にヤバイ時には助けてくれるのか？」「まぁ、時と場合によりますが。」少しの間、沈黙の時間が僕達の目の前を横切った。「・・・・・・そういえば、午後は何をするのですか？」アルメが沈黙を破ると、ヴァンスは少し悩んでこう述べた。「私達は戦闘に必要な武具を少しだけでもいいので作りたいと思っています。先程拾ってきた量では間違い無く足りません。あの場所にもう1度行き、もっとたくさんの鉱物を拾い、武具を作ることにしましょう。」皆が頷くと、ヴァンスは立ち上がり、小屋の外へ出た。僕達も、ヴァンスに続く。さっき来た所に行く途中で、いきなりヴァンスが足を止め、草陰に隠れた。「静かに。またローレライがいます。」僕も草陰から様子を窺うと、さっき僕達が採りそこなったミスリルやオリハルコン、ハマティルトの破片を拾い集めていた。よく見ると、18～19歳の若者らしい。「うーむ・・・・・・あの人達が私達を同じ種類の武器で戦っても意味が無い。ここで食い止めなければ・・・・・・！」ヴァンスは悔しそうに舌打ちしたが、ジンがこう提案した。「ヴァンスさん。相手は手に武器を持ってはいないという事を聞いているが、鉱物を拾うところを見れば、武器を作ることはほぼ確定していると思う・・・・・・。一応相手はまだ武器を持ってはいないはず。追い払うのなら今だ。」ヴァンスは納得したのか、頭を縦に振ると、少し下がり、僕達に指示を出した。「一応、即決なのだが、通りすがりという事にしよう。」そう言った声が聞こえたのか、1人のローレライがピクンと反応した。「・・・・・・誰かいるようだぞ、皆。動物の気配がしない。多分人間だ。」「おい、本当か？まぁ、ここは敵の陣地。味方は絶対いない事は分かっている。戦闘準備でもしておこうか・・・・・・。なぁ？カルディス。」どうやら最初に発言した人の名前は『カルディス』と言うらしい。苗字は分からないが。するとカルディスが喋り出した。「あぁ。だが、この『ハーライド』さえあれば、武器を持たなくても勝てるだろう？負気など、1つもしないね。」そうカルディスが言うと、他の者達は笑い出した。しかし、その高慢な振舞いにムカッときたのか、ヴァンスは身を乗り出そうとした。「・・・・・・そろそろ行きましょう。」僕達は即決で決まった場所から歩き始めた。すると案の定。ローレライはすでに気付いていた様な感じで声をかけてきた。見た目は綺麗でも、中身は汚いという事がすぐ分かった。「おや君達。どこへ行くのだい？家族で遠足かい？」カルディスがからかう様に喋り始めると、ローレライ達の中でドッと笑いが起きた。様子を見ているうちに、カルディスはキャプテンだという事も分かった。するとジンが喧嘩腰で対抗した。「あぁ。遠足なのだが、ここが目的地でねぇ・・・・・・。どいてくれないか？」その返答を聞くなり、カルディスが鼻で笑った。余計にジンがイライラ。「そうだったのかい？だがな、ここをタダで通す訳には行かないんでねぇ。ナイトメア様の命令で。最近元気が良くなってねぇ、機嫌が良いらしい。」「そうか。でも俺達もアンタ達にちょっとした用があるんでねぇ・・・・・・。お前らの目的地は、『レヴェナーン』だろ？」するとカルディスは疑問の言葉を吐いた。「おい。どうしてその事を知っているんだ？まさかお前ら、スパイか？」「いや、そういう訳じゃぁねぇんだが、俺達はレヴェナーン出身でねぇ。荒らされたくないんだよ。」僕は内心「スパイはどっちだよ。」と思った。するとローレライの1人が立ち上がり、ゆっくりとこちらへと歩いてきた。「10対6じゃぁ、俺達の勝ちだ。しかも、俺達には・・・・・・」カルディスが言い終わる前に、その人の靴の裏から『刃』が異様な音を立てて現れた。「こいつの武器の名は『ハーライド』。氷の上を走るかの様な滑らかな動きがあるのが特徴で・・・・・・」説明している時に、その人がまるでスケート靴を履いているかの様な移動仕草を見せた。「その『刃』で相手を剣の舞の様に切り刻む事が出来る。」そして気が付くと、目の前にその人が踵落としをしてきた！僕達は素早く反応し、何とかその攻撃を避けた。落とされた所を見ると、地面が激しく抉られている。この攻撃を一撃でも受けてしまうと、即死だ。「さぁ、この攻撃を受けるか、逃げるかのどちらかだ。さっさと決めな！」僕はムクッと立ち上がり、返答した。「僕達は逃げない。しかし攻撃を受けたくもない。僕達は、マイナス思考派より、プラス思考派だ！」ジンとヴァンスが10人の中に突っ込んだ。ジンは愛剣をブンブン振り回しながら、カルディスに掠（かす）り傷を負わせ、その他のローレライ2人を斬った。ヴァンスは急いでラールを召喚した。「クローヴィス君達、これが私の見せる、ラールの最後の能力だ。」そして、一息入れた後、右手を相手に翳してこう言った。「7つ目の能力＜武器化＞！」ヴァンスの右手の掌（てのひら）にラールが集結し、強大な刀身が特徴の『融合武器』が、ヴァンスの右腕を覆っていた。「この武器名は、『融合武器・アルテイム』。ラールの炎の能力で、相手を切り刻みながら炎上させ、骸骨化する、邪悪で聖なる武器。この武器の錆（さび）となれ。ローレライ共。」そう述べ終えると同時に、ヴァンスのアルテイムは一番後方にいたローレライに牙を向けた。そもそもこのローレライ達は全員男性だった為、心置きなく攻撃が可能だ。もしもこの人達が女性だった場合、たまったものではない。ヴァンスの牙は、そのローレライが避けたとしても、激しく地面を削った。しかし、相手の武器『ハーライド』とやると、ほぼ互角。それが10人分攻めて来るという事になると、防ぎきれない。「ハハッ！動きが遅いねぇ！亀と戦っているみたいだ。」ローレライ達にからかわれた僕はすぐにプチンと来たが、ヴァンスは表情変えずに上空を舞い、カルディスの近くにいたローレライに飛び膝蹴りをかまし、肘（ひじ）で頭を突いた。そのローレライは悲鳴を上げ、頭を抱えて倒れこみ、力尽きた。「お前達は兎（うさぎ）だとしても、亀は兎が油断しているうちにその力を上回るものだ。そういう話を聞いた事があるだろう？」そのヴァンスの言葉にローレライ達は舌打ちした。「・・・・・・少々傷を負っていても構わない。突撃だ。」すると、カルディスの掌（てのひら）からパチパチッという音が聞こえた。そして、それが徐々に中心に集まり、球体となった。「俺達は能力を持っているんだ。『雷』という能力をね。これさえあれば、お前達など、手も出せないだろう。」カルディスは振りかぶり、その雷球を僕達に向かって投げてきた！しかし、その攻撃に素早くアイリが反応し、すぐにラミアーを召喚。魔法『アウィン』の効果で地面に種をばら蒔き、成長を急速に早め、高く聳（そび）える樹の盾で、僕達を護（まも）った。「何？！お前達も精霊を持っているのか？！」と、カルディスは驚きの表情を見せた。「もうこっちには、ほとんど全種の精霊があるんだよ！雷だけじゃ、意味は無い！」ジンが言うと、カルディスよりも大きな雷球を掌に作った。「さぁ、これが本物の雷の能力だ！じっくり味わえ！」ジンが放った雷球は樹の盾を貫通し、ローレライ達の集まっていた中心で爆発した。僕とジンはガッツポーズを決め、ローレライの所に行った。するとどうだろう。普通なら肉片なり骨なり、とりあえず何かが残るはずだが、それらが無い。「・・・・・・どうやら逃してしまったようですね。」ヴァンスや僕は無念の声を吐いた。が、アリアが何かに微弱に反応した。

  2007.01.18

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• 落雷疾風記　第4章　発見（ディスカバリー）　続き2

  「・・・・・・ここですよ。」しばらく小屋から歩いた所に、光を少し反射した、磨けば綺麗になりそうな岩の様な物が幾つもあり、転がして置いてあった。よく見ると、ある岩は海の様な色をしており、また、ある岩は黄金色、さらに朱色のような色をしている岩もあった。「青い岩が、貴方達が探しているものの1つ、『ミスリル』ですよ。そして黄色っぽい岩が、『オリハルコン』です。」「これが・・・・・・あのミスリルとオリハルコン・・・・・・。」僕とジンが声を合わせてそう言った。「アルメさん。少し質問なのですが、あの向こうにある赤っぽい色の岩は何ですか？」とヴァンスが問った。確かに僕も不思議に思っていた。「あぁ・・・・・あれですか？あれは、『ハマティルト』と呼ばれる『融合石』です。」その言葉を聞くと、ヴァンスがハッとした。「おぉ・・・・・これが噂のハマティルトですか。私はこれが欲しいですねぇ。」ヴァンスから話を聞くと、さっき使用した融合魔法『ハマター』の代役が出来る石らしい。魔法のハマターを使うと、使用者も体力を要するが、このハマティルトを使用すると、ハマターを使わなくても融合する事が出来るらしい。「しかしだクローヴィス。この巨大な岩をどうやって割るんだ？じゃないと持ち帰ることが出来ないぞ。」と、ジンが指摘した。確かにそうだ。こんなに硬いものを、どうやって持ち帰るかという事を考えなければ、たとえ見つけても、意味が無い。すると、ずっと黙っていたアリアが口を開いた。「この岩・・・・・・同じ物質同士・・・・・・割れる。金剛石を・・・・・・金剛石で加工するのと・・・・・・同じ・・・・・・。」と、ヒントの様なものをくれた。するとヴァンスが少し冷や汗をかきながらこう言った。「この方法に賭けてみよう。出来るかどうかは分かりませんが。」そう言うと、ヴァンスは静かにローブを脱いだ。「えっ、まさかヴァンスさん？！」僕は、今ヴァンスがやろうとしている事に驚いた。「・・・・・・いきます。」そう言った後、ヴァンスはミスリルの岩の方に向かって走り出した。そしてヴァンスは、背中から岩へと、思い切りぶつかったのだ。キンッという金属音を立てて。「うぐっ・・・・・・！」ヴァンスは倒れこんだ。岩を見ると、血が付いている。アルメ達は悲鳴を上げ、僕達はヴァンスの所へ走った。「大丈夫ですか！ヴァンスさん！なんて無茶な・・・・・・」そう。ヴァンスの背中には、ミスリルとオリハルコンが埋め込まれている。それを利用して、最初にミスリルの岩を割ろうとしたのだ。「くっ・・・・・・私は・・・・・・大丈夫だ・・・・・・。それより、よく岩を・・・・・・見てくれ。」僕とジンは、ヴァンスの言う通りにした。すると、少し岩がへこんでいるのが分かった。もしやと思い、すぐに床を見た。すると・・・・・・「ヴァンスさん・・・・・・やってくれたじゃねぇか。」ジンが笑んだ。僕もつられて笑んだ。ミスリルの塊や破片が、床に散っていた。そして、ヴァンスの背中にも。アルメ達はすぐにウィンディーネとシェーラを召喚。すぐにヴァンスの血を洗い流し、その傷の応急処置をした。そしてそれらをよく見ると、それはまぎれもなくミスリルだった。「だが、まだ終わっちゃいない。オリハルコンが残っているからな・・・・・・。」ジンがそう呟（つぶや）くと、余計なことを言ったなみたいな口調で、僕は注意した。「だがジン君の言う通り、まだ1つ残っている。・・・・・・早くやればいい事だ。なのでそろそろ行きますよ。」ヴァンスはムクッと立ち上がると、今度はオリハルコンの岩に向かって走り出した。すると、いきなりシェーラが両手を合わせ、その後に走っているヴァンスに掌を翳した。（・・・・・・ガルディン！）という声が頭から聞こえてきた後、ヴァンスの身体が一瞬カッと光った。すると、いきなりオリハルコンの岩が一瞬で砕け散った。「ズガァーン！！！」聞き苦しい爆発音がして、音が静まった時、僕達はヴァンスの方へと走った。「ヴァンスさん！大丈夫・・・・・・！！！！」なんとヴァンスは無傷だった。しかも立っている。「わ、私の身に何がおこった？」ヴァンスや僕ははついおどおどしてしまったが、アルメが近づいてきて、こう言った。「・・・・・・シェーラの使用できる魔法の1つを使用したんです。最初は何をし出すか分からなかったので、少しビックリしましたが・・・・・・。この魔法は、私達が使って岩を壊せば良かったのですが、この魔法を使うのが初めてなもので・・・・・・。自分達では少し恐怖感もあったので、いわゆる実験扱いで使用したのです・・・・・・すみません。」と、後ろでアリアが深々と頭を下げた。「いえいえ。謝ってもらう必要はないですよ。逆に、僕達からお礼が言いたいです。すんなり岩を壊すことが出来たのですから。」僕はそう言い終ると、軽く頭を下げた。「ついでにハマティルトの岩もいいですか？」「えぇ。いいと思いますよ。」アルメがそう言い終わると、アリアが前へ出て、シェーラを召喚した。そして、ガルディンを唱えて岩を砕いた。僕達は急いでミスリルとオリハルコン、ハマティルトのそれぞれの欠片を拾い集め、小屋に戻った。

  2007.01.14

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• 落雷疾風記　第4章　発見（ディスカバリー）　続き1

  「おっ！久しぶりだな。でも何でおまえ達がここにいるんだい？」その3人の髪型が緑髪だったので、ジンと同じラレスだ。そこへある一人が、「ジンこそ、何でここにいるの？こっちが聞きたいよ。」「俺か？俺はちょっと、ミスリルとオリハルコンを探しに来ているんだ。あっ、この2人は俺の親友で、この人が、クローヴィス。そして、ヴァンスさんだ。」そういって僕達を紹介した。「よろしく！私はこの3人の中の長女で、名前は『アルメ・フェリアー』といいます。」最初に3人の中で大人っぽい人が自己紹介。続いて次女、三女と続く。「私は、『アイリ・フェリアー』です！」「・・・・・・『アリア・フェリアー』・・・・・・です。」アルメは17歳、アイリは僕と同じ15歳、アリアは1つ下の、14歳という事も分かった。「ところでジン。この人たちとはどんな関係？」と僕が問うと、アルメが、「私達、兄妹なんです。苗字は違うけど、ジンが勝手に苗字を変えただけで、本当は『ジン・フェリアー』なんです。知りませんでした？」「えっ、でもなぜ別居しているのですか？いつも家に行くと、ジンしかいないから、てっきり1人っ子かと思っていました。しかも苗字も違っていましたし・・・・・・。」「・・・・・・私達は、訳も分からず追い出されたんです。ジンだけ残して。しかも、私は10歳、アイリは8歳、アリアは7歳の時に。なので、私達は、両親の愛など1つも知らないまま、昔からここ周辺で暮らしていたんです。しかし今日、いきなりカルメス山が大きな音を立てたかと思うと、ある所が破裂した所を見たのです。それでここに来て見ると、貴方達がこの穴から出て来たという訳です。」という丁寧な説明をしてくれた。「けどもう大丈夫だぞ、アルメ。俺はあの家を出たからな。今はクローヴィスの家に泊まらせてもらっているが・・・・・・。」「そうなんですか・・・・・・。いいな・・・・・・ちゃんとした住める所があって。」と、アイリがしょんぼりした顔で言った。けど僕は、いつの間にか口を開き、こう言っていた。「僕の家に泊まりに来ませんか？僕の父さんは酒飲みだけど、集落の長だから、きっと認めてくれるはずさ！」すると3人に笑顔が戻った。しかしジンはこう言った。「でもいいのか？3人も家に来るんだぞ・・・・・・食費とかもたくさんかか・・・・・・」「・・・・・・ジンの妹達なんでしょ？何で認めないのさ。それかジンも外で暮らす？」ジンは息を詰まらした。ヴァンスは苦笑。「でも本当にいいんですか？なんだか迷惑がかかりそう・・・・・・。」「はい、別にいいと思いますよ。しかし少し問題があって、今日を入れて後4日後に、ローレライが攻めてくることが判明したのです。なので、硬度が高いミスリルとオリハルコンを探して武器を作り、戦う事になっているんです。しかし、なかなかミスリルとオリハルコンが見つからなくて・・・・・・」するとアルメがキョトンとした顔で言った。「ミスリルとオリハルコンなら、私達住んでいる周りにたくさん有りますよ。けど、硬すぎてどうやって採り出すのか分からなくて、宝の持ちぐされなんです。しかし、私達は何でもいいので、斬る道具が欲しいのです。たとえ青銅でも、ミスリルやオリハルコンと交換って言われると、喜んで差し出したいぐらい私達には斬る為の道具が必要なのです。」思わず僕達は、えっ！というふうに驚いてしまった。彼女達が住んでいる所に、しかも目の前に有るという光景が思い浮かばなかった。僕達は早速、アルメ達に自分達の住み家へ案内してもらった。そこは、僕達が1日過ごした洞窟とは桁違いで、2階建てだろうか、素晴らしい丸木小屋だった。「え・・・・・・もしかしてこれ・・・・・・自作？」「えぇ。よく出来ているでしょう？だけどこの家、1ヶ月で建てたんですよ。」僕達は思わず呆気（あっけ）に取られてしまった。女性3人だけで造ったという事に。しかも1ヶ月で。「あっ、言うのを忘れていましたけど、私達も精霊を持っているんですよ。もちろん、その力も借りて、この家を建てたんです。まず普通に考えると、10歳以下の子供がこんな立派な家を造る事は出来ませんからね。」アルメが述べ終わると、アルメの右腕が紅（あか）く、左腕が黄色に光り出したかと思うと、アイリの右腕が蒼（あお）、左腕が碧（みどり）、アリアの右腕が白と紫にそれぞれ光りだした。「私達の精霊は、全員サピエンス科の人間型です。私の精霊は、『炎』と『雷』。アイリは『水』と『自然』、アリアは『光』と『闇』です。私とアイリはほとんど同属性ですが、アリアだけは、他のどの善良な種族には無い能力を持っています。しかも反属性の。だけど、これだけの精霊を集めるのに、私達はここに来てから1週間もかからなかったんですよ。なぜだと思います？」アルメ達を合わせると、全員で9人。この内6人を、彼女達は1週間もかからずに捜し当てるという事は、まず不可能であろう。しかし彼女達は見つけた。しかも10歳以下の年齢で。実に不思議な出来事だ。「なぜかというと、精霊達が、私達の最初の住み家になろうとしていた所に、偶々居たんです。そしてその精霊達も住み家を探していたので、どうせなら一緒に造って暮らしませんか？と、アリアが問いかけたのが原因です。その精霊達も、本来の持ち主に捨てられてたり、持ち主から逃げてきた精霊の集まりだったので、すぐに私達と仲が良くなりました。そうしているうちに次の日から家作りが始まり、自然霊『ラミアー（サピエンス科）』（人間型♀）が樹を早く成長させ、雷霊『オルセン（サピエンス科）』（人間型♂）でそれを切り倒し丸太にします。そしてその樹のいらない所を火霊『サラマンダー（サピエンス科）』（人間型♂）がその表面を焦がし、水霊『ウィンディーネ（サピエンス科）』（人間型♀）の使用する水の水圧で浮かし、洗い流します。そして守護霊『シェーラ（サピエンス科）』（人間型♀）と、邪霊『ジョフィール（サピエンス科）』（人間型♂）と私達で協力して、樹皮の駆除や念力（ねんりき）で組み立てなどをしたんです。」しかし僕は1つ気になっていた所があった。守護霊ならまだしも、なぜ邪霊までいるのかという事だ。僕はアルメに尋ねてみた。「ジョフィールは、元々は邪悪な霊だったんです。しかし、自分が争いで怪我をしていた時に、敵のシェーラが助けてくれたそうです。その日から、悪ではなく善に心を向ける様になり、今封印されているナイトメアを裏切り、シェーラについて行くと、ラミアー、オルセン、サラマンダー、ウィンディーネが居たそうです。ラミアー達は決して軽蔑（けいべつ）しなかったので、すぐに仲良くなったそうですよ。おまけにナイトメアまで封印されていますし・・・・・・」その言葉に、ヴァンスが素早く反応した。「・・・・・・アルメさん。なぜ私達がここに来ているか。ご存知ですか？」「えっ・・・・・・ミスリルとオリハルコンを探しに来ているのでしょう？」「まぁ、それもそうなのですが、その鉱物を探しに来た理由をご存じないようでね・・・・・・。お教えしましょう。・・・・・・封印されていたナイトメアが、復活したのです。その為、邪悪な血統種族の1つ『ローレライ』の活動が活発になり、今度の25日に攻めて来る事が、ここにいるクローヴィス君の予知能力で判明したのです。なので、なるべく硬度の高い鉱物を探しに、ここまで来たのです。」と、ヴァンスが少し説明すると、アルメ達は初めて聞いたので、少し驚いた。「あっ、そうだったんですか。すみません。関係無い話をしてしまって。それなら早速その場所へ案内しますね。」僕達はその丸木小屋に荷物を置かしてもらった後、アルメ達に案内された。

  2007.01.11

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• 落雷疾風記　第4章（ディスカバリー）　発見

  目が覚めると、小雨が降っていた。毎回思うが、山の天候は変わりやすいし、今雨期に入っている事は知っている。しかし、今日登らなくては、もう登る時期が無い。この山に、2つの鉱物が有るという事を信じながら、体を起こした。しかし洞窟だけあって、外は明るくても、中は暗い。燃料の枯れ枝も、昨日の分しか集めてないし、雨が降ってしまうと、枝が濡れて燃えない為、日が出るまでは、手探りで必要な物を探すか、そのまま寝具の中でじっとしているしかない。しかし早起きのジンは傘を差しながら洞窟から出て、深呼吸や軽く体操などをしていた。こういう時こそ、電灯を使えばいいものの、精霊を召喚するのには体力が要る。しかし、今日の登山のためにためた体力を、朝のうちに使うのは惜しいと考えた結果がこれだ。だが僕は、そんな事で体力を使うというより、そのまま寝具の上に寝転がって考え事をする方が好きだった。しばらくすると、僕はある事を思い出した。僕は前から気になっていた物があったからだ。それは、前にカリナから貰った小さめの本。この本をカバンから取り出し、表紙、裏表紙を眺めた。「おや？その本はどうしたのですか？」ヴァンスがふと気付きながら問うと、僕はカリナから貰った物だと説明した。「ほう、なるほどねぇ・・・・・・私はその本に似ている物を持っていますよ。」そういって、ローブの中から僕と同じ位の大きさの本を取り出した。「これは、『エルガーラの書』と呼ばれる本だ。しかし、私はこの本を1回も開いた事が無い。たぶん、君も同じ事でしょう。少しその本を貸してください。」そう言われたので、とりあえず貸してみた。するとヴァンスは、その本に手を当て、ラールを取り付かせた。そして、何かを感じ取るような感じで、頷きはじめた。「・・・・・・ふむ・・・・・・この本の名前は、『ケルーハの書』と呼ばれる本らしい。」今使った能力は、4つ目の能力＜推読＞という能力らしいが、名前はどうでも良い。問題は本の中身だ。「すまない。それは言うことができない。なぜならば、こういうタイプの本は、「呪本」の確率が高いからだ。もしかしたら、呪い殺されるかもしれない。」と、控えめに言った。そんな話をしている間に、日が昇り始め、洞窟の中が明るくなり、少しむし暑くもなってきた。しかしジンは、すっかり気合が入り、先に洞窟を後にし、僕達がそれに続く。という感じだ。洞窟の上は、坂が急すぎて山に登ることができなかったため、地図を確認すると、ここから1km先の所から坂が緩やかになっている事が判明したため、僕達は急いだ。10分後、足取り軽やかに到着すると、地図通りに坂が緩やかになっていた。僕達はそこから山頂目指し、近道と書いてあった道無き道を、躓きそうになりながらも、走った。ジンは先頭を走り、僕達を誘導するため、自作のナイフを振り回し、邪魔な雑草や木の根を切り刻みながら進んだ。次に僕が続くが僕もジンに貰った愛剣『ウィークル』を逆手に持ち、ジンが切り忘れた邪魔な物を、さらに退ける。最後にヴァンス。彼はジンより力が遥（はる）かに有った為、荷物を担（かつ）ぎ、移動。そんな大雑把（おおざっぱ）な分担をし、僕達は目的地の頂上に向かって突っ走った。標高約4000m。結構山が高いため、空気が薄くなってくる。しかしさすがに疲れてきたので、僕やジンは息を切らしながら歩く。だが、そんな僕達とは違って、ヴァンスは息を切らすどころか、呼吸の音さえも聞こえない。顔色を少しも変えず、ただ黙然と僕達の後ろをついて走る。「なぁヴァンスさん・・・・・・。なんであなたはそんなに・・・・・・息が切れ・・・・・・ないんだ・・・・・・？」ジンが息を切らしながらヴァンスに問うと、ヴァンスはいつも通りに答えた。「いえいえ、ラールが助けてくれるのですよ。5つ目の能力＜癒し＞というのを使って。」僕達はついついため息をついてしまった。そんな能力があれば、前から使ってもらえばよかったと。「・・・・・・クローヴィス君にも使ったことがありますよ。セルヴォイさんにも。」その言葉を聞くと、ふと思い出した。この前、ヴァンスさんが初めて僕の家を訪れてきた時、僕の重かった瞼（まぶた）が軽くなった事や、父さんの酔いが醒（さ）めたこと。あれは全て、ヴァンスのラールがしてくれた事にやっと気付いた。僕はヴァンスに軽くお礼を言った。坂があまり無い所があったので、そこで少し休憩する事にした。ジンと僕はラールに癒しを使ってもらい、疲れを取っ払ってもらった。しかし、少しラールに異変が起こった。今までオリーブ色だったラールが、急にセルリアンブルーに。「・・・・・・どうやらラールが疲れてしまっているようだ。しばらくラールは使うことが出来ないが、我慢できますか？これでも生き物なので。」僕達が頷（うなず）くと、少しラールが光った後、ラールはヴァンスの身体に潜り込んだ。僕達は立ち上がり、ゆっくり歩き始めた。ふと地図を見ると、もう登り始めてから4分の1も歩き終わっていた。「・・・・・・つまり、1000m歩いたって事か・・・・・・意外と楽じゃないか。」僕やジンに笑みが浮かんだ。しかし、その笑みにヴァンスが否定した。「いや、楽なのはほとんどここまでだ。2000m位の地点で、坂が急になる可能性がある。」「そうなんですか？見上げても、あまり変化が無いような気がしますけど。」ヴァンスは長い人差し指をピンと伸ばし、軽く左右に振りながら、3回ほど舌打ちした。「このまま直進すると、ちょうど『人』という字と同じ様な感じで、下から上へ行くほど急になるものです。山という物はね。気は抜けませんよ。しかも空気も薄くなってくる。」僕達は思わず頷（うなず）いた。誰だって『山』を横から見た事はある。しかし今思うと、今までは近道を通って来たので、もう4分の1の位置に達しているのであって、もう一度見上げると、もう一本道のみ。坂が急になるかならないかは、登ってみないと分からない。「でも、もしかしたらもう存在している所を過ぎ去っていたりして・・・・・・」そう僕は提案してみると、ジンは反論した。「そんなはず無いだろ・・・・・・」「いや、もしかしたら・・・・・・」と、ジンが言い終わる前にヴァンスが遮った。するとヴァンスはいきなり逆走し始めた。「ジン君！ついて来てくれたまえ！君の精霊が必要なのだ！」ジンはヴァンスの所に走って行った。「君の霊を貸して下さい。」「・・・・・・？貸してどうなるんだ？」「・・・・・・『融合』を使います。」と言って、ジンの手を取った。そして、ヴァンスが『アヴァナス』と叫ぶと、ジンの身体からバリウスが、ヴァンスの身体からラールが出てきた。『アヴァナス』とは、それぞれの持っている精霊を、善悪関係なく強制的に呼び出す効果がある魔法らしい。「これは都合が良い。『炎』と『雷』は、融合すると『爆』を生み出す事が出来る。」そしてさらにヴァンスは、『ハマター』と叫ぶと、それぞれの霊の間から何かが強く光りだし、眼があけられなくなった。気が付くと、2つの霊が1つになっていた。「この霊の名は、爆霊『ガンラール（ギャロップ科）』（馬型♂）。さぁジン、この霊を宿し、この大らかな山に風穴を開けるのだ。」ジンはワクワクしながら、ガンラールを右腕に宿らせた。そして、今立っている所の横に向かい、掌を翳した。そしてジンは『イオール』と唱えると、一瞬に掌（てのひら）の表面が赤くなったと思うと、その掌から黄色の球体を放った。（ドガァーン！！！）と、強烈な爆発音が放たれた。その球体は目の前にある山の坂を無理矢理退け、どんどん向こうへと放たれてゆく。放った所をよく見ると、山に直径2mほどの穴が真横にぽっかりと空いてしまった。僕はジン達の所へ行くと、ジンの手からガンラールが離れ、それぞれラールとバリウスの姿へ戻った。「いやはや、結構な威力ですねぇ・・・・・・。」と、ヴァンスは微笑した。「まったくだ。一瞬腕が溶けるかと思ったよ。」そう言うと、ジンはその場に腰を下ろした。「それにしても凄い威力だね。一瞬で山に穴を開けるなんて。」僕は少し穴の中に入ってみた。空いたばかりなので、壁は少し温い。けど、穴の中は日が陰って丁度良い具合に涼しかった。腰を下ろしたかったが、身体が熱くなりそうだったので、とりあえずその場でじっとしていることに。その時だ。向こうの穴から風が勢いよく通り、思わず両手を広げたくなる様な気持ちになった。両手を広げて眼を瞑（つぶ）ると、まるで空中を飛んでいる様に、優しく風を切る感覚が分かる。するとジンが立ち上がり、そろそろ行くかと彼の身体が言うと、僕達は穴の中に入った。出口はほぼ点に等しかった。なにせ半径約1.2kmつまり直径2.4kmの道のりをしかも直線の日が当たらない暗い中を進むのは、なかなか怖いものである。だが、ジンがゼルガを召喚し、時々穴の中に風を通してくれたので、暑くは無かった。周りが見えないため、今僕達がどこにいるかは断定できないが、真っ直ぐ見ながら歩いていると、いつの間にか残り100mの地点にいた。すると、穴の外から、誰かが覗（のぞ）いているのが分かった。どうやら僕達と同じ、3人らしい。しかも女性。「・・・・・・あっ！ジン！そうでしょ？！」「本当だ！おーい！」「・・・・・・！」そういう声が聞こえると同時に、僕達は外に出る事が出来た。

  2007.01.11

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• 落雷疾風記　第3章　仮面（ストレインジマスク）　完

  「・・・・・・どうしたんだ？その絵柄の綺麗なカード。いつの間に日記に？」「あっ、いやぁ。図鑑を少し捲っていたら、偶然見つけたんだ。これが何のカードなのか、よく分からなかったけど、捨てるのにはもったいないと思ったから、こうやって日記に挿んでおいたんだ。」と説明していると、偶々（たまたま）炎がそのカードに燃え移ってしまった！僕らは慌てて消そうとしたが、カードは燃えていなかった。「気のせいかなぁ・・・・・・。ジン。」「おいおい、そろそろ年かい？」とジンが口をモグモグしながらからかうと、なにか後ろから聞き覚えのある声が・・・・・・「いや、ジン君。年のせいではないぞ。」僕達はビックリ。洞窟の入り口に・・・・・・「ヴ・・・・・・ヴァンスさん？！」「御名答で。」そしていつの間にか僕達の前にいた。ジンは噎（む）せた。「でもなぜ？会うのは後3日後のはずなのに・・・・・・」「いや、私もこんなに早く会えるとは思わなかった。なにせ私はニクス。火に反応するのだよ。ちなみにこのラール、碧（みどり）っぽい色をしているが、風霊ではない。これは一種の火霊だ。」「けど、火に当たったのはカード・・・・・・」「カードが何か？」手元を見ると、あの綺麗な絵柄の入ったカードが無くなっていた。「・・・・・・？！」一瞬混乱した。それもそのはず、今まで持っていた物が急に手から無くなると、誰でも本当に混乱する。ヴァンスは一息入れて、こう言った。「あのカードは、実は「私」自身だったのだよ。つまり今まで私達は一緒だったのだ。その証拠に・・・・・・」そう言って後ろを向き、着ていたローブを脱いだ。すると何ということだろう。ヴァンスの背中に、まるで宝石の様な物で出来た綺麗な絵柄が。しかもカードの絵柄と、ヴァンスの背中の絵柄が、見事に一致しているようだった。「いざという時があるかと思ってね、この期間内に読みそうな本の中に仕込んでおいたのだ。しかし、こんなに早いとは・・・・・・。」ヴァンス自身もビックリしていた。ジンはさらに噎せた。「ゲホッ、ゲホッ。・・・・・・でも良かった・・・・・・ゴホッ・・・・・・。」「そうですよ。けど悪いなぁ。こんな所で再会するなんて。」「いやいや、どうせなら出ないつもりだった。君達の忍耐力がどのくらいあるかを試そうと思ってね。」そう言って、野イチゴを口にした。「ところで話は変わるが、ミスリルとオリハルコンを探しに、ここまで来たのだろう？」僕達は首を縦に振った。「しかし私は、もうそれらの鉱物を持っている。手には持ってはいませんが。」僕達は、声を合わした。そしてヴァンスは、その鉱物がある場所を指差した。「・・・・・・私の・・・・・・背中に有るのだ。」そう、さっきの絵柄は全て、ミスリルとオリハルコンで出来ていたのだった。するとジンが、「そ、それなら元からくれれば良かったんじゃないのか？」「これらは、もう取る事は出来ないのだ。取る事が出来る様になるには、私が死亡し、後に火葬した残りを探れば、簡単に取る事が出来る。」そう言って、僕達を少し脅（おど）かした。しかし、もう確定した真実がある。それは・・・・・・『この世に、ミスリルとオリハルコンが存在する。』という事だ。「もう私はここに出てきてしまった。だから集落に帰るまで、一緒にそれらの鉱物を探しましょう。私も手伝います。足を引っ張るかもしれませんが。」「いやいや。足を引っ張るのはこっちだ。これからずっとよろしくな！」と、僕たち3人は手を組んだ。『6月20日　今日はついに、ミスリルとオリハルコンを探す旅に出かけた。いろいろな人にアシストされながら、無事にカルメス山に辿り着くことに成功し、おまけに、来る前に見つけたカードがあったのだが、それはヴァンスさんだった！今日は色々苦労した所もあったけど、嬉しい事も何箇所あった。寝床も最適なところを発見したり、食物に恵まれたりと、ほとんど良い事尽くしだったのかもしれない。しかも、ヴァンスさんの背中は、そのカードの絵柄そっくりに、ミスリルとオリハルコンを組み合した物だった！これにはビックリしたが、これでこの世には、ミスリルとオリハルコンが存在することが発覚した。明日はついに、カルメス山登山と、2つの鉱物捜索だ。気合を入れていこうと思った。』と、日記に記した。そして僕らは就寝準備をし、それぞれ準備ができた人から就寝した。今日は満月であった。ハンカチの様な雲は1つも無く、まるで僕達とヴァンスとの再会を祝っているようだった。明日は日記にも記したように気合を入れなければいけない日だ。今は、山から落ちたりしないだろうか。とか、見つからなかったらどうしよう。とか思ったりして、とても心配だが、マイナス思考は止め、常にプラス思考で明日と明後日を頑張ろうと思いながら、身体の力を抜き、眼を閉じた。

  2007.01.10

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• 落雷疾風記　第3章　仮面（ストレインジマスク）　続き3

  風に頬（ほお）を叩（はた）かれ気がつくと、僕達は倒れていた。そう、無事合流したのだ。天候も回復し、良い事尽くしだ。しかも嬉しい事はこれだけではなかった。見上げると、高く聳（そび）える山が。そう、カルメス山に到着していたのだった。僕達は思わず涙が零（こぼ）れそうになった。しかし、まだ喜ぶにはまだ早かった。喜ぶのは、ミスリルとオリハルコンが見つかってからだ。とりあえず、ジンに昼食を手渡したが、思ってた通り、こっ酷く怒られた。だけど、喧嘩両成敗。渡すのを忘れた僕も悪かったが、その事に早く気付かなかったジンも悪かった。その事をお互い理解し、僕はさっき残して置いた昼食の残りを、ジンは僕が買っておいた昼食を、それぞれ離れていた時の話を交えながら、美味しく頂いた。一息入れたところで、早速この山を登ろうと思ったが、もう4時だった。今から登ると、足元も悪いだろうし、暗くなると余計に探し難いし、危険だ。なので、今日残りの時間はここ周辺での食料集めと、就寝場所確保（突然の雨でも大丈夫な所）、火を焚（た）く事、調理、就寝準備等などを行う事に決定した。最初に一番大切なのは、就寝場所の事。山付近は天候が変わりやすいので、雨が降っても濡（ぬ）れる事が無い、洞窟などの屋根がある場所を探す必要があった。僕は時計回りに、ジンは半時計回りにカルメス山付近をグルグル回る事にし、洞窟を探した。しかしヴィルム島一の高い山だけあって、地図を見てみると、半径が約1.2kmもあった。しかしせっかく来たのだから、キャンプに来た様な楽しげな気分で洞窟を探すことに。だが、そんな気持ちを薙（な）ぎ倒す事実が発覚。なんと、ジンが100m歩いた所に、何日か過ごすのにはほぼ最適の、素晴らしい洞窟があった。ジンが自分の雷霊『バリウス（サピエンス科）』（人間型♂）を召喚し、持ってきた電灯に明かりを灯して周りを見渡すと、凸凹した所も少なく、火を焚くには最適の、溝まであった。まるで、誰かが住んでいた後みたいだった。とにかくここを今日の拠点にし、荷を下ろした。次に大切な事、それは食料探し。2人で手分けをし、僕は山菜や果物などの野菜類、ジンは、肉や魚介類等の狩り中心。という風に分かれて、それぞれ収穫が有りそうな場所に散った。僕は山菜と言ったらやはり林や森。と思ったので、洞窟から30mほど行った所に日が少し隠れる位の林があったので、そこに向かった。思っていた通り、食べれそうな物がいっぱい生っていた。茸がほとんどだったが、野イチゴもあった。茸は食べられそうな物を、野苺は香りが良い物を採っては戻り、採っては戻り・・・・・・。なにせ、食器を持ってくるのを忘れたからだ。10往復位しただろうか・・・・・・だいぶ山菜等が集まったので、ジンの帰りを待つことにした。30分後、ジンは魚20匹、貝類30個を獲って帰ってきた。「お疲れ、ジン。・・・・・・ずいぶん大漁だねぇ・・・・・・。」「あぁ、でも肉類は獲れなかった・・・・。」「そんなのはいいじゃないか。貝も獲れたっていうことは、この辺に海岸があるのかい？」「あぁ、ここから300m位先の所にな。味付け用に、海水も取ってきた。」と、小型の鍋の蓋を開けながら言った。「さすがジン。じゃぁ早速火を焚（た）こう。僕は燃えやすい物を探しに行ってくるから、ジンはゼルガやバリウスと一緒に火種（ひだね）を作っておいてもらえるかい？」ジンは了解して、周りに有った少しの枯れ枝を掻（か）き集め、左腕にゼルガ、右腕にバリウスを宿し、その枯れ枝の中心に向かって雷撃を集中的に少しずつ放ち、火が点きそうになったら、風を起こして火力を高めるというサイクルを試みた。その姿を見ると、僕も精霊が欲しくなってくるが、僕の特殊能力が自由自在に操る事が出来れば、これ以上に勝るものはないと言う。その事を信じ、枯れ枝を探しに行った。なかなか地面に枯れ枝は落ちていなかった。なので、腰に着けていたウィークルを鞘から抜き、なるべく大きい樹の枝に向かって、えいやっ、とウィークルを振り下ろした。しかし、切った感触が無かった。だが、切った枝は地面に落ちている。本当にこの樹の枝なのか、切った所同士を合わせると、見事に合わさった。そりゃそうだろ。と突っ込みたくなるが、合わさったままくっついた。「・・・・・・？！」思わずビックリしたが、それほどこのウィークルは切れ味が良い事が分かった。合わせた枝はそのままにしておいた。なんだかくっついた所を見ると、また切るのは可哀想な気持ちになってきたからだ。今思うと、樹も生きているのだ。そのまま地面と対面しながら、足を速め、枯れ枝を探した。なにせ空が暗くなってきたからだ。そして、今晩は過ごせるだろうと思うくらいの枯れ枝が集まり、洞窟に戻った。「おぉい。遅かったなぁ。」ジンはほんの少し心配していたようだった。火種は見事に出来上がっていて、明るい小さな光を灯していた。そこに集めた枯れ枝を組み、火は明るさを増し、やがて炎になった。そこに、僕が知っている限りの茸と、魚を串刺しにした物を炙（あぶ）った。そしてジンは、鍋の中に入っていた海水に貝を入れ、少し煮た後、貝を他の鍋に移し、海水の水分を蒸発させ、味付け用の塩を作った。出来上がりを見計らい、茸と魚には塩を付けて、貝は殻を持っていたナイフで割り、中身をとった。それぞれは、薄い潮の匂いがした。いまにも僕達が海岸沿いにいるような感じになる様な、良い気分になりそうな匂いがした。そしてゆっくり深呼吸をした後、遠慮無しにそれらを食べた。ふと思うと、今日これで終わり、我らの集落に帰るわけではない。ここまで来たなら、ミスリルとオリハルコンが存在しない確率など一つも気にせず、必ず見つけ出さなければならない。さらに、1日で山に登り、また降り、もう1日で集落に帰るという、大きな問題もある。まだ出発してから、半分も行ってはいない。行きでも苦労したため、後々はもっと大変だろう。行きはいろいろな人からの助けもあったからこそ辿り着いたものの、もしかしたら帰りは無いかもしれない。その事を思いながら食べると、食物も喉を通らなくなってしまった。「・・・・・・クローヴィス。明日が一番の山場だ。そのためにも、今のうちに沢山食べておくんだ。じゃないと、悲惨な事になる。明日は朝食に手をつける事が出来ないかもしれないなぁ。」と、野イチゴを食べながら言った。僕は途中で食べるのを中断し、持って来た日記の中から、図鑑に挿んであったカードを取り出し、燃えている炎に翳（かざ）した。

  2007.01.10

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• 落雷疾風記　第3章　仮面（ストレインジマスク）　続き2

  そのころジンは、何事も無かったの様に歩いていた。後からクローヴィスが来ると思っていたので。「それにしてもクローヴィスは遅いな。あの仮面じゃぁ移動できないのだろうか？」ジンは少し迷っていたが、後から来てくれることを信じ、歩き続ける・・・・・・。ひたすら歩き続ける・・・・・・。30分後。ジンは、残り18km付近の休憩所で休んでいた。しかしさすがのジンも僕がついて来ていない事に気付いた。ジンは急いで神風言流の印を唱えた。（・・・・・・聞こえるか？クローヴィス。今、俺は残り18kmの休憩所で休んでいる。お前が来ないという事は、まだ70km地点の所にいるのか？もしそうなら、言いたい事を頭の中に浮かばせてくれ。）僕はハッとした。今のは確かにジンの声だ。ジンも今、休憩所で休んでいる事が分かったので、心配しなくてもいいようだ。しかし、安心しているのも束（つか）の間だった。また雨が降りだしたのだ。僕もジンも、予（あらかじ）め傘を持って来ていたので移動は困らないが、山を登るときは足元が滑りやすくなり、また探し難（にく）くなる。だが、山の天候は変わりやすい。まず辿り着いたなら、それに賭けるしかないだろう。しかし休憩所の時計を見ると、もうお昼頃であった。残しておいた3マリンの内4メルツを使い、菓子パンと、アップルジュースを購入した。だが僕は、とても恐ろしいことに気付いてしまった。3マリンをジンと分けていなかったのだ。常識的に考えると、ジンの食べるものが無い！しかしさすがは呪面。良事と悪事が入り混じっている。今ジンはどうしているのだろう・・・・・・。「・・・・・・あぁ・・・・・・暇だなぁ・・・・・・」そのころジンはお金の事に気付かず、雨が降っている外と、窓から睨めっこしていた。そこには偶々（たまたま）時計が無く、まだ10時位だろうと思っていた。「クローヴィスからの返事も来ないし。今何しているのかねぇ・・・・・・。」と、ため息をついた。しかしまだ18kmある。たとえ今日中に辿り着くことができても、帰る時が問題だ。あの仮面は、クローヴィスしか持ってはいない。しかも今ジンが持って来ているのは、水筒、地図、雷用の電灯、就寝用の寝具、調理器具、山登りの為の道具、洗顔器具、着替え、自作の小型ナイフ、6つの袋の中身少々、非常用の乾パン、そして傘だ。乾パンは有るものの、それではジンの身体は動かない。このままだと、餓死（がし）だ。なので、必要なエネルギーを使わないために、正午位までじっとしている事にした。しかし現実は、もう正午である。僕は、昼食を半分だけ残し、昼食時間を終えたが、一応ジンの好きそうな物を買い、出発する事にした。雨が降っている中を、進むことに。僕は傘を差し、少し小走りで移動した。小走りで移動している為、少し水飛沫（みずしぶき）が起き、靴下が濡れる。しかし今はそんな事どうでもよい。レヴェナーンが滅びる可能性が増えるのと、ジンが死んでしまう確率も増えている。僕は走った。木の根に躓きそうになっても、走り続けた。走りながらも、共に持っていた乾パンを少しずつ食べながら、必死に走った。そのころジンは、そろそろ昼食時だろうと思い、売店へ移動した。しかし今は2時。しかし、ジンも恐ろしい事にやっと気付き、クローヴィスに早く会えるように、逆走した。傘を勢いよく差し、修行や武器製作で鍛（きた）えた足腰を全て使い、走った。少しでも風の抵抗を有効に使う為に、今まで向かい風だった風を、自分の風霊『ゼルガ（エアール科）』（鳥型♂）を召喚し、風向きの魔法『キルス』を唱え追い風にし、スピードを上げた。雨は止まず、目の前の視界を遮（さえぎ）る。しかも、2人の間は50kmもあり、今日中に出会う事は無いだろうと思われた。と思った時に、ある異変が起こった。ジンの身体がオリーブ色に光り出した。そう、ヴァンスのラールだ。（ジン君。君に力を貸してあげよう。君に見せる3つ目の能力、＜瞬間移動＞だ。）「なんで？ヴァンスさんは今ここにはいないはず・・・・・・」と言う間に、ジンの身体は消えていた。あれから僕は、1.5km走った。だが僕にも異変が起こった。オリーブ色の光が身体を包み光り出し、（クローヴィス君。君にも力を貸してあげよう。3つ目の能力、＜瞬間移動＞だ。）「君にも？という事は、ジンもか！」と言う前に、既に身体が消えていた・・・・・・。

  2006.12.28

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• 落雷疾風記　第3章　仮面（ストレインジマスク）　続き1

  カルメス山まで後72km地点のところに来た。そこには休憩所があったので、一息入れていくことにした。木を隙間なく組まれた、立派な屋根の建物の中に入り、腰をかけた。落ち着いた場所で、他にも人が10人位いた。出発してから約15kmを歩いたが、さすがに疲れた。しかし、たかが15km。まだ残り70kmもあるところへ3日で行き、帰ってくることなど、常識で考えると、無茶なことである。1日と半日で到着し、探す。そして1日と半日で帰ってくる・・・・・・。「クローヴィス、俺達、どうしたんだろうな・・・・・・。」ジンが少し苦笑いをえがいたが、僕はのんきにしてはいられないと言って立ち、ジンを連れて休憩所を出ようとした。だが、誰か僕達のことを呼んでいる。「そこの少年達よ・・・・・・。こっちに来てみなさい・・・・・・。」と言って、手招きした男性がいた。その人は年老いた老人だった。「さっきから話を聞いていたよ・・・・・・。カルメスのほうに行くんだって？わしが良い物を授けてやろう。」そう言うと、近くに予めあった仮面を手に取り、僕達の前に差し出した。「これは『マァティスの仮面』と言う幻覚を使った呪面じゃ。額（ひたい）の方に蒼い雫（しずく）があるじゃろう？それは、『カミルの雫』と呼ばれる呪封石。これが無いと、この面は取れなくなってしまうのじゃ。しかし、その仮面さえあれば、お前達の十分な戦力となるじゃろう。」と言って、僕達に手渡した。「しかしわしは貧しくてのぅ・・・・・・実は今、この面を売っていたのじゃ。決して詐欺ではない。このような老いぼれに、7ミニルだけで良いから、恵んでおくれやしないかのぉ・・・・・・。」僕達は、言われなくても言う言葉は確定していた。「7ミニルじゃぁ、暮らしてなどいけません。ここに4エデムあります。好きなだけ持っていってください。」老人の目から涙があふれ、手でその涙を拭（ぬぐ）った。「おぉ・・・・・・なんと言う優しい若者なんじゃ・・・・・・。わしは、こんな面に対して4エデムも払ってくれる若者は見たことが無かった。しかし、わしはこの金額を受け取ることは出来んのじゃ・・・・・・。お前達みたいな優しい若者が死んでしまうのではないのか？わしはその事が心配で心配で・・・・・・」絶えず流れる涙を必死に拭（ふ）いて老人は言った。「そのことは心配ありませんよ。おじいさん。僕達は、レヴェナーン存続の命が懸かっているんです。お金など無くても、僕達は生きていけます。どうか、お身体を大事にしてください。」そうして僕らは、一応3マリンだけ残し、休憩所を後にしようとした。「君達！名前をなんと言うんだいっ！」老人は、今出せる精一杯の声を出して問った。「クローヴィス・マクロフィアと、」「ジン・ナパイヤーです。」と言い、貰った仮面を翳（かざ）しながら、休憩所を後にした。僕は早速、マァティスの仮面を付けてみた。特に変わりは無かったが、すぐに異変がおき始めた｡なんと、今さっきまで一緒にいたはずのジンが、姿を消していた。（おおぃ！ここだぞ！クローヴィス！今地図を見てみると、今さっきいた所から大体50kmくらい移動している！）どこからも無く、ジンの声が頭から聞こえてきた。そういえば・・・・・・5年位前の事だ。ジンは『神風言流』（かみかぜことながれ）というどこかの国の風の流れを使用した技を習得するため、修行に励んでいた。なんでも、その技はどんなに遠くにいても、相手は自分の言っている事が分かるとか何とか・・・・・・。多分それなのだろう。その技を使わなければいけない所にいるということは、この仮面はとてつもなく凄いことが分かった。しかし、肝心の僕が移動できていない。そこをどうするかが問題であった。とりあえず先ほどの休憩所まで戻り、様子を窺ったが、今さっきまで居た老人は、もう姿を消していた。おいおいどうするんだよ・・・・。と思っても、僕は神風言流を習得していない。向こうから話しかけてこない以上、僕はジンと会話することが出来ない。あまり物騒（ぶっそう）な事はせずに、そのままじっとしている事にした。

  2006.12.20

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• 落雷疾風記　第3章　仮面（ストレインジマスク）

  20日の朝。悪天候に迎えられ、少々疲れが溜まりながらも、起床した。やはりジンはもう起きている。しかし何かを黙々と書いている。そんなことは気にせず、いつも通りに軽く挨拶を交わし、階段を下りた。特に誰も起きていなかったため、昨日も読んだ武器図鑑を読むことにした。適当にパラパラとめくっていると、あるページに何か挿んであることが判明し、それを取り出した。それはよくわからない絵の描いてある、カードであった。まるでタロットのような・・・・・・とりあえずその絵柄が綺麗で素敵だったので、捨てるにはもったいないと思った。なので、こっそり2階に持って行き、ジンに分からない様、日記の間に挿（はさ）んでおいた。続きを読んでいたが、あくまで図鑑だ。さすがに飽きてしまい、元の本棚へと戻した。そうしていると、セルヴォイが降りてきた。「おぅ。今日は早いな。」「毎日そうだけど・・・・・・。」「おっと、そうかい。ワッハッハッハ。」と、高らかな笑い声に家が包まれた。そしてすぐ、ミルイも降りてきた。「おやまぁ、なんだか騒がしいと思ったら。オホホ・・・・・・。」全く愉快な家族だ。僕はついて行けない。ジンも後から降りてきた。が、よく見ると、眼の下にくまが出来ていた。「やぁ、ジン。くまなんてあったっけ？」「・・・・・・あっ、いやいや、なんでもない・・・・・・。」と、一応ごまかした。とりあえず父さんとジンとでナイトメアのことについて、少し話し合った。なんでも、誰もナイトメアの姿を見たことはない。見たものは、逃げることが出来ずに、そのまま呪殺されるらしい。もしかしたら僕も殺される可能性もあるから、今の一時（ひととき）の時間を大事にする事にした。少し経つと、ミルイが朝食を持ってきた。しかし簡単で、栄養満点のことを考えて作ったミルイの料理は、ブラウンシュガーであった。確かに簡単で栄養満点だが、これは料理というより、お菓子である。しかも、考える時間も考えて、即刻（そっこく）に出来るものを作ったつもりらしいが、栄養満点でも、6月下旬の季節に冷たく冷やした牛乳はさすがに体調が狂う。しかし、食べなければ、ミルイの機嫌が狂う。なので、とりあえず食べた。しかし、味は良かった。ブラウンシュガーはどれにつけても美味（おい）しいのだ。食べ終わった後、普通なら2階に上がるのだが、今日は荷造りをする事にした。そう、僕とジンはミスリルとオリハルコンを探しに行くことに決めたのだ。僕達は急いで準備し、あっと言う間に出発準備が完了した。「気を付けて行って帰るんだぞぉ！」そう言って、その集落のみんなに見送られた。もちろん持っていく物は、ジンに貰ったウィークルと黄色い袋、それにカリナに貰った題名の無い本と、僕の日記もだ。そして僕らは、レヴェナーンを出て、このヴィルム島にある『カルメス山』向かって出発した。雨は一旦止み、太陽が雲の隙間から覗いている。カルメス山は、ヴィルム島で一番高い山だ。もしかしたらここにあるかもしれないし、一番近い。勢いに押されて出たものの、本当に見つかるかどうか分からない。今更レヴェナーンに戻り、作戦を練り直すのでもいいのだが、皆の僕達に対する信頼が薄くなってしまう。出た以上、もう後戻りは出来ない。物事を果たし、有ったら有った、無かったら無かったでケリをつけ、正々堂々とローレライと戦うことを、僕達は決めた。しかし、あくまでもこの2つの鉱物は、未確認鉱物。もしかしたら無い可能性もある。が、それらを探しに行く行かないは僕達が決めた事だ。文句は言えない。だが、もしもあれば、錬金合成が可能になる。でも、ギリギリの時間だ。そのためにも、素早く移動して、見つけることをしなければ。僕達は、足を速めた。肩の荷が重い為、肩掛けが肩に食い込み、痛い。しかし、このことも承知して来たのだ。少々の痛みは我慢し、ひたすら歩き続ける。「ジン・・・カルメス山まで、後・・・・何kmだい・・・・？」まだ少ししか歩いてないのに、身体が重くて息が切れる。ジンは、後87kmあると答え、思わずため息が出てしまいそうだった。一番近いといっても、こんなに遠いとは思わなかったので、2つの鉱物が見つかるかという事より、生きて帰れるかという事を心配した。

  2006.12.20

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• 落雷疾風記　第2章　作戦（オペレーション）　完

  外に出ようとしたが、（クローヴィス！止まるんだ！）と、小声で僕を止めた。そこには、ジンのお母さんがうろうろしていた。(今出るとまずい。見つかったりすれば、もう会えなくなるかもしれない！)　どうやらこちらに来そうな様子だが、まだ僕達には気付いていない。僕達は腰を低くした。（ジン、どうするんだい？このままじゃ見つかるまで待つのと同じだよ！）（バカ！今気付かれてみろ。家に連れ戻される。）僕はついついため息をついてしまった。しかし、隙間からジンのお母さんの顔が見えていたので、少し覗くと、凄く困った顔をしていた。（ジン、君のお母さんが、凄く困っているよ。凄く心配してるんだよ。いい加減に出てみたら・・・・・・）（うるさい！僕は家を出ているんだ。いまさらヌケヌケ帰る訳にはいかない！）（でも、今のままじゃしばらく経てば、すぐ見つかるよ！）（くそっ！こんなときに何か物事が起こってくれればっ！）すると、いきなり雨が降ってきた。ジンのお母さんは慌てて家のほうに走った。（ジン！やった！雨が降ってきたよ！）（・・・・・・そうか！来るときに雨が降りそうな空だったからか！よかった！）そしてジンは僕の袖をつかみ、僕の家のほうへ走った。僕達は息を切らし、ズブ濡れになって家に辿り着いた。ドアを開けると、ミルイがいた。「おやおやどうしたの？そんなに息切らしちゃって。」そう聞かれたら答える言葉はただ一つ。「いいや、ちょっと外で遊んでたらさ、いきなり雨が降ってくるんだもの。焦った焦った。」「あら、そう。今度ローレライとかいう種族が攻めて来るんでしょ。対策は練ってあるの？」「まだ練ってないけど、とりあえず着替えるよ。」もちろん嘘だ。「そう・・・・・・。作戦も練っておくのよ！」ミルイが言い終わる前に、僕達は階段を駆け上がった。自分の部屋に入り、ドアを閉めると、僕とジンはベッドに横たわった。「まったく、無駄な冷や汗をかいたなぁ。」「ほんと。でも、お母さんのことはいいのかい？」ジンは、顰めっ面になり、ため息をついた。「そのことはもう話さないでくれ。話すのなら、後にしてくれないか？考えてる事が、どこかへ飛んでしまう。」そう言って、僕とは反対の方向に寝転がった。「作戦は？」「特には無いが、相手は手に武器を持ってはいない。だから、普通なら遠距離でも近距離でもいいわけだ。しかし、何所かに刃が仕込んであるらしい。なので、近距離戦は危険と見える。」今までの態度から一転し、真剣な目つきになった。「しかしローレライは、見た目は美しい種族らしい。とても重装備をしていそうに無いが、どうなのだろう？」僕もそう思ったが、どうも怪しい。何か特殊な能力でも使ってくるのかもしれない。言い忘れたが、僕達レヴェナーンに住む人達は種族によって能力があり、精霊を持っている人が多い。ライトエルフは、ほとんどの人がオールラウンド。つまり、何の能力でも使用することが出来るが、ほぼ全ての人は、能力を持っていない。しかし、持とうと思えば持てれる、都合のいい種族だ。しかし僕は特殊で、予知能力を不定期にすることがあるという、ライトエルフにしては珍しい能力らしい。それ以外は、精霊や魔法を使うことのできないマイナス能力だが、いざという時に役に立つ。その能力を自由自在に使うには、早くても3年はかかる為、只今修行中。ラレスは、『風』がほとんどだが、能力と能力とを組み合す事も出来る種族だ。ちなみにジンは、『風』と『雷』という、他には無い能力も操ることが出来る名手でもあり、風霊、雷霊使いでもある。ロリヤックは、『水』。元々の先祖は、あの伝説の島、『アトランティス』の住民だったというが、今のロリヤックの人達は、この神話を全くもって信じていない。しかし、水道代を少し浮かす事が出来るので、その点は重宝しているらしい。ニクスとニクセは、どちらとも『炎』である。ナンシーは熟練の火霊使いとなっているので、いつも郵便配達の時は、ペットの火霊『ファルン（ファイヤードラゴン科）』（龍型♀）と一緒に仕事をしている。だから、ストーカーなどは、一切寄りつかないというお得な時がある。ニクスとニクセ達は、火を自由自在に使える人が多いので、旅の時などは大活躍する。ちなみに精霊達は、科によって姿形（すがたかたち）が決まる。ちなみにファルンは、ドラゴンの様な赤い龍だ。その他の邪悪な種族たちの能力は、いまだに不明。もちろん、向こうもこっちの能力は知らない。僕とジンは、必死に考えるが、なかなか思うように考えが浮かばない。ここ周辺では、雨季に入った為、雨がしっとりと降り続いている。音で僕達を妨害している様にも聞こえた。そのまま考えが浮かばず、時刻は7時を過ぎた。ミルイが下から僕達を呼ぶ声がしたので、階段をゆっくり、考えながら降りた。そこには倭酒（日本酒）を大事そうに少しずつ飲みながら、父さんが待っていた。「そんなお酒、どこで手に入れたんだい？」そう僕が聞くと、やっと僕らに気付いたようだ。「あぁ、これか？これはなぁ・・・・・・なんとなく寄ったバーで、少し飲んでみたんだが、これがまた美味かってなぁ・・・・ついつい、こう・・・・・・そう、酒が呼んでたんだよ・・・・・・。」なんだかよく分からない説明だったが、値段を聞いてみたら、2エデムらしいが・・・・・・「・・・・・・の5回払いだ。」つまり1ガルンも払わなくてはならない。なんという人だ。少々呆れながら夕食を摂り、食器を片付けた後、すぐ階段を駆け上がった。部屋の中に入った後、僕は自分の机の前に行き、日記を書いた。『6月19日　今日は、早速武器を作ろうと思ったが、まず資料集めからやる事にした。自宅に偶々あった武器図鑑を持って行き、カリナに協力してもらった。僕が作ろうとしているのは、幻想武器の『サウザント・クロー』だ。これには錬金術が必要で、その材料、「ミスリル」と「オリハルコン」を探しに行こうと思った。しかし、これらの2つはまだあるかどうか分からない、未確認の鉱物。探しに行って、この2つがあり吉と出るか、あるいは、探しに行っても見つからずにそのまま3日過ぎ、何も出来ずに凶と出るか。全ては明日の行動に懸かっている。明日何をするかは、未だに迷う。』と日記に記し、今日の所は休みを取ることにし、就寝した。夜の外は、雨が優雅に踊っていた・・・・・・。

  2006.12.20

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• 落雷疾風記　第2章　作戦（オペレーション）　続き3

  ジン家付近に来ると、ジンは家の後ろに回り、元ジンの仕事小屋に向かった。そこはまだ元々の姿で残っていて、鍵も開いていた。ジンと僕はこっそり忍び込み、ジン作の武器が置いてある所に行った。「・・・・・・ここだ。」ジンが電灯を点けて、革の袋に入った、30cmぐらいの長さの物を取り出した。「これは俺作、『ウィークル』。ショートダガーだ。行くんなら、護身用に持っていってくれ。もちろん無料だ。」そしてウィークルを手渡した。「応用だが、これも渡しておこう。」そういって僕を手招きして、別の部屋へと移った。そこには6つの色分けした、袋があった。どうやらウィークルに付ける毒らしい。「好きな色を選んで。1つだけ。」少々ケチとは思ったが、それぞれ半年かけて作った毒薬らしい。「んじゃぁ、この青を貰っていいかい？」青い袋を手に取り、ジンの前に差し出した。「青でいいのか？青は・・・・・・睡眠薬と水銀の混合毒。」なんだか凄い名前だ。「睡眠薬が入ってるから、切った途端に相手の体内に睡眠薬を速攻侵入させ、眠らせる。しかも水銀が睡眠薬と一緒に入っているから、同時に入り込み、気づいた時には、水銀症になり、骨に水銀が堆積（たいせき）し、体が動かなくなる。そして、動かなくなった敵の急所を、突く。」半年かかっただけの事はあって、強そうである。「しかし欠点がある。」・・・・・・やはりそうであろう。長所があって、短所がないはずがない。「それは、扱い方だ。さっきも言ったように、水銀で、相手を行動不能にする事ができるが、自分に付くと、もう取れやしない。ある意味、諸刃の剣でもあるから、使い方を間違えれば、自殺の道具と化す。」気のせいかもしれないが、長所より、短所の方が凄そうだ。「これにするのか？」「いや、やめとく。そういうのは、父さんみたいな人が使うものだと思うから。」袋を元の場所に戻し、次に黄色の袋を手に取り、ジンに見せた。「黄は・・・・・・頭脳混乱麻痺（まひ）植物のブレンドと、オイルの5：1の混合。それに、水あめをプラスした物だ。」さっきのよりも凄い名前が出てきた。「これも、ウィークル自体に付ける物で、オイルを混ぜているのは、切れ味を良くする為、そして水あめは、ウィークルに付きやすくするためだ。頭にいくから、麻痺まで少し時間がいるが、その間は何とかしのげばいい。」つまり、切る事さえすればいい。「しかし、これも欠点がある。それは、火気に弱いことだ。火を近づけたら、すぐに引火する。それに、溶け込んだ麻痺成分も空気中に散乱するため、とても危険だが、これにするのか？」あんまりジンに説明してもらっていると、さすがのジンも疲れるだろう。なので、気をつけながら使うことを約束し、黄色の袋を注意を払いながら貰った。

  2006.12.20

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• 落雷疾風記　第2章　作戦（オペレーション）　続き2

  「ここが私の部屋です。ゆっくり見ていってください。」さすが物知り少女。本が天井まで突きそうで、崩れそうだ。「ちょっと待っててください。」そういった後、カリナがそこら辺の本を押し退（の）けて、中に入っていった。少し経つと、カリナが戻ってきた。「この本には、この周辺でどのような鉱物が採れるかが載っています。」僕がその本を受け取ろうとした時、カリナが手を出した。「1メルツ頂きます。」（1メルツは約30円、10メルツで1マリン、10マリンで1ミニル、10ミニルで1エデム(札)、10エデムで1ガルン(札)）「・・・・・・お金取るの？！」「そうです。貴重な資料なのですから。」しぶしぶ払って、見さしてもらった。すると、驚きの事実が判明！なんと、ミスリルもオリハルコンも存在する可能性があると書いてあった。しかし、出土されるだろうと思われる場所が書いてある所が破れていた。「カリナ、これは・・・・・・？」「あぁ、買って中身を見たら、元から破れていました。」「ちなみにこれはどのくらいしたんだい？」「えぇ、だいたい5ガルン7エデムくらいです。」「？！」一瞬落としそうになった。5ガルン7エデムもあれば、小屋を造れるくらいの大金である。気を取り直し、詳細を見た。その詳細には、こう書いてあった。『ミスリル・・・・鋼鉄よりも硬いと思われる、とても頑丈な金属。よく鎧などに使われることが多く、それを使った剣は、鉄をも切り裂くと言われていた。しかし、いまだに在るかは、不明。・・・・・・』『オリハルコン・・・・ダイヤモンドよりも硬いものとされる、特殊な金属だが、その金属が本当にあるという事は、あまり知られていない。その硬さは、どのような物も二つに分ける硬さを誇り、存在する場合、値段で表すと、限が無い。』まさしく武器には最適な金属で、その2つを組み合わせて作る武器は、まさに最強と言うしか、この上ない。僕はカリナに軽く礼を言った。「では僕はこれで・・・・・・」「ちょっとまって！渡したい物があるから。」と言って、また本の山に入っていった。しばらくたって出てくると、カリナは少し小さめの事典を持ってきた。「これは、今見てはいけません。もちろん、私も見たことがありません。とても危険な時に、この本を開いてください。何か役に立つかもしれません。」そしてカリナは、僕にその本を手渡した。「これは無料？」「お金を取ってほしいですか？」「取るとしたら？」「2ガルンです。」一瞬ビックリしたがそんな大金を払うのであれば、言う言葉は唯一（ただひと）つ。「・・・・・・貰っておきます。」2ガルンもあれば、米4～5ヶ月分は買える値段だからだ。「ありがとう。クローヴィス。」カリナはホッとした表情になった。「・・・・・・なぜお礼を言うんだい？」「この本は、貰ってほしい本だったんです。しかも私には必要ない物ですし・・・・・・。」「それをなぜカリナが持っているの？」「分からないんです。偶々（たまたま）あったというか・・・・・・」「そうか、とりあえず、ありがとう。ありがたく頂くよ。」「こちらこそ、ありがとう。」と言った後、僕はワイル家を後にした。家に戻ったときは、ジンが待っていた。「遅かったな。どこに行ってたんだい？」「ちょっと用があって、カリナのところに行ってた。」ジンが、ふぅんと納得し、読んでいた本のページを2、3ページ飛ばした。「何か情報は？」「うん。ミスリルとオリハルコンがどこで手に入るかなぁと思ってさ、本で調べてみたら、もしかしたら存在する可能性があるかもしれないんだって！」「そうか、武器の材料としては上等だが、手に入りにくい事だろう。探すとしたら、時間的にこの島「ヴィルム島」以内の所で探さなければ。」そう言って読んでいた本を閉じ、本棚にしまった。「・・・・・・探しに行くのか？」「絶対行くとは限らないけど・・・・・・。少し興味を持っただけ。」「そうか。採りに行くなら、ちょっとついて来て。」ジンはドアを開け、外に出た。空は少し曇り気味で、今にも雨が降りそうだ。ジンは軽く走り出し、元ジンの家へと向かったので、僕もついて行った。

  2006.11.29

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• 落雷疾風記　第2章　作戦（オペレーション）

  小鳥が囀（さえず）る清々しい朝を迎え、布団を退けると、ジンは机の前にいて、少し考え事をしていた。今思ったのだが、時計を見ると、まだ6時13分。意外と性格とは違って、早起きらしい。「おはよう、ジン。」「・・・・・・。」「・・・・・・ジン？」「・・・・・・あっ、おはよう。クローヴィス。」よっぽど集中していたらしい。かえって悪かったのだろうか・・・。ジンに朝食は？と尋ねると、まだいらないらしい。先に階段を下りた。しかしまだ6時15分。朝食には少し早い。なので、みんなが起きてくるまで、武器に関する本を読むことにした。適当に本を開くと、ある幻想武器の紹介が載っていた。『サウザント・クロー・・・・名の通り1000年前に作られ、今もその形を保っている、鳥の鉤爪をレリーフにした、当時では最強とされた武器。材料は、ミスリルとオリハルコンを錬金して作った合成金属と想われる・・・・・・』「・・・・・・ミスリルとオリハルコンかぁ・・・・・・。普通に在（あ）るとしたら高いだろうし・・・・・・。しかも錬金合成か・・・・・・。」そのページでは、その武器が一番強いという事が分かった。しかし、これはあくまで幻想。誰も錬金術なんか出来るはずが無い・・・・・・。「・・・・・・！」いや、一人だけできる人がいる！ヴァンス・ラール！あの人なら出来る！しかし、今度会う日はあと4日後。普通だと間に合わない。たとえ会うことが出来ても、ミスリルとオリハルコン。この2つは噂によると、この世には存在しないといわれている鉱物。さすがのヴァンスでも、探すことに関しては、少し無理がある。こういうことは、やはりあの子しか分かることは出来ないだろう。朝食を摂ったら、ワイル家に行くことにした。朝食は庶民の食卓ではおなじみの、ベーコンエッグであった。朝食を摂り終えた後、武器の本を持ち、ワイル家にむかった。そしてベルを鳴らす。「はい、どちらさまですか？」偶々（たまたま）カリナが出た。僕は早速本に書いてあった一部と、ここに来た理由を説明した。「・・・・・・分かった。中に入っていてください。」僕はドアを開け、中に入った。しばらくすると、口をモグモグさせながら、パウラーがやってきた。「カリナは？」「まだ朝ごはん食べてるよ。」「そうか。パウラーも旅に出るのかい？」「うん・・・・・・。何もせずに死ぬのは嫌だから、どうせなら少しでもみんなの役に立てれたらいいなぁって思ってるからね。」まだ幼いのに、なぜそんなにマイナーな考えなのだろうか？「あのさ、パウラー。お前はまだ小さい。つまりまだこれから役に立つかも知れな・・・・・・」「僕は行くんだ。」と、僕の言葉を遮（さえぎ）り、奥に走り去った。しばらくして、カリナがやって来た。「おまたせ。どうぞ、上がって。」僕は靴を脱いで、家へ上がらせてもらった。

  2006.11.29

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• 落雷疾風記　第1章　悪夢（ナイトメア）　完

  これからどんなことがあるか分からないから、少し心配だったけど、とりあえずお腹が空いたので、昼食を摂った。なにせ朝食も摂っていない身体で、2時間も3時間も話し続けていたので、身体が泣いている。いつもなら美味しい昼食だが、みんなの命が懸かっている話をした後の昼食は、せっかくのサンドイッチは消しかすの様な味になり、オレンジジュースはブラックコーヒーの味がした。まったく不思議なものである。その後、デザートのリンゴを食べたが、これまた不思議と味がしない。が、とりあえず食べ終えた。午後は特に用事がなかったので、ジンの所に行って設計図を作ることにした。「やあ、ジン。今朝は大変だったね。」「あぁ、まったくだ。家では追い出されたことにしているから、しばらくここに居座ることにするよ。よろしくな。」と言って、軽く礼をした後、椅子に座って本を読み始めた。そう、ジンは家を出たために居場所がなくなっていた。そのため、旅に出るまでの間、父の許しをもらって、一緒に暮らすことになった。「そうだ、クローヴィス。今日から日記とかをつけといたほうがいいぞ。これから何が起こるかわからんわけだから、少しでも書いておくと、後で少しでも役に立つかもしれんからな。」僕もそう思ったため、今日から少しでもいいから日記をつけることにしよう。題名は何がいいかな。普通に『日記』と書くのもなんだか・・・・とりあえず、『日常の反省』という、全く捻（ひね）りのない題名にした。一応日記を書くことを決め、武器製作に取り組むことにした。『6月18日　今日は、ヴァンスという男性が訪問し、ナイトメアが復活したことを告げた。これには少しゾッとしたが、まずその前にローレライが攻めてくることが判明。だがその情報は、僕自身が言ったという。さっぱり意味が分からなかったが、どうやら記憶が無くなっていたらしい。今度から気をつけよう。ちなみに今日の昼食は、サンドイッチにオレンジジュース、デザートにリンゴであったが、それぞれ消しかす、ブラックコーヒー、味無しへ変化。実に奇妙。』・・・・・・と日記に記した。遠距離用武器の設計図をジンと共同製作し終わったときは、もう夕方であった。そろそろ疲れ果てたので、下へ降り、ソファに1分ほど横たわり、少し考えた。が、何も思いつかなかったので、とりあえず夕食を摂った。昼食とはうって変わって夕食の味は実に格別であった。仮に言うと、普通のご飯がキャビアに変わったと思うぐらい美味しかったので、日記に、『しかし、夕食は格別であった。』と、書き足した。この集落の主食は、倭国という国と同じで、米である。米は米でも、ジャポニカ米でもないし、タイ米でもない。どのような気候でも、丈夫に育つ品種が、この集落で偶々発見され、偶々育てることができて、偶々この食卓に並んでいるのである。その後は、いつも通りに入浴などを済まして床についたが、今考えてみると、どんどん頭に色々なことが浮かんでくる。しかし今出てきても、もう夜である。身体が起きていても、頭が起きていなければ意味が無いのである。今日はもう寝ることにし、明日から本格的にすることにした。　　　　

  2006.11.29

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• 落雷疾風記　第1章　悪夢（ナイトメア）　続き2

  「これはもしや、『翼の剣』？」刀身が少し黄色をおびていて、光を反射し黄金色に輝く。そして柄には銀色の翼のレリーフがその剣の特徴を引き立てている。「刃の部分は僕が、レリーフの部分はナンシーが作ってくれた。昨日までかけてな。」少し自慢げにジンが説明する。だが少し変わっていることがあった。それは、本で見たことのある「翼の剣」よりも、少し刀身が長いことだ。普通なら1メートルあるかないかの長さだが、今貰ったのは、スキーの棒ぐらいあって、なんだか重たそうで、とても「翼の剣」とは思えないぐらい、斬るのには適していなかった。しかし、威力は十分ありそうだ。「でも、こんなに重たいもの、どうすればいいのですか？」「そんなこと、分かりきっているだろう？」「・・・・・・まさか筋トレ？」「それ以外に何があるというのだ？」ジンが少し笑んだ。それもそのはず、ジンの腕力は、僕を遥かに超えている。なので、僕の腕力など、どうでもいいくらいに調節してある。そんなメチャクチャな設定にしてある剣など使いようがないため、筋トレをやって、どうにかその剣を使いこなせるような力をつけてほしいという、自己中心な要求が、言われなくても目で分かった。「まて！その剣は私が預かっておこう。いいかね？」「別にいいけど、何に使うんだい？」「これは私がクローヴィス君に宛てての、有効なものにするための材料にさしてもらう。」ヴァンスが剣を手に取り、ローブの中に納めた。「おっ、おいっ。何もそこまでしなくても・・・・・・。それはそれで飾るなり何なりすればいいんじゃねぇのか？」ジンが少しあわてたが、セルヴォイは、「飾ると邪魔になる。どうせなら旅のお供として持っていったほうが、後で少しでも役に立つかもしれないだろう？」ヴァンスがうなずいた。ジンは少し悔しそうにしていたが、自分の家にあっても、使わなければあまり意味が無いとは、誰でもそう思う。「そもそも、何に作り変えるんだ？剣だったものを他の物に変えるのは、難しいんじゃねぇか？」「・・・・・・銃にする。」「なっ・・・・・銃にするだと？それを作るための道具が揃ってないじゃないか。」ヴァンスは少しも焦らず、なぜかカリナの方を向いた。「君なら知っているだろう？」「わっ、私ですか？え～っと・・・・・・本で見たことがあるんですけど、『錬金術』ですか？」「御名答。私は、この『ラール』を使って2つ目の能力＜錬金術＞をすることができる。しかし、まだ材料が足りないため、それを行うことはできない。最低でも、あと4つは必要ですね。」なんだか凄い事をするような目つきになったが、元からだろうか？「それで、いつまでに旅に出なければならないのですか？」ナンシーが尋ねたが、ヴァンスは、「すまない。それは私でも分からないが、だいたい・・・・・・」ヴァンスが少し困った顔をしたが、あの人だけは違った。「ナイトメア自体は攻めてきませんが、他の軍勢が攻めてくるそうなので、特に時間は決まっていないんです。」カリナだった。相当自身があるかのように言ったが、「・・・・・・と、本に書いてあります。」やはり調べ物だけは早い。それに、眼鏡もかけていていかにも頭のよさそうな子に見える。しかし、現実は違う。眼鏡をかけているのは、目に近いところでのチェスやリバーシ（オセロ）などをやっていて、近視になってしまっただけなのだ。だが、戦略的頭脳は優れ、運動会の騎馬戦では、仕切り役を今まで4回もやっている実績を誇る。この子は攻めてくる相手の戦略も読めそうだから、素晴らしい役目を果たしてくれそうだ。「しかし、いつ攻めてくるかは分からないのだな。」「分かったら苦労はしませんよ、ヴァンスさん。」僕が控えめに言うと、ヴァンスは呆気にとられ、「おぉ、そうだな。すまない。」少しお茶目な部分もあるようだ。｢では話を戻そう。いつ攻めてくるのか分からないわけだから・・・・・・｣と、ヴァンスが話し始めた瞬間、僕に異変が起こった。急に僕の眼が七色に光りだし、このようなことが頭から聞こえてきた。「イッシュウカンゴニ、ローレライガ10ニンセメテクル。アイテハ、テニブキヲモッテハイナイガ、ドコカニ「ハ」ガシコンデアル・・・・・・」そうきこえた後、僕は倒れた。かすかだが皆の声がきこえる。「・・・・・・ィス、おいっ！クローヴィス！」「・・・・・・？」「お前、今なんて言った？」脅かすようにジンが言うと、僕は答えることができなかった。もうすでにその時の記憶は無くなっていたのだ。「ごめん。僕何か言ったのかい？」「あぁ。ローレライが攻めてくるとか言っていたな。」「えっ？！ローレライが？でも、僕は何も言っていないのに、何で聞こえたんだろう・・・・・・。」少し間をおいて、ヴァンスがハッとして、少し気まずい顔をしながら、「こうしてはいられない！すぐに戦闘の準備にとりかかるのだ！」そういった後、皆を数え始めた。「・・・・・・10、11か・・・・・・ギリギリだな・・・・・・。私の力を援護にまわそうか・・・・・・」少し不安のヴァンスだが、オスカーは反対した。「ヴァンスさんは、ラールとか言うものを自由自在に操ることができますね。それなら遠距離攻撃ができるはずです。相手は手に武器を持ってはいないので、遠距離用の武器を用意しているのかもしれません。それなら、そのラールという物質で、どうにか防ぐことができるはずです。」僕は納得したけど、ヴァンスは落ち着きがなかった。「・・・・・・そうだな。そうしておこう・・・・・・。」ヴァンスは何か思いついたのか、ウィルを近くに呼び寄せた。そして少し話をした後、ウィルは首を縦に振り、了解したようだった。その後、ヴァンスが皆の顔を見合わせ、少し話をしだした。「いいですか。今さっきクローヴィス君が予知能力のようなものを発したとき、ローレライが攻めてくるといった。それらは、手に武器は持ってはいないということや、攻めてくる時間もわかった。それが分かった今、私達が今有利なわけだが、どこに武器を仕込んでいるのかわからない。それに対応するには、万能な武器や装備を作る必要がある。今からこの一週間、たかが一週間だが、あっという間に過ぎるものだ。いつの間にかローレライが攻めてきて、この集落が滅びることもありえない事ではない。そのためには、今この話を中断して、武器などを作ったほうがいいのだが、それよりも大事なことがある。」皆は、緊張したように見えた。「それは、この集落にいる住民の皆のことだ。」今まで、旅のことだけ考えていたが、僕達が旅に出た後のレヴェナーンが心配だということだ。たとえローレライを防げたとしても、僕たちが出た後にまた攻めてきたら、困るのは皆だし、敵が喜ぶだけだ。「だから武器を作りながら個人で考えて、5日後にまた集まって話し合いをすることにしよう。他に意見がなければ、解散しましょう。」みんなは特に意見がなかったので、個人で解散した。だが、僕は少し疑問があったので、ヴァンスに聞いた。「ヴァンスさん。なぜあなたはそんなに私達に知恵を授けてくれるのですか？」するとヴァンスは笑みを浮かべながらこう言った。「さぁ？私もよくわからないが、ここの出身ということは確かだ。自分の故郷を失いたくはないのでね。」そう言った後、ヴァンスをオリーブ色の光が包み、消えてゆく・・・・・・「5日後に・・・・・・また、会おう・・・・・・。」そしてヴァンスは消えた・・・・・・。

  2006.11.29

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• 落雷疾風記　第1章　悪夢（ナイトメア）　続き1

  最初はティクルの家に行き、ベルを鳴らした。「はぃ・・・・・・どちらさま・・・・・・？」「クローヴィスです。ティクルかい？すぐ家に来て！待ってるから！じゃっ！」一大事なときにゆっくりしてはいられない！次はオスカーだ。　ベルを鳴らす。「はい。オスカーです。」「クローヴィスです。オスカー、用があるからすぐ家に来て！」「でも、今朝食を・・・」「待ってるから！じゃっ！」たいてい言うことは決まっている。魔の5Ｄ（Demo,Douse,Datte,Dakara,Dakedo）のあとは、必ずといっていいほどに否定の言葉がくる。そういう時は無視して話し続けろと父から耳にたこができるほど言われている。続いてシュリー、ベルを鳴らす。「はい、シュリーですが・・・・・・」「クローヴィスです。話があるので、すぐ家に来てほしいのですが・・・・・・」「分かった。すぐ行きます。」「はい。お願いします。」さすがに話し辛かったが、彼女を前にすると、なぜか敬語になってしまう。まぁいいか。最後にジン。冗談が炸裂しそうで心配だが、とりあえずベルを鳴らそうとした瞬間・・・・・・（ドンッ！　パリーン　）何かが勢いよく起こった後、何かが割れた。そして勢いよく玄関のドアを開けて父母と問答になっていた。「俺は旅に出なきゃいけないんだよ！これからセルヴォイさんのところに行って、話がしたいんだ！」「あんな男の話を信じているのかい？！ジン。お前は武器屋の跡継ぎになってもらわなくてはいけないのだよ。」これはいけないと思ったので、止めに行こうとしたが・・・・・・「もういい！！」と言って、家から飛び出した。そして、思いっきり僕にぶつかった。「あぁ、クローヴィスか。すまないな。見苦しいところ見せちまって。」「いいや、もういいよ。ところで、僕の家に今すぐ来てほしいんだ！」「あぁ！喜んで行かしてもらうよ！もう俺には居場所がないからな！」こうして僕らは家に戻った。家には、もう全員そろっていた。「よく来た、ジン。お前を私は心から待っていたぞ！」と父が言うと、2階からヴァンスが降りてきて、椅子に座った。「皆さんそろいましたね。ここに皆さんを呼び寄せたのには、理由があります。あなたたちは、これから旅に出なくてはなりません。なぜかというと・・・・・・」皆の目線が、すべてヴァンスのところに合わせられた。「皆さんは、『ナイトメア』という名の者をご存知ですか？」皆はそろってうなずいた。「そのナイトメアが、復活したのです。つまり、ナイトメアを封印するか、倒すかのどちらかを行わなければなりません世界に一つしかない、このレヴェナーンを守るために。そうでしょう、セルヴォイさん。」「あぁ、そうなのだよ。この集落にはライトエルフ、ラレス、ロリヤック、ニクス、そしてニクセというすべての血統種族達が集まったところだ。まぁ、邪悪なもの以外はな。しかし、今言ったように、この世には邪悪なローレライ、デーモン、ディブク、デュアガー、そしてドモヴォイという血統種族もいるのだ。」「そう、そして今、ナイトメアが復活してしまったため、邪悪な血統種族達の活動が活発になる。」ティクルが、少し心配そうな顔になって、「つまり、もう一度封印さえすれば、私達は大丈夫ってこと？」「そういうことだ。しかし話は変わるが、なぜ君達を集めたと思う？」　その言葉を耳にしたとき緊張が走ったが、シュリーが少し口を挿んだ。「ナイトメアに襲われる夢を見たとすれば、その人たちはナイトメアに襲われる可能性がありますよね。つまり、ここにいる人達はナイトメアと何等かの関係があるからですか？」なかなか自分の意見を言えず、今まで身震いまでしていたが、今は少し落ち着いているようだ。「まさしくその通りです。つまり貴方達なら、何かナイトメアの弱点か何かを知ることができそうなのです。」「だから、旅に出ろと言うのですね。」僕が答えると、ヴァンスとセルヴォイがうなずいた。「しかし無理矢理行けとは言いません。もしかしたら死んでしまう可能性もあるので。」一瞬ゾッとした。まだまだこれから人生を歩むという年頃なのに、死ぬ可能性まであるという旅に出ろなど、もっての他だ。「この集落が滅びてもいいのであれば、行かなくても結構です。」「・・・・・・。」「俺は行くぞ。」ジンは立ち上がり、セルヴォイのほうを向いた。「自分が死のうと死なまいと、俺の勝手だろ。」「僕も行きます。」オスカーも立ち上がり、ジンの隣へと行った。「私達も行きます！」ティクルとシュリーも立った。「父さん、ごめん。僕も行く。」少し自信はないが、立ち上がる。「なら私も・・・」といって、ヴァンスも立った。途端に、ドアが勢いよく開いて、「みんな！僕達も忘れてもらっちゃあやだなぁ。」と、ニコニコしながらパウラーとレベッカが言った。「6人で行くより、なるべく大勢のほうがいいと思ったからね！」ナンシーとカリナが前へ出た。「やはり旅には音楽が必要でしょう。疲れを癒してくれますよ。」ロリヤックのウィルもいて、とても心強そうな仲間達が集まった。「これは皆さん。なぜここにいることがわかったのですか？」セルヴォイが尋ねると、ジンが皆の前へ出て、「昨日渡せなかった物があるのでね。それを渡すなら、皆そろったほうがいいと思って皆を呼び寄せたのだ。クローヴィス、僕達からの少し遅くなってしまったが、誕生日プレゼントだ。受け取っておくれ。」言い終わった後、ナンシーが少し長い物を取り出し、僕に手渡してくれた。「ありがとう！開けてもいいかい？」「えぇ。後の管理は任せるわ！」と言ってくれたので開けてみた、すると・・・・・・

  2006.11.28

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• 落雷疾風記　第1章（ナイトメア）　悪夢　

  6月17日の午後、クローヴィスの誕生会が開かれていた。その日は、仲間全員集まって楽しく過ごしていた。「さぁ、今日は記念すべき我が子の誕生会だ。皆さん、ゆっくりしていってくださいな。」セルヴォイは少し酔っているがみんなを仕切ってくれる、頼もしい父親だ。「今日でもう15か・・・・・・。年をとるのが早く感じるような気がするのは気のせいか？」「そんなことはないと思うよ、ジン。人生を楽しく過ごしていたらそう感じるのさ。」とは言ったものの、あの年頃で「人生を楽しく過ごす」などの言葉を使うのもどうかなと・・・・・・「ところでナンシー、あの件はどうなったんだ？」と、ジンがいきなり話を転換させ、ナンシーに聞いた。「えぇ・・・・・・大体できているわ・・・・・・。」あまり自信がなさそうだ。なにかあったのだろうか｡「ただちょっと・・・・・・ほんの少しだけ未完成なだけだから。ちょっとだけ・・・・・・。」ジンの顔が少し曇った。よほど僕のために何か用意してくれたのだろう。「そうか・・・・・・。明日にでもまわそうか。」僕には何が起こるのか予測がつかない。明日にでも楽しみにしておこう。その夜、クローヴィスは夢を見た。何か襲い掛かるようなものに圧倒され、少し頭にめまいが食いつく。上を見上げると、何か僕たちにとっての邪悪な者の影が写っている。よく目を懲（こ）らして見ると、それはナイトメアであった。隅の隅まで邪悪に染まった悪の化身。（なぜ奴がここにいるんだ？奴は僕の祖父に封印されているはずなのに・・・・・・）そしてナイトメアが自分にと襲い掛かってくる！（うっ、うわあぁぁぁっ・・・・・・！）そして数分ぐらい経っただろうか、目が覚めた。あたりを見渡すと一見変わりはない。悪夢に魘（うな）され、少し眠い。重いまぶたを必死に開けながら、階段を下りた。そこには、母の近くに群青（ぐんじょう）色のローブを着ていた、赤い髪のヴァンスという男がいた。どうやらニクスらしい。「おや、おはよう。遅かったねぇ。」いつもの母、ミルイだ。心配はいらないようだ。「はじめまして、ヴァンスと申します。」「こっ、こちらこそっ。クローヴィスといいます。」なぜだろう。瞼（まぶた）が一気に軽くなった。「いきなり訪問してしまって、申し訳ない・・・・・・。実は誰かこの家の人達の中の誰かが昨夜、悪夢の様な物を見ませんでしたか？」一瞬ハッとした、なぜこの人物がそのことを知っているのだと・・・・・・「はっ、はいっ。僕が見ましたっ。」「・・・・・・！」（そうか、ここにも・・・・・・）「どうかしたんですか？」母が尋ねると、ヴァンスという男は、「いえ、もしかしたらクローヴィス君は、旅に出なければいけなくなります。今さっき訪問した家も悪夢を見た人が数人いました。確か4件ほど・・・・・・」僕は口走り、ヴァンスという名の人に聞いた。「それぞれの人の名前までは、ご存知ですか？」「・・・・・・ティクル、シュリー、ジン、それからオスカーと言っているが・・・・・・」「誰がですか？」「私の周りには、『ラール』という物質が存在しています。その7つある能力の1つ、＜記憶＞　です。」その物質が、僕達に道を下したことも話してくれた・・・・・・。「もしも旅に出ないならば、この集落は滅びてしまうこともありえないことはないでしょう。」「あなた！あなた！ちょっときてっ！」母がありったけの息を絞り込み、父を呼んだ。相当あわてているらしい。なにせ大切な息子が旅に出ようとしているのに、そんなゆっくりした性格の父を放っておき、母一人だけが見送るというのは、あまりにも度が過ぎるからだ。「なんだいなんだいっ！人がせっかくいい気持ちで寝ていたのに・・・・・・。」階段から降りてくるのはいいが、よろけて落ちそうだ。まだ酔いが醒（さ）めていないのだろうか。すると、いきなり・・・・・・「あっ、こんにちは。セルヴォイといいます。何かご用件がお有りですか？」いきなり普通の父に戻った。この人はどんな力を持っているのだろうか？「えぇ。実は、・・・・・・。」と、手早く説明し終わると、父は、「そうですか、仕方ありませんね。でも少し時間を頂けないですか？」「はぁ、別に構いませんが。」「・・・・・・ありがとう。では失敬。」そう言うと、父は僕の腕をつかんでリビングへと連れて行かれた。「いいか、お前はこれから旅に出なくてはならなくなった。だから、ちょっと話したいことがある。みんなを呼んでくるんだ。」僕は急いで家を出た。

  2006.11.28

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• 落雷疾風記　血統・登場人物紹介

  　　その集落の中の血統により、その人の人格や職業が決まるようになることがある。　　　　　　　　　　　　　見分け方もあり、それぞれ髪の色が違う。　　　　　　　　　　　　　その血統の種類紹介と、登場人物紹介。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　▽血統種族▽・ライトエルフ。一番美しく清い血統種族で、争いをなるべく拒み、文化も進んでいる知力あふれた種族。黒髪・ラレス。集落の守護をしていて、善良な血統種族。武術に優れる。緑髪・ロリヤック。音楽好きで、これも善良な血統種族。機織もやっている事があり、洋服屋なども経営。青髪・ニクス（男）＆ニクセ（女）。どちらも善良で、見ず知らずの人も親しくしてくれる。美男女多。赤髪＆橙髪・ローレライ。見た目は美しい種族だが悪。美しい歌声で人を誘い、危険なところへ連れて行くこともある。金髪・デーモン。見た目も中身も悪一色で、物や人に入り込んで動かすことができる。紫髪・ディブク。とても邪悪で、動物などに入り込み、呪い殺すことも出来る。白髪・デュアガー。ただ単に危険で邪悪な血統種族。茶髪・ドモヴォイ。仲間思いの種族だが別種族だと、善悪問わず悪事をしでかす。ウォッカが好き。藍髪　　　　　　　　　　　　　　　　▼主な登場人物(初期時)▼♂　クローヴィス・マクロフィア(Clawvis Macrofear)・・・主人公。武術に興味があり、修行の真最中の中で、ヴァンスという男に、旅に出るように提案された。予知能力が時々勝手に目覚めることがある。6月17日生15歳　ライトエルフ♀　ティクル・ナコリーン(Thichlu Nacolleen)・・・主人公の親友で、知能的。とても優しく、お姉さん系な性格の持ち主で、みんなから親しまれている。　7月11日生１4歳　ライトエルフ♂　ウィル・グリンディロー(Will Glyndlow)・・・名高い音楽家で、主人公とも仲が良く、本にも名前が載るくらい有名な人。そして、ある武器の使い手とか・・・・・・3月21日生23歳　ロリヤック♀　シュリー・ワイル(Sully Weill)・・・ティクルが一番の友達。3人姉弟の姉で、根気強い。最近は主人公とも仲が良くなった。11月2日生14歳　ロリヤック♂　ジン・ナパイヤー(Gin Napayear)・・・主人公とは仲が良く女性に人気なところもあり、なかなかの頭の持ち主。最近は武器の製作を開始し、その武器は、なかなか見た目も良く、人気。1月23日生18歳　ラレス♀　カリナ・ワイル(Calina Weill)・・・ワイル家の次女。読書が好きで、自分の部屋は図書館のようでほかの人も利用する事がある位沢山の本を持っている。2月6日生13歳　ロリヤック♂　パウラー・ワイル(Paular Weill)・・・ワイル家の長男。とてもわんぱくで、いたずら好き。工作が好きで、大きくなったら、ジンやオスカーに弟子入りしようと思っている。3月4日生9歳　ロリヤック♀　ナンシー・フィンス(Nancy fins)・・・いつも笑顔で、皆に人気。まだ独身なので、相手を検索中。郵便配達が仕事。6月30日生　21歳　ニクセ♂　セルヴォイ・マクロフィア(Selvoi　Macrofea)・・・クローヴィスの父であり、集落レヴェナーンの長。武術に優れていて、稽古部屋も経営している。ちょっとマイペースでお酒好き。10月19日生　40歳　ライトエルフ♀　ミルイ・マクロフィア(Miloui Macrofea)・・・クローヴィスの母。ご近所さんとは仲が良く、とても美人と評判。8月23日生　38歳　ライトエルフ♂　オスカー・ミドル(Oscar Middle)・・・レヴェナーンでも有名な剣・銃士で、ナンシーの親友。その剣・銃捌きはセルヴォイも圧倒されるほど。4月11日生　22歳　ラレス♀　レベッカ・アクドル(Rebecca Ucdollar)・・・とても強がりなお嬢様で、少しパウラーにヤキモチを焼いている。1月23日生　7歳　ロリヤック♂　ヴァンス・ラール(Vance Real)・・・「ラール」という物質を操ることから、この名がついたらしい・・・。本名、ヴァンス・レン。7月24日生　？歳　ニクス

  2006.11.28

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• 落雷疾風記　前書き

  今から幾年も前、精霊、妖精などが存在するといわれた島々があったという。その島々の名は「ラグナロク諸島」といい、7つの島で成り立っている。その人々は『精霊』を操り、生活を共にしていた。しかし、とある人は誰も持っていない能力を所持して、生まれて来た。その人の名前はクローヴィス・マクロフィア。だが、彼はまだその能力を使いこなせてはいない。7つある島の内、彼が住んでいる島の名前を「ヴィルム島」、その島の中の1つの集落の名を、「レヴェナーン」という・・・・・・僕の名前「clawvis」は↑の主人公と同じです＾＾

  2006.11.28

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• ブログ設立　【祝】

  今日ついにブログを設立しました！小説をおもに更新しようと思うので、あまり日記は書かないかも・・・・・・でも読んだらコメントください！できるだけいい小説を作れるように努力するんでｗ

  2006.11.28

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