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カテゴリ:内装屋さん
『伝説のクレーマー』の話
『ムチャを言う人』という本には“日本一のクレーマー”が登場する。この人は某電機メーカーに対して、自分自身は一銭も取らずに、数億円の寄付をさせた伝説の人。いわゆるクレーマーとは違って、“真実のクレーム”を付ける人だった。 お話は某電機メーカーが「トランジスタの永久保証」を打ち出したことに始まる。そのメーカーは永久保証を謳っておきながら、トランジスタの故障の修理の際には「交換手数料」という名目で修理代金を取っていた。 今の感覚なら誰でも「おかしい」と思いそうなものなのに、この「交換手数料」は誰も文句を言わないまま、昭和38年から20年間徴収され続けた。当時はトランジスタ・ラジオ、トランジスタ・テレビの全盛期だったので、その総額たるや大変なものだっただろう。 ところが20年経って、初めて「それはおかしんじゃないか」と声を上げた人がいた。そしてその人の追求を受けた会社も「たしかに消費者を惑わすような表現でした」と認めた。声を上げた人も偉かったけど、裁判に訴えられたわけでもないのに「間違いでした」と認めたこの会社もなかなかすごい。その会社とは、ソニー。 当時、トランジスタは歩留まりが悪くて、作っても作ってもオシャカばかりという時代だった。ところがソニーは品質の良いトランジスタを作り出し、「永久保証」という広告で“他メーカーよりも壊れない”とPRし、大いに売り上げを伸ばした。ただ、他より品質が良いとは言え、時には壊れることもある。その時に「手数料」という名目で修理代を請求していた、という事情だった。 これにクレームを付けたのが、当時65歳のおじいちゃん。クレーマーの常套句といえば「社長を出せ!」だけど、この人は「担当者と徹底的に話をする」というスタンスを貫いた。 まず、お客さま相談室に電話する。出てきた人と徹底的に話をする。その担当者が「自分でこれ以上お答えできません」と言って上司に代わる。するとその上司とまた一から話をする。本当にマジメな人だったので時間は掛かったけど、半年も経った頃には経営者と話をするところまで行った。 そして最後にはソニーが「永久保証と言っておきながら有償修理だったのは、お客さまを惑わせる表現でした」と認めた。そうすると今度は「いくら余計に取ったんだ?」という話になる。そしてソニーが算出した数字が、昭和58年当時のお金で約10億円という金額だった。 とはいえ、20年も前から行われてきたことだけに、その10億円を本人たちに返そうとしても、返せるもんじゃない。そこで「世の中のめぐまれない社会福祉施設や文化施設に、1年1億円ずつ10年間寄付する」という約束をした。 一銭の得にもならないことを一生懸命やったおじいさんも立派なら、一介のおじいさんの言葉を真摯に聞いて間違いを正したソニーも立派。その後、ソニーはそのおじいさんの意見を取り入れて、経営に反映させていったという。 消費者には4つの権利があるとされている。「安全を求める権利」「知らされる権利」「選択する権利」そして「意見を聞いてもらう権利」。4つ目は「意見を言う権利」じゃなくて、あくまで「聞いてもらう権利」。これは1962年にケネディが打ち出した方針で、日本の消費者保護基本法にも謳われている。だから企業や行政は消費者の意見を聞き、それを経営に反映させなければいけない。クレームの世界から見ると、そういう事になっている お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年11月24日 18時46分23秒
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