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2009年11月02日
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内容説明(オンライン書店ビーケーワンより)
「熊野古道殺人事件」「佐渡伝説殺人事件」「朝日殺人事件」…。
著者のミステリー小説をモチーフとした「死後の世界」の心象風景。
死者が語るむき出しの真実とは―。辺見じゅんの幻想的な短歌とのコラボレーション。

出版社サイトから紹介
浅見光彦シリーズなどを執筆し、
ミステリーの第一人者として活躍する著者の初コラボレーション。
辺見じゅんの幻想的な短歌と、内田康夫が描く小説が、妖しく、
そして切なくも恐ろしい旋律を奏でる。著者の長編作品を連想させる物語は、ファン必読。
ミステリーでは味わうことのできないもう一つの内田康夫の世界を、
未発表の書き下ろし作品を追加して、ついに単行本化。



内田康夫と言えば浅見光彦シリーズなどで絶好調のお人ですが、読むのは初めてです。
浅見さんは2時間ドラマで昔から見ていましたが、どうにも原作には手が伸びず…。

で、結論ですが、私にはこの本は早すぎました。

どういうことかといいますと、これって解説どおり「死者の語り」なのです。
今まで内田さんのミステリーで殺されてきた人々の、最後の独白や死後の独白なのです。
誰がどのタイトルでということは書かれていませんが、
後書きにて使われた本のタイトルは順不同ですが教えてもらえます。
死者の独白というだけでも十分読めるようにはなっていますが、
背景や全体の流れや殺人者の末路など、そういうところを知っていれば益々楽しめたはず。
知らなくてもオッケーだけど、元ネタ知ってたら余計に面白いとくれば、
それだけ読んだ自分にちょっとがっかりするのも仕方が無いのです。
あーあ、数冊でも読んでからこれに手を出すんだったー……。

この厚さに20話入っていて、1話ごとに見開きの絵+詩がある。
というだけで各話の短さは想像していただけると思いますが、
1話1話、主人公となった死者がひたすら一人称で語っていますので、
読み応えはあります。というか、気力をごっそりもってかれます。
一気に読むのがしんどくてしんどくて、数日かけてちびちび読んでいきました。
面倒なので「死者」とひとくくりにしましたが、その段階では生きている場合もあります。
なんでなんだよー、ひどいじゃないかよー、ああ顔に泥がぁぁぁぁ (暗転)
ってな感じで、死を待つところから始まって息が止まるその瞬間までの語りとか。
結局本編(推理小説の方)に登場する時は「死者」なんですよね。

この死に至る人の語りはわかりますが、
インパクトが強いのはやはりすでに死んだ人の語りでした。
まったく私を殺しちゃうなんて困っちゃうわ~とか、私を殺して貴方はこうしたわねとか、
すでに死んで、かつ死体を埋められたりした彼らが一人称で語りだす。
これってすごく不気味です。その視点はどこからのもの? その意識はいつまで存在していたの?
これを霊とすれば、その意識はいつまであったのか。
後に発見される時や、殺人者の罪が暴かれるその時も、その舞台に存在していたのか。

面白かったのは、独白する彼らが至って冷静なこと。
よくあるホラーの霊のように、うめきと怨みと悲しみでどろどろの存在…
ということはなく、至って冷静に、時にひとごとのように語っていました。
乙一の「夏と花火と私の死体」の「彼女」をもう半分ほど生々しくした感じ、
という表現で正しいのかはわかりませんが、これが現在のところ一番しっくりきてます。
 
   夏と花火と私の死体


とっても疲れたけれど、
色々な意味で面白い1冊でした。


       






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最終更新日  2009年11月02日 23時51分45秒
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