フジモトマサル「二週間の休暇」
疲れたな、と感じたら、不思議な世界の住人が、あなたをきっと、迎えに来る。きちんとした生活を好む女性、日菜子の日常を描いた、穏やかで不思議な物語。一見、普通に見える暮らしも、実は鳥しかいない、謎めいた世界が広がっていた……。やさしい鳥たちとの出会い、思う存分のんびりとできる暮らし。毎日、穏やかな生活を送っているが、彼女はなぜ、この世界に足を踏み入れてしまったのか!? このまま一生、この世界で暮らすのか、それとも……!? 忙しい日々を送っている人なら、きっと日菜子に共感できる。疲れた心に、穏やかな空気がそっとしみるストーリー。 出版サイト人間のように、地面を歩く大きな鳥達。同じように話し、家に住み、本を書き、物を売る。自分以外の人間が居ない世界で、けれどそんなことを不思議に感じることも無く、鳥達と主人公は日常を過ごしています。そして、ある時ふと気が付く。過去の記憶がないことに。私の過去ってどんなのだっけ…? どうしてここに居るのだろう…?マンガっぽい過剰な描写も、昂りもなく、ただただ淡々と描かれる世界は、とても優しくてどこか懐かしくて、でもって…切ない。丁寧で優しくて真綿のような2週間の休暇を、私も過ごしてみたくなりました。ていうか、鳥達が可愛い。めっちゃ可愛い。集まってのおしゃべり風景なんて、まあオバちゃんの井戸端会議な訳ですが、でも鳥だったら可愛い。胸に沁みる1冊でした。 最後にネタバレ感想日菜子を自分の「天国」に招待した彼女。両親でも、クラスメイトでも、病院の人たちでもなく、たった一度だけ逢った友人を選んだ彼女。(まぁ、語られていないだけで他の人も招待されたのかもしれないが)そういう出会いがとても羨ましくなりました。果たして自分がその立場にあったなら、一体誰を迎えに行くだろうか。どうも、呼びたい相手が見つからない気がします。うーん寂しい。。彼女が望んだからあの世界があったのだとすると、個々の鳥達は一体何なんだろう。それぞれが意思を持ち、めいめい暮らしていたはずだけれど。生命体のように見えた鳥達は、けれども仮に彼女の望み一つで消えてしまう存在なのか。ハリボテには見えないのだけれど、でも命を作っていたとしたらそれは人の枠を超えている。覚めたら消える夢の住人達を思うように、彼らの存在の不確かさが気になりました。夢の中に生きる人たちは、主が夢から覚めたら一体どこへ行くのだろう…?