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「あなた・・・私を説得しに来たのは、大切なものを見つけるためだって言ったわ」
「あ・・・」 解決させて一晩眠った事ですっかり忘れそうになっていたが、少年の当初の目的はそれだった。 大切なもの・・・少年が失った『カケラ』。それを取り戻さないと、この世界に来た意味はないのだ。 (でも、この世界にはないのかもしれない・・・そういう可能性もなくはないよな) 急に思い出して、少年は途方に暮れる。チェルシーはそんな少年の困った表情を見て、何か考え込んでいた。お礼でも考えているのだろうか、と少年は思う。 しかし少年の思惑とは裏腹に、チェルシーのお礼は意外なものだった。 「その、それで・・・実は、思い当たるものがあって。私、少し前・・・丁度あんな風になるちょっと前に、不思議なものを拾ったの。光り輝いてて綺麗なんだけど、形はよくわからないの。その不思議なものは私の中に入ったまま留まって、ずっと私の中にあったのだけど、あなたに説得された夜・・・私の手元にまた現れて、今度は私の中には入ってこなかった」 「え・・・それって・・・」 少年はチェルシーの話を聞いて、最初のカケラを取り戻した時を思い出した。 謎の少女に貰った『声のカケラ』も、光り輝いていて・・・ふわっと掌に下りてきたと思ったら消えて、自分の中に入っていったのだ。 (も、もしかして・・・) 少年が少しだけ期待に胸を膨らますと、チェルシーは服のポケットから何やらごそごそと取り出した。そして、それを少年に見せるように差し出す。 「これなんだけど・・・あなたの探してるもの、なのかしら」 チェルシーの掌に小さく輝くものは、まさしくあの時に見たものと同じだった。少年はあまりの嬉しさに跳びはねるような気持ちで声を発する。 「それ・・・それだよ!オレの・・・大切なもの。・・・オレにくれるかな」 「えぇ。渡すために声をかけたのだもの。これでお礼になるといいんだけど」 「十分だよ・・・!」 チェルシーがそっと、少年にその輝くものを渡す。 それは少年の掌の上でふわっと少しだけ浮き、少年がそれに見入っているとまたあの時と同じようにパァっと強く発光して、次に目をやった時にはそれは消えていた。 「・・・・・・」 「・・・どう?あなたの探していたものだった?」 チェルシーが首を傾げながら少年に尋ねる。少年はしばし呆然と立ち尽くしたまま、何かを考えているように難しい顔をしていた。やがて、小さく呟く。 「・・・・・・そう、だ」 「え?」 「思い出したよ・・・・・・」 「何を?」 チェルシーは更に首を傾げた。少年はとびきりの笑顔で、チェルシーの顔を見る。 「オレの、名前・・・!」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/04/02 01:47:17 AM
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