コスモス
春に校長先生は、通学路の小脇に種をまきました。
コスモスの種です。
やがて他の先生方や生徒も加わるようになって、
細く長い通学路にたくさんの種がまかれました。
そして、手作りの看板が立てられます。
「コスモス街道」 と。
それはまいた先生や生徒だけじゃなく、
通りがかるみんなの楽しみになっていたはずです。
‘秋にはここにいっぱいのコスモスが咲く’
コスモスが咲いていることを思いながら
みんなこの通りを通っていた、と思うのです。
少なくとも私はいつもそう思って歩いていました。
花が咲くのは、ほんの数週間だけど、
目に見えない花は、ずっと心で咲いていて、
春から今の季節まで、この道を通るたび、
優しい気持ちでいっぱいにしてくれました。
「目に見える」ことは、ほんの一部分のことで、
本当は「目に見えない」部分のほうが大事だったりするのかもしれません。
*
コスモス、咲いています。
コスモスに埋もれる!というような感じじゃないけど、
咲いたねー、咲いたねーと、ほそぼぞとささやきあってる感じ。
にっこりしてしまいます。
校長先生が見たかったもの、
きっと、コスモスにうもれる子供たちの笑顔、ですよね。
私もいつかどこかで人知れず種をまく人になりたいです。