私と猫と編み日記-幸せな女と思われたい-

０時１６分。

私は、山手通りを自転車で走っていた。

一日の始まりは
朝からなのか
夜からなのか
狂ったように自転車を漕ぎながら考えていた。

何でもいいから考えていないと
涙が溢れそうだった。

韓国人の知り合いがバーをやってて
女の子を捜してるのよ。
あなた、また引越ししてお金がないんでしょ？

彼女から、そう電話が掛かってきたとき
あ、嫌だな。
と思った。

私は彼女の強引さが苦手だった。

切り捨てることも出来ない
今のこの関係が嫌だった。

私はモタモタしているうちに
完全に断るきっかけをなくしていた。

魔法を掛けられたように
意思とは別に
私はその店に行った。

韓国人に品定めをされ
客だという肥えた男に品定めをされ
気分は最低だった。

酷い金欠の今の生活よりも、惨めだった。

はっきりと断らなかった自分が嫌だった。
丸く治めようとして働く気もないのにノコノコやってきた自分が嫌だった。

でも、一番嫌だったのは
私が女であることである。

女でなければ、
これほどにも容姿を他人から評価されることはないのではないか。

女でなければ、
笑いたくないときには笑わなくていいのではないか。

女でなければ、
あの男の顔を引っ叩いてやることが出来たのではないか。

女でなければ、
５年契約で戸籍を売ってくれないかなんて頼まれることはなかったのではないか。

女でなければ。
女でなければ。

口惜しくても
成す術がない事に
更に泣きたい気持ちになってくる。

女であること。
それは、仕事も恋も生活も
八方塞がりの今の私にとっては
不幸であること。