こぐま社の佐藤英和さん
息子が2,3歳の頃、佐藤英和さんの講演を聴く機会があった。保育付きだったので思い切ってでかけてみた。5回連続で毎回興味深い話の連続だった。こぐま社は絵本が中心の児童書の出版社だ。佐藤さんに拠れば、出版業界の中では、「ぽっぽや」と呼ばれて軽んじられていると言う。はとポッポ、きしゃぽっぽ、というわけだ。20年読まれ続けてやっと一人前の本と絵本は言うのだそうだ。20年と言えば、自分が読んで育った本を自分の子供に読んでやるということだ。その年月に耐えられず消えていく物が圧倒的に多いという。「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」「ちいさいおうち」「おだんごぱん」等々読み継がれた名作ももちろん沢山ある。わたしは、自分の絵本を選ぶ目に自信をもっていた。けれど佐藤さんの話を聴いて自分は思い違いをしていたことに気がついた。絵として上等な絵が使われ、上質な物語が書かれていれば良い絵本だと思っていた。良い絵+良い文=良い絵本、と信じて疑わなかった。しかし、佐藤さんの話に拠れば、絵本とは、まったく別なもののようだ。絵本は先ず、読んでもらうようにできている。子供は大人が考えるよりずっと絵の細部を良く見ている。絵が語るところを全身全霊で受け止めている。絵の描かれているページに内容を先走った話を書いてはいけない。(これに反するものが案外多い)衝撃的だったのは、「早く字が読めるようになるのは決して良いことではない。」という言葉だった。「字が読めないのは子供の能力です」というようなことも言われた。 字が読めるようになった子供に「もう独りで読めるね」と読み聞かせをやめてしまう親がいるがとんでもないことだとも。覚えたての字面をたどるのに一杯いつぱいになれば、お話の内容どころではなくなってしまう。想像力を全開にして聞き入っているのとは大違いだと。私はなるべく遅くまで読み聞かせを続けようと思った。