転載「黄泉の国から」
シリア情勢「2011年3月に始まった政府に抗議する市民のデモに呼応して内閣が総辞職し憲法まで変えたのだけれど、この年の夏ぐらいから妥協の代償として厳しさをを 増してきた治安維持活動の強化が「弾圧」という反体制派の大義名分にすり替わったためアルカイダを始めとする「外国勢力」がどっと乱入してきた。 これがシリヤ内戦の始まりであり、すべての悲劇が起こりここから約二年、シリアは解決の糸口のない混乱に堕ちて行ったのである。 それ以降、改革を求める市民の平和的なデモは影をひそめ、なぜか、どこからか、「潤沢な」武器が「反政府勢力」なるものに供給され対立は泥沼化していっ た。国外から集まったテロリストたちは血の匂いを嗅ぎつけ武装化がエスカレートし、もはやシリア市民とは縁もゆかりもない暴力のプロたちの手で構成された 呉越同舟の「反政府勢力」はバラバラなままでひたすら凶悪化していったのである。 もちろんCIAやモサドなど各国の諜報機関が混入していた「反政府勢力」ではあったが、最近、隣国のレバノンのヒズボラがアサド側についたためか、ならず者の集まりは劣性に立たされ、政府軍が優勢を保っている。そのため反政府側は一発逆転を狙って奇策に出たのである。 しかしメディアは恐れをなして、西洋諸国の汚い意図に忠実な報道だけを繰り返し、中東の全体に繋がる危機に深入りしようとしない。真実を伝えようとする ジャーナリスト(たとえば山本美香さん)は撃ち殺されてしまったので日本のマスコミなどは完全に委縮してしまったのだ。なぜシリアから遠く離れたワシント ンから「現場中継」だと称して特派員が訳知り顔でしゃべるのだろうか。もし彼や彼女が記者ならただちに現場に飛ぶべきである。この恥知らず! 誰がやったとは言わないがイラクでは先輩の橋田信介さんが、シリアでは後輩の山本美香さんが殺されて委縮し自己規制でまともな取材すらしなくなった。そん ななか日頃大言壮語の輩である僕は当然ゴラン高原あたりのつながりからシリアに潜入し、おなじジャーナリストとしての「かたき討ち」に当然いっていなけれ ばならないのだが、くそ田舎に閉篭もり自慰のようなブログで呻吟している。 情けない。意気地なし!!! そんな痴呆老人には語る資格などないけれど、今回のアメリカ=反政府勢力の「いいがかり」にだけは我慢できない。 「大量破壊兵器」を使用するかもしれないサダム・フセインを倒したように「人道的」立場から、「化学兵器」を使用したバッシャール・アサドは許せないとい ういかにも「アメリカ」的なワイアットアープ理論「悪い奴(都合の悪い奴)は撃ち殺せ」が罷り通ることだけはどうしても看過できないのである。 現地での取材、検証していないから隔靴掻痒であるがこれだけはいえる。 「犯罪は自分の立場が悪くなるようには行われない」これは常識であり特に国際的心理戦の様相を呈しているシリア情勢にはこれが当てはまる。国連調査団シリ ア出国(検証?)の前に決断するとか騒いでいるけれど高級ホテルにとまり数日ちょろっとカメラを意識しアングルに向けたポーズ(活動?)だけで真相が分か るのだろうか。茶番にしか過ぎない。 もしシリア政府が自分の国際的批判を無視してわざわざ優位な戦況で弱者の兵器(化学兵器)を使ったとするならば温和なボンボンの医者であるバッシャール・ アル・アサドが突然精神に異常をきたしたとしか思えない。したがって「犯罪は自分の立場が悪くなるようには行われない」のであれば、嘘をついているのがオ バマであることは明明白白であると言わざるを得ない。 なぜ賢明なバラクオバマは軍産複合体とイスラエルのごり押しに「異常に」気を遣い、自分でも矛盾すると知りつつ「苦渋」の表情を浮かべながらも「化学兵器はアサド政権」が使ったと断言しなければならないのだろうか。 化石燃料の価格を維持し、それを釣り上げるため? FRBを助け、いくら刷ってもドルの威信を失くさせないため? 、、、いくらでも机上の深読みは可能であるが、現地取材をせず外国の(それも英語だけの)メディアの記事を読み漁っただけで有料の記事を書くほど僕は厚かましくなれない。 痩せても枯れても裏の取れない速報をだす共同の元記者とは違うのだ。 したがってシリア情勢についてはこれぐらいしか書けません。ゴメンナサイ。 ~資金と体力不足のまま 悶々としして世界を視るだけ またくやしからずや」