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カテゴリ:本
ハーモニー (ハヤカワ文庫JA) (文庫) / 伊藤計劃 1974年に生まれ2009年に夭折した伊藤計劃による長編小説第2作である。 第一作の「虐殺器官」(この題名は疑問があるのですが)も十分、そのプロットの壮大さに驚いたものですが、この「ハーモニー」は「虐殺器官」によって国家の中で暴動が吹き荒れた世界のその後の「平和」な世界の物語です。 人類の多くは大人になると体内に自分の健康状態を認識・診断し、疾患を予防し体調をチェックする装置WatchMeを埋めこめられる社会に住んでいます。お互いに労わりあり、自死などは忌むべきものと思われる社会です。 そんな共同体意識が強い世界に生きる女子学生3人がこの物語の主人公であり、語り手もその中の一人です。 彼女らは思春期の中にあり、まだWatchMeを埋めこまれていないのですが、世の中の息の詰まる有様に、自らの生命を断つことで反抗し、存在を示そうと思っています。 そんな彼女たちの13年後の世界が第二部として現れ、世の中を震撼させる事件を追う主人公の前に現れるのは・・・・。 虐殺器官と同様の思考方法で作られた小説であり、その速度も似ています。 XMLのような文体を模した、まるでプログラムのコードのような文章を使用していますが、非常に読みやすく論理的な文体です。 P.K.Dickのヴァリスが神学になってしまったのに、伊藤計画の「ハーモニー」は抒情的かつ活劇的なものにできあがっています。良品です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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