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テーマ:映画館で観た映画(8566)
カテゴリ:洋画(や行)
原題: HET NIEUWE RIJKSMUSEUM/THE NEW RIJKSMUSEUM 監督 : ウケ・ホーヘンダイク 配給・鑑賞劇場 : ユーロスペース 公式サイトはこちら。 <Story> 2004年、アムステルダム国立美術館の大規模な改装工事が始まった。 ここはレンブラントの「夜警」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」などを有するオランダ随一の美術館。 解体が始まると市民団体が反発。 その後も政府や自治体の許可待ちで、工事は何度も中断。 各方面からの横槍に対しての妥協が続き、関係者たちは次第に熱意を失っていく。 工事再開のメドが立たずに、廃墟のようになっていく美術館。 はたして美術館はいつ完成するのだろうか。 ようこそ、アムステルダム国立美術館へ - goo 映画 <感想> ユーロスペース配給などと聞くとそれだけで得した気分になってしまうのです。 そしてこのタイトル。 楽しみにしていました。 これは完全なドキュメンタリーなのですが、 起こっていることが、ドラマにしか見えない。 それほど二転三転していきます。 オランダでは、プロジェクトが行われる時は、 開発側と土地所有者や自治体だけでプランを考えるのではなく、 地元関係者、NGOなど、全ての利害関係者に情報を開示しているそうです。 これを、「オランダモデル」と言うそうです。 しかしながら、本作の場合、 このシステムが美術館を混迷に導いてしまっていることは否めません。 まずこの美術館の構造です。 敷地内に公道が通り抜け可能というのがもう普通じゃない。。。 そしてそこを毎日数千人? が、日常の通路として通行している事実。 パンフレットによると、 「美術館はアムステルダムのど真ん中にあり、市の南部へ行くゲートでもあるので、 市民は美術館の通路が自分たちのものだという意識がある」とのこと。 なのでサイクリスト協会が関連団体として会議に参加するのですが、美術館の改装に関するあらゆることに反対していく様は、さすがに見ていて違和感を禁じ得ない。 日本だとこういうことは考えられないから余計そうなんだろうけど。。 「関連があり、そして参加する権利があるから」というのは至極ごもっともですが、 ひたすら己の権利だけに終始していたような印象がありました。 館長のロナルド・デ・レーヴ。 彼についてもいろいろとこの映画の中で 意見が出ているが、 では、彼の立場だったら一体どうしたであろうか? 映画からはわからない部分で、彼も多分に個性的ではあったのでしょうけど、 それを差し引いたとしても、なす術がなかったのではないだろうか。 これほどまでに、意見が収束せず、事態も進まないとなると、 スタッフの士気に影響してくるわけですよね。 そして次第に、無念な空気が漂ってくる。 自分は一体何のためにここにいるのか? 意味がないのなら自分の道を探した方がいいのではないだろうか。 そう考えるスタッフが出るのも当然である。 1つのことを進めるのにも実に多くの利害と対峙しないといけないシステム。 できれば早く合意に至りたいが、 それでも、その方向を間違えて進めている人たちがいるようにも思う。 それは果たして本当の民主主義なのだろうか? と、見ているこちら側には映る。 美術とは、美術館とは何か。 そんな議論が出ることはない。 そんなシビアな状況にもかかわらず、驚いたのは、 美術館で働く学芸員の表情。 アジア館担当のメンノ・フィツキ氏が、金剛力士像を目の当たりにした時の、 まるで子供のような、ワクワクとした目線。 美術が好きで、ここにいる。 それを体現していてくれるようで嬉しくなる。 それでも彼はパンフレットで、 「35歳から45歳という、人生でも重要な時期に美術館が閉館なのは複雑」 と言っている。 公共財としての美術品が公開されないことのストレス。 それは、美術品そのものだけではなく、 それを管理しないといけないプレッシャー、 それに触れることができない無念、 それらのいずれもにも該当している。 公開されない期間が長引く理由が、 いささか自分たちよりの意見を主張したことだったり、対応のまずさであるならば、 もはやこれ以上繰り返してはいけないようにも感じる。 果たして、美術館は予定通りに開館するのだろうか。 否、そうであってほしいと切に願う。 これほどまでに、人の利害がぶつかり、時が無駄に流れていくのを見させられるのは、 いささか辛くなってくる。 倉庫に眠っている、せっかくの数々の傑作が泣いている。 ************************************ 今日の評価 : ★★★☆ 3.5/5点 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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