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テーマ:映画館で観た映画(8566)
カテゴリ:洋画(か行)
原題:South of the Border / Al sur de la Frontera 監督:オリバー・ストーン 出演:ウーゴ・チャベス、ルラ・ダ・シルバ、エボ・モラレス 鑑賞劇場 : 横浜ブルク13 第7回ラテンビート映画祭 公式サイトはこちら。 <概要> オリバー・ストーン監督は、米国主導の自由市場政策が中南米で失敗した理由を模索しつつ、カリブ海から南下していく。 米国で危険人物視されているベネズエラのチャベス大統領をはじめ、 ボリビア初の先住民族出身大統領となったエボ・モラレス、 労働運動の旗手から大統領の座に登りつめたブラジルのルラ、 反新自由主義政策をとるアルゼンチンの女性大統領クリスティーナ・キルチネルなどを訪ね、左派と呼ばれる大統領たちとの会見を通じて、その実像に執拗に迫っていく。 6月末に全米公開され、様々な論議を巻き起こした話題の政治ドキュメンタリー。 (第7回ラテンビート映画祭 公式サイトより) <感想> もしもこの作品にサブタイトルをつけるならば、 「2時間でわかる南米の現代政治模様」といったところだろうか。 オリヴァー・ストーン監督の信念。 それは、帝国主義時代に他国からの支配を受けてきて、そして今また経済的観点から大国に操られようとしていた南米諸国が、 ようやく自分たちの足で立ちあがろうとしているムーヴメントを見守り、支えたいということに他ならない。 彼は個性的な各国の首脳から根気よく話を引き出す。 ベネズエラのチャベス大統領、ボリビアのモラレス大統領、ブラジルのルラ大統領、 アルゼンチンのクリスティーナ・キルチネル大統領とその夫で前大統領ネストル・キルチネル氏。 1人1人がとにかく強烈な存在なのです。 しかしながら彼らの政治的行動は、かつて南米5カ国をスペインから独立に導き、 南米統一を画策したシモン・ボリバルの理想が裏付けとしてある。 現在南米で、手を取り合おうとしている指導者たち、彼らはまぎれもなくシモン・ボリバルの夢を追う「ボリバリアン」達なのである。 ボリバルの夢破れて80年ののち、中南米諸国では、共存しようという動きが出てきている。 しかしながらそれを快く思わないものももちろんいる。 それがアメリカをはじめとした、「左派政権」誕生を阻止したい派閥。 過去にはキューバ危機もありました。 本作では特にIMFが南米に与えている経済的負担を取り上げている。 南米諸国に貸し付けた債務から逃れられない状況から、人々を解放したい。 そんなチャベス大統領の理想は、アメリカを筆頭とする反対勢力により「左派」とレッテルを貼られる。 ただ単に、経済的に支配しようとする勢力から逃れて、自分たちの力で経済を発展させて行きたいだけなのに、特定のレッテルを貼って一定の方向にイメージを作り持って行こうとする勢力。 実態を調べることなく、マスコミから垂れ流されるイメージを信じてしまう一般大衆は、見事に「チャベスは過激だ」と刷り込まれてしまう。 何が左で何が右か。 それは見る側の信条次第。 右寄りからすれば全てが左に見えるのは当然のこと。 しかしそれを正義として押しつけてくるアメリカのやり方には、多くの南米諸国はもう耐えられないのではないだろうか。 その証拠に本作でも取り上げられているが、IMF依存の姿勢からの脱却を図るため、2007年に「南の銀行」が設立されている。 それぞれの国情も財政状態も異なるなかで、困難な壁が立ちはだかることも十分承知で、それでも手を取り合ってやっていこうとする彼らの姿勢。 そこをオリヴァー・ストーン監督はクローズアップしていく。 指導者同士の横のつながりが、政情を超えて堅固になっていく様子を、監督自身が楽しんでいるかのようだ。 その証拠に、「君も仲間だ」と言葉をもらう監督、どことなく嬉しそうな表情が印象に残る。 自分たちの手に自分たちの政治を取り戻す試み。 それをささやかながら共感していきたいという姿勢が、観客にも十分に伝わってくる作品でした。 今回のラテンビート映画祭では『ルラ、ブラジルの息子』、『レボリューション』 、『わが父の大罪 -麻薬王パブロ・エスコバル-』といった社会的背景を取り扱った作品が多く、 併せて鑑賞してみると、より彼らの世界が深く伝わってくる。 ************************************ 今日の評価: ★★★★☆ 4.5/5点 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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