「シェアハウス ー わたしたちが他人と住む理由」 阿部珠恵 茂原奈央美著
シェアハウス、ここ2〜3年で耳にするようになった言葉。ちょっとしたきっかけで薦められたので、必要性はなかったが「シェアハウス ー わたしたちが他人と住む理由」を読んでみました。シェアハウスとは、家族以外の人と生活空間、環境、物資を共有して生活することである。当然「そんな窮屈な生活は大変なだけじゃない?」という疑問があるが、著者はシェアハウスの住人の実体験を通じて答えの一端を開示している。シェアハウスのメリットは、『人と「シェア」することで、自らの生活スペースをより豊かにできるということ』であると著者はいう。(阿部 p.98)そもそも、著者が都内の実家を離れ、大学時代の友人達とシェアハウスに選んで住み始めたのも、生活環境を豊かにすることが目的だった。確かに、価値観や生活習慣の違う人と一つ屋根の下に住むことはストレスの原因となり、デメリットの方が多い様に思う。そもそも「一人部屋」が欲しいなんてのは、家族の多い人なら誰もが一度は望むこと。現実は生活空間の制限により、プライベートな空間を諦めることを強いられ、我慢の日々が続く。だからこそ、一人暮らしで誰にも干渉されない生活が望ましいのでは?実は他人と生活空間をシェアするデメリットを補っても余るくらいにシェアハウスは魅力があり、それは以下の3つのフェーズだと著者は考える。(阿部 p.55)1. 人がいる安心感や楽しさが得られるフェーズ2. 食事や環境などいろいろなもとをシェアする楽しさや共感を得るフェーズ3. シェアハウスという場を使って、住んでいる人たちと一緒に何かを作り出したりするフェーズ特に、最後の共同生活をする住人と一緒に「何か今迄にないことをやるために助け合う」という相互扶助の考えが最大のメリットであるようだ。ルール作りはゼロから始めなければならない。これまでに誰かが作った形骸化した既成のルールではなく、シェアハウスという空間でこそ効果を発揮する新しいルールを住人自らが作り出していく。シェアハウスに住む者は、個々の価値観の違いなどを越えて、共通の目的に向けて生活スタイルを調整していく力が自然養われている。日々の生活でぶつかる障壁を一緒に乗り越えて行くことは醍醐味であり、楽しい体験でということか。20世紀は終身雇用を保証する会社に頼ったが、今日ではそれは叶わない。ニュースなどで景気の動向などをみれば、そう感じざるを得ない。だからこそ、いま新しいライフスタイルとしてシェアハウスというのが求められるようになったのでは。これは今迄にない生活スタイルであり、ルールはそれぞれの生活を共にするシェアハウス(著者は21世紀型ムラと呼ぶ)の中で作られていく。シェアハウス、一時のブームで終わってしまう以上の可能性がありそう。21世紀の日本人のライフスタイルとしてシェアハウスが定着するのかな。シェアハウスは日本の縮図の様に感じました。面白い。☆☆☆、星3つ!(最大3)