遺言相続ノート・公正証書遺言()その4
軽くおさらいをしますが、公正証書遺言は、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口授し、それを今度は公証人が筆記して遺言者と証人に読み聞かせるのでしたよね。これがもちろん正しい手続なのですが、「わかりきったことは、そういうことにして」なんていうのは実務上も起こりうることですし、法律は解釈をして世の中の現象の適否を決めていく要素を持つものですから、「じゃあ、この場合はどうなの」といった問題がよく起こります。公正証書遺言では「遺言者による公証人への口授」に該当するのかどうかがよく問題になるポイントなのです。では判例を基にちょっとしたクイズを出しますから、次のケースがそれぞれ公正証書遺言として「遺言者による公証人への口授」に該当するかどうか考えて○×をつけてみてください。答えは、このブログでそのうち出します。1.疾病のため遺言者が言語明瞭を欠き、公証人の質問に対してわずかに挙動をもってうなずき、または首を左右に振る程度のとき2.近親者達が誘導的に質問をし、公証人が聞き取れないくらいの応答があったのを、近親者達が公証人に通訳するように伝えて説明したものを、公証人が筆記したとき3.公証人が既に遺言内容の筆記を終えた後、はじめて証人が立会い、さらに公証人が筆記内容を読み聞かせたのに対し、遺言者がうなずくのみであったとき4.公証人があらかじめ他人から遺言の趣旨を聴き、これを筆記して証書に作成しておき、その後に行われた遺言者の口授を聴いたうえで、前の筆記を遺言者と証人に読み聞かせて間違いないことを確かめたとき5.遺言者があらかじめ原稿を作成して公証人に渡し、それに基づいて公証人が書面を作り、証人立会いの下、遺言者に面接して遺言の趣旨は前に交付した書面の通りだという口授だけを聴き、これを読み聞かせたときさあ、どうでしたか。遺言はあくまでも「遺言者本人の意思」を残すものだということ、公正証書の場合は公文書としてその意思をきちんと証明するものであること、をキーにしてよく考えてください。全問正解した方は、もう公正証書遺言は完璧ですよ。ではまた次回にお会いしましょう。