死ぬ暇もない
そういえば先日、007シリーズの映画「NO TIME TO DIE」を見た。封切りされてそれなりに時間も経過しているので、多少のネタバレは許される頃かもしれない。主演のダニエル・クレイグが今回の作品で007シリーズを卒業する訳だが、一番大事なことはこの作品でジェームズ・ボンドが死ぬということだ。いや~、ボンドのキャラクターが時代にそぐわなくなってきたからとか色々言われているようだが、正直、まだ死んでほしくなかった。というか死ぬなら死ぬで、もっと必然性が欲しかったなあ。生物兵器製造基地をイギリス軍が破壊するためのミサイルを発射した後(!)、その基地の防御扉が閉まったくらいで、着弾まで時間もないのに、「ちょっともう一回開けてくる」的なノリで現場に戻る必然性がないのではないか。そんな手動で開け閉めできるような扉なんかミサイルが突き破って破壊するだろうし、日露米の抗議などかわす気がないならそもそもミサイル攻撃などできまい。ボンドがちゃんと避難して、ミサイルが着弾し、生物兵器対策用の部隊が製造基地の現状確認をした上で、万が一破壊しきれていなければ、その時に扉を除去して再度ミサイル発射でもすれば済むだろう(だから必然性がないのだ)。これまで「死ぬ暇もない」生き方だったボンドが最期に死を覚悟したとき、「時間はいくらでもある。」と自分の子を産んでくれた恋人に言うというのは、なかなか素晴らしいシーンだったと思うだけに、もうちょっと死ななければならない必然性が欲しかった。まあしかし、全体としては満足できた(ではまた)。<今夜の2曲:Billie Eilishの「No Time To Die」、Louis Armstrongの「We Have all The Time in the World」>ボンドが唯一結婚した作品が『女王陛下の007』だ。結婚早々花嫁は殺されてしまったが、劇中使われた曲がルイ・アームストロングのこの曲。『NO TIME TO DIE』でもエンディングテーマで使われていた。