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テーマ:サッカーあれこれ(20135)
カテゴリ:サッカー
中田浩二選手は鹿島と3年契約をしており、その契約は今年が最終年でした。これまで3年間、海外移籍の可能性を探ってきましたが、オファーに至るまでの成果は得られませんでした。
2003年の契約交渉時、鹿島アントラーズから2年契約の再提示を受けましたが、契約を更新をしませんでした。何故なら大きな怪我を抱えており、果たしてどこまで感知するのかという不安な気持ちが選手の心理にあったからです。 2004年12月に入って、マルセイユのトルシエ監督から口頭でトライアウトの打診が有り、鹿島へ伝えましたがクラブとしては「正式な書面で無い限り対応できない」という当然の反応、特に本件に触れぬまま、12月に2回の契約交渉を行ったと記憶しています。一回目は選手自身も同席、主にコーチングスタッフの体制についての議論に終始しました。年末になってマルセイユからFAXが届きました。これには「1月に獲得することを前提に1月3日からトライアウトに来ませんか。費用はマルセイユが負担します。」というものでした。鹿島からはトライアウトへの参加のOKを頂き、渡航の準備に入りました。ところが年末にマルセイユが行った合宿でリザラズの去就問題が発生し、渡航を見合わせるように電話にて連絡があり、結局、中田浩二が渡仏したのは1月10日でした。 渡仏してから数日後、マルセイユより鹿島に対し獲得交渉をしたいとのFAXが届きました。鹿島は即座に条件を提示。しかしマルセイユの出した返答、金銭提示は鹿島の希望額の10%を下回るものでした。もちろん、その後の交渉で、マルセイユから日本への移籍、他海外クラブへの移籍時の移籍金の分配など、付帯オプションの提示がありました。 しかし金銭的な開きは埋まらず、鹿島からは「これでは受け入れられないのでフリートランスファーで行ってください。邪魔はしませんから」ということで、最終的にフリートランスファーが成立したわけです。 ここでポイントとなったのは、マルセイユが移籍金を払うということが、「欧州ではどれだけ非常識なことか」、なかなか日本では理解が出来ないということです。 欧州ではボスマンルール施行後、フリートランスファーが主流となっています。移籍全体の60%がフリートランスファーであるとも言われています。特に1月のトランスファーはフリーが主体だそうです。 通常、欧州では契約の残存期間が1年になるということは、すなわちフリートランスファーが確定したのと同じ意味を持ちます。例えばリバプールに在籍していたマイケル・オーウェンは約7億円でレアル・マドリードへ移籍したと言われています。これはリバプールとの契約残存期間が1年になっていたからこその金額です。また、有名どころでは、フェイエノールトからACミランに移籍したトマソンもフリートランスファーだったと思います。 日本も過去においては2例あります。、元市原の広山選手(フリートランスファー)と元磐田の高原選手です。高原選手は契約満了時でしたがHSVは磐田に移籍金(違約金)が支払われました。その金額は今回マルセイユが鹿島に提示した金額の約1/3程度でした。 欧州ではこういったフリートランスファーを防ぐ為に、クラブは長期的なビジョンを持って、選手と契約していきます。チームの長期ビジョンに沿う選手に対しては、最大5年までの複数年契約を締結します。しかし、同時期に多くの選手の契約が満了しないようにするために、例えば24名の選手と契約する場合、毎年8名づつ複数年契約をしていくといったような手法を取っています。 欧州の複数年契約は、その年数によって段階的に年俸が上がっていくようになっています。しかし日本での複数年契約提示の多くが一年目の年俸を定め、「二年目の年俸は一年目を下回らない。具体的な金額は一年目終了後に定める」という形です。しかし、若い選手にとって、この複数年契約は魅力的に映りません。逆に「とりあえずキープ」的な印象を受けてしまっている選手が多いのが事実です。 ですから、日本人選手の契約が1月で切れることを見据えて獲得を検討する欧州のクラブはこれからも増えるでしょう。ましてや毎年12月に世界クラブ選手権が開催されるようになれば、そこで目に留まった日本人選手は確実なターゲットになります。日本が世界の頂点を目指せば目指すほど、このままの契約形態では、フリートランスファーの可能性はどんどん高くなっていくのです。 こういった選手の海外流出は、南米、東欧、フランス、オランダなども起きています。クラブチームに自国選手が一人もいないなどという、奇妙な現象がボスマンルールの弊害として起きています。何人かの方が、過去の事例やニュースをこのブログに書き込んでいただいている通りです。 ではどのようにこういった事態を予防すれば良いのでしょうか?それは他クラブのオファーを上回る、魅力的なオファーを出すという一点につきます。それ以外の方法は現行ルールにいては無いといえます。 では海外移籍の場合はどうでしょう?海外移籍は選手の「夢」であり「目標」です。この目標が目の前に現れたら。日本のクラブがどんなに魅力的なオファーを出したとしても、その「夢」をお金で買取ることは非常に難しいといえます。もちろん、プロフェッショナルである以上、高いお金の提示を受けたクラブでプレーするということであれば、そちらを選択すれば良いわけで、それ自体は誰に文句を言われるものでないわけです。 契約が満了すれば、どんなに長くそのクラブでプレーし貢献してきたとしても、契約延長されない選手がいます。毎年11月30日になると必ずと言ってよいほど、スポーツ新聞の紙面を飾ります。しかしこれはクラブに与えられた当然の権利です。ですから、その逆があっても決して不思議ではないと考えます。 貴方が選手の代理人だったら、どのようにされたでしょうか。是非考えてみていただきたいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.03.05 06:01:18
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