絵の具
「えっ?ワタシ、まだ3時のおやつですけど?」と、首をかしげたくなったくらい、復活祭連休前日の皆サマの足取りは軽く、そして退社時間は早かった。ワタシもその波に乗り、サマータイムのお陰でちょこっと残ったくらいでは日の沈んでいない時間帯に、いつもの場所に足を運んだ。ストローラーを押す若いカップル。ローラーブレードとランニングのおじさんコンビ。中年夫婦、etc, etc...。思った以上にヒトがいて、中にはずっとカメラを抱えているヒトもいた。そう、目の前には波も立てず、どこまでも歩いていけそうな一面があった。遠くには夕焼けに照らされた柔らかそうな雲と、それを反射しているピンクの水面。ちょっと手前はどちらかと言えば緑で、地平線は深い青色だ。その中間では紫で、所々シルバーにも見える。時折ゆるやかな曲線が描かれたと思ったら、手前でサカナが水上に現れていた。「ぽちゃん」という音付きで。(前回の海鳥サーフィンの代わりかしら?上手いキャスティングだわ)面白いくらい綺麗に大きくなって行く円と、少しずつ色を変えてゆく水面。なるほど、夕暮れ時の水辺にはこんな楽しみもあったのかと、感心しつつ、絵描きじゃなくて良かったと思った。どんな絵の具を使ったとしても、あの色は出せない。そのくらい穏やかで、そして色彩に富んだ一面だった。そういえばある女性作家が南の国で、沈む夕日を現地の少年と共に海辺で見たという小説だかエッセイだかがあったなぁとその筋書きを思い出そうとしていたら上手い具合に太陽が沈んでしまったらしく、薄い桜色に変化した水面部分は無くなってしまった。その少年が作家にどうしても教えてあげたくて、陽が沈むまで待ってとせがんで見せた砂の色も、ワタシが見たあのどちらかというと暖色に近い青色も、確かにその場で見たヒトにしかわからないだろう。でも、どちらもきっと、わかるヒトにはわかる。(ねっ?ろすうさぎさん)