イタリアでモロッコごはん

ある役所の前で、出席する会議のために
１時間ほど時間を潰さなければならなかった日。

外は雨だし、近くの商店も
お昼休み時で全て閉まっている...。


仕方ない、屋根のある役所前に座って本でも読むか。



しばらくして出口から出てきた男性が
私の前で立ち止まった。


私の前でモジモジしている。


あ、怪しいな。


２分程モジモジした後、
話しかけてきた。


「あ、あの、そのキミの傘をちょっと拝借してもいいかな？
　えっと、ボクはココからほんのちょっとのところに
　車を停めてあるんだけど、そこまで傘をさしていって
　車で戻ってきたら返すからさ...。」


や、ヤバいな。
見た目は、色がナマ白くて
動きはナヨッとしていて覇気がない。


ただ全く悪気がない様子で
私もまだ時間待ち中だし
断る理由も見つからなかったので


「ど、どうぞ。」


と、大切な傘の確実な返還を祈りながら返事した。



彼はピンク色の傘を嬉しそうに持って
出口から出てくる
恐らく彼のことなんて全く知らないだろう人達に

「アハハ、傘無事に見つかったよ、良かった、アハハ。」

と言いながら
おもむろに傘をさして去っていった。


彼を目で追っていくと
周りの他の誰も傘をさしてない...。


今雨やんでいるじゃんっ！！


傘の返還を祈りつつ
かなり怪しい男を待つ。




男は帰ってきた。


「ハイ、傘ありがとう。
　え、えっと、コ、コンニチハ。」


出たっ！
やっぱりアジ専（アジア女性専門）？
それともジャポ専（日本人女性専門）？
→これはフランスから来た友人から出た言葉で笑えた。
　ジャポン専門。


「ボク、日本人の彼女と付き合っていたんだ。
　●回日本に行ったことあるんだよ。」
ジャポ専だ。（以下Ｊ）

Ｄ　「あ、そう。
　　　その彼女は？」

Ｊ　「彼女は日本で生きていくことを決意して帰っちゃった。」

Ｄ　「そう、残念だったね。」

Ｊ　「キミはイタリアで働いているの？」

Ｄ　「学生だけど。（すかさず）夫と子供もいるわよ！」

Ｊ　「あ...そう....。
　　　キミ、妹とかいるの？」

Ｄ　「いるわよ。日本で働いていて彼氏いるわよ！」

Ｊ　「あ...そう....。
　　　キミの友達で彼氏募集中の人とかいる？」

やっと本題だ！

Ｄ　「う～ん、みんなカップルだね。
　　　イタリア上陸ホヤホヤ組みとは知り合わないし。
　　　残念ながらお役にたてないわ。」

Ｊ　「キミ、スカイプとかメッセンジャーとかする人？」

Ｄ　「しない。（ウソ）」

Ｊ　「どうにか日本人の彼女を見つける方法はないかな？」

Ｄ　「日本人が集まるバーとかに行けば？」



ここで、先日友人から
「なんで一度日本人と付き合った男は
　その後もずっと日本人を探し続けるの？
　どこにそんなに惹きつけられるのか知りたいわ。」

っていう質問に
私が明確に答えられなかったことを思い出して
Ｊに突撃インタビューしてみた。


Ｄ　「なんで日本人の彼女がいいの？
　　　日本人のどこが好きなの？」

Ｊ　「えっと～、イタリア人女性にないスピリチュアルなところ。」

ホ～。

Ｄ　「でも、私ずいぶんとスピリチュアルなイタリア人女性に出会ったけど。」

Ｊ　「ちょっと違うんだよねぇ～。」

日本人に執着している彼は
イタリア人女性になど見向きもしないのだろう。

いや、イタリア人女性が彼に見向きもしない...か。



Ｊ　「あの、キミにボクのケイタイ番号渡してもいいかな？」

Ｄ　「いらない（即答）。傘貸与以外、あなたのお役には立てないわ。」


その後、またモジモジして

Ｊ　「ケイタイ番号あげるよ。」

Ｄ　「いらない。そんなことしたら
　　　モロッコ人の旦那がアナタのこと殺しにくるわよ。」

Ｊ　「彼はキミの携帯チェックするの？」

Ｄ　「しないけど...。私はその日にあったこと全て報告するから。」


そしてやっとＪから解放されたＤｅｌｉｚｉａ。



ふ～。



暇潰しには、なかなか面白かったけど
かなりの執着っぷりだったな。


ここに記した以外にも
いろいろ話したのですが
なかなか、しっかり仕事はしているようですし
勉強熱心なようですし

見た目はまぁまぁ普通ですし
興味がある方がいらっしゃいましたらご一報ください（笑）。



日本人を見るたび声を掛けてしまうってのは
彼女の面影を重ねて幻想を見ているようで
もし私だったらジャポ専の二人目の彼女はイヤですが...。


留学したての日本人女性には
声を掛けてくれた彼が、

本当に自分のことを見てくれているのか
幻想を見ているのか
自分の背後の「日本」に興味があるのか

即座に判断しかねないと思いますが
彼らの思惑もイロイロなので、よぉく観察してみてください☆