テーマ:水中写真(510)
カテゴリ:トンガ
以前、このブログでザトウクジラのシンガーについて書いたことがあります。
そのときの内容は・・・ ・ザトウクジラは鳴き声を発する。 ・鳴き声は、特徴的なフレーズが繰り返されるため「ソング」と呼ばれ、 クジラが歌っているようだと、形容されている。 ・「ソング」を発するのは、繁殖海域にいる単独の雄のみで、 同じ一海域にいるクジラは同じ「ソング」を歌う。 ・「ソング」の目的は諸説あるが、 以前は求愛のためにメスに向けて発せられるとの説が有力だった。 しかし、近年の研究・観察結果から、雌に対してではなく、 雄同士の交信に用いられているとの説が支持されつつある。 ・実際2007年に、雄同士の交信に用いられていることが推察される事象を観察した。 ・雄同士の交信の目的は、ライバル同士の宣戦布告や、 逆に、雌との交尾に関して優先権を持っている雄に対しての、 共同戦線を行う呼びかけなどが考えられる。 ・・・というものでした。 ところが、今回2日目に母子とエスコートを観察していたとき、 間近でシンガーのソングが響き渡っていたんです。 はじめは、私が観察していた母子とエスコートの3頭とは別の、 単独雄が近くにいて歌っているのかと思ったのですが、 この日のガイドのえみさんの話では、歌っているのはエスコートだとのことでした。 ザトウクジラのシンガーについては、その対象・目的は別にして、 歌い手は繁殖海域にいる単独雄ということが定説になっているようなのですが、 実際は、採餌海域での観察例や、 今回のように、母子に付きまとうエスコートが歌うことも観察されているそうです。 それにしても、エスコートが歌う理由は何なのでしょう? やはり目の前にいる雌クジラへの求愛なのでしょうか。 しかし、育児中の母クジラが、繁殖行動を受け入れる事は考えにくいと思われますし、 近年の観察例を鑑みても、雌に投げかけられている可能性は低そうです。 ザトウクジラと同じ鯨類であるハンドウイルカでは、 雄が集団で子イルカを攻撃し、殺してしまうことが観察されています。 子イルカの死亡後に、元母親との交尾の確率を高めることが理由の一つとして考えられるようですが、 この事が、ザトウクジラにも当てはまるということが言えなくはないかもしれません。 つまり、エスコートとして母子に付きまとっていても、 雌クジラは子育てに夢中で、全く新たな繁殖に興味を示さない場合、 エスコートにとって、邪魔者である子クジラを排除するために、 仲間となりうる別の雄クジラを呼び集めるための行動としてソングを発することが、 仮説として考えられるかもしれません。 写真は、以前撮影したエスコート。 このときは、母子に我々が接近することを嫌ってか? 母子と私達の間に割って入るような行動をしていました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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