初めてのスカイダイビング体験
埼玉県の桶川にある「東京スカイダイビングクラブ」で初めてのスカイダイビングを体験してきた。いやぁ、とにかくスゴい!!のひと言。地上13,000フィート(約3,900メートル)、最高の恐怖から、最高の爽快感への滑空体験。しかし、この日は北朝鮮から人工衛星「光明星2号」と呼ばれる弾道ミサイル「テポドン2号」が発射されると予告され、日本中に緊張が走った2009年の4月4日であった。奇しくも我々の乗った飛行機が飛んだのは、テレビ局各局が「北朝鮮から飛翔体が発射された模様です!」と報道があった直後(その後、誤報と判明。実際には2009年4月5日の11時30分頃に発射された。)のことであった。・・・ 昨年末の忘年会。集まったメンバーは、10月から半期、小田原の栢山に畑を借りて、初めての農業体験をした、情報通信&デザイン業界の4人。「いやぁ、やっぱり、来るもの拒まず、って大事ですね。自分一人だったら、きっと農業なんて経験することはなかったと思います」「来るもの拒まず」は、自分のモットー。本来は、ちょっと違う意味の言葉であるが、私の場合、自分の価値観とは異なるアプローチを受けた際でも、あえてそれに身を委ねてみることで、自分の意志では辿り着かなかったであろう貴重な経験をすることを指している。「本当ですね。このチームで、これからも新しいことにチャレンジしていきましょう!」「来年は何をしましょうかー?」この頃、程よく酔いもまわってきた頃である。「スカイダイビングなんか、どうっすかねー?」前回、農業をやろうと言い出した上條さんが言った。「ええぇーーー!!」…と、その後、あまりの衝撃的な提案に、その案を越える策もなく、あっさりと、来年チャレンジすることがスカイダイビングに決定した。まぁ、その時は半分冗談だろうと思っていたのだが、次の日のメールで、それは現実となった。農業の時と同様、スピード感溢れる上條さんの情報収集&行動力である…。・・・「ピィー!、ピィー!、ピィー!、落下5分前!!」機内に設置されたLEDが点滅し、けたたましく電子音が響く。アジア最大級と言われる19名乗りのスカイダイビング専用機が、埼玉県桶川の本田飛行場を飛び立ってから約15分後、富士山よりも高い地上3,900メートルの上空に達し、ダイビングポイントに近づいていた。バタバタと轟音を上げながら飛ぶ、扉の開いた小型機と、妙に冷静な自分。しかし、掌に違和感を感じて握ってみると、べったりと汗をかいていた。「飛び降りたら身体をなるべく仰け反って!頭は上を向いて!手はここね!」背中にいるインストラクターが、ハーネスをギュッ、ギュッと締め上げながら、この段階で初めて飛び方をレクチャー。ホームページでは、地上でノンビリ説明を受ける女の子たちの写真があった筈なのに、自分についた人は、ここまでな~んにも教えてくれなかった。「乗っちゃって」と言われるがままに、誰よりも先に飛行機に乗り込んだ私は、この機内で、いちばん奥に座っていた。どうやらジャンプは最後になりそうな雰囲気だ。「今日は誰かと一緒に来ているの?」とでも言われたのか、前にいる上條さんが後ろを振り返って、私の方を指差している。実際の声は騒音でかき消されて聞こえない。しかし、イケメンなインストラクターは、とても優しそうである。緊張する上條さんを気遣って、さっきからずっと会話を交わしてる。覚悟は出来ているつもりだったが、「自分のインストラクターが彼だったら良かったのに…」と、少しだけ、この巡り合わせを恨んだ。「ピィー!、ピィー!、ピィー!、落下1分前!!」飛び慣れた人たちが、パックリ開いた飛行機の横っ腹にぶら下がり出した。-15°の冷たい風を浴びる音がすごい。(と、ここまで書いている時点で、今も手に汗が噴き出してきた!)「ピィーーー!、落下!!」赤いLEDが点灯し、風に煽られながら、次々と人が下へ落ちていく!!「自分で前に進んで!」機内は立ち上がれる高さがないので、座ったままズリズリと前に進まなければならない。インストラクターと繋がったまま、扉のない飛行機の縁まで行き、足をぶら~んと外へ投げ出した。下を見ると、うっすらとした雲の上から、埼玉の街がシムシティのように見えた。人間の高さに対する恐怖は、水泳の飛び込み台やバンジージャンプくらいの高さがいちばんで、それを越えると怖くなくなる、って聞いたけど、そんなのウソだ!こんな高いところでぶら下がって、怖くないやつなんかいるものか!!!「上向いて!!」そうだ、飛ぶ時は上向いて仰け反らないといけなかった。と、思って上を向いた瞬間、グワァーーー、という風に煽られながら、身体が押し出され、斜め後方へ舞い落ちた。「うっ、わぁーーーっ」グワァーーーーーーーーー、身体にいっぱい風を浴びて落ちていく。いや、実は落ちている感覚は以外と少なく、風に押し上げられて空中に浮かんでいるような感覚すらある。高度があるので、地面が近づいてくるような感覚があまりないのだ。「…」そのまま50秒程、自由落下。冷気を感じて手を見ると赤くなっている。背後のインストラクターが掌の角度を羽根のように変えて、姿勢のバランスを変化させているのが視界に入った。自分もマネをしてみると、身体の向きがクルリと変わった。「すっ、スゴい…」さっきまでの恐怖が嘘のように気持ちいい滑空感と、普段は決して見ることのない壮大なパノラマをしばらく味わった。その後パラシュートを開いて、まるで鳥のように約10分の遊覧飛行をするのだが、時間の感覚としては、自由落下の50秒とパラシュートを使った10分間とが同じくらいの長さに感じた。「着地の時は、両足を前にね。ちょっとやってみて。そう。」またもや、直前のレクチャーを受けて、無事着地。何とも例えようもない爽快感でいっぱいだった。「ありがとうございました!とにかくスゴいとしか言いようがありません。機体から飛び出すまではさすがに怖かったのですが、その後は空中でも恐怖はなく、とても気持ちいいものなんですね!」さっきまでの不信感はどこ吹く風で、一度命を預けたインストラクターに抜群の信頼感を寄せた。・・・ こんな後はお腹が空くもの。気のいい老夫婦がやっている「まるます家」で、美味しい鰻重(準備中の時間帯に入れてくれた上に、大盛りサービス!)を食べて帰りました~♪ 最後に、「来るもの拒まず」に続く、もうひとつの持論。「70歳になって人生を振り返ったとき、『若いときにやっておけば良かった』なんていう言葉は使わない」と心に決めている。そこで、お薦めの映画をひとつ。「最高の人生の見つけ方」。まさに70歳のジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが演じた痛快な傑作である。画像:19名乗りのスカイダイビング専用機