その頃僕は生き方を探していた。




当時の僕にとって大きな挫折の後、傷がやっと癒えてきたところ

だった。







何をしていこうか。


どんな道があるんだろうか。





生き方を学ぶなら、何かを極めた人間に会ってヒントを

探ろう。



北辰一刀流は坂本竜馬の剣術流派。その本部道場の館長、

いわゆる剣の達人に会いに行ってみた時のこと。





稽古風景を見ていると、一人習い始めたばかりの弱い青年がいる。




先生達からは叱りとばされ続け、見るからに努力家であろうさすが

の彼も、落ち込んでいるようだった。





椅子に座っていた小柄な達人（おそらく８０歳近い。）は、落ち込む青年を

呼んで優しく言った。






『大丈夫だよ。大丈夫。

　ぼくもね、むかしはね、みんなに　ヘタ　ヘタって

　言われてたんだよ。

　だからね、きみもね、一生懸命がんばってね。』






稽古が終わり、見学していたディッキーも呼ばれ。



『きみもね、一生懸命に修行し続けなさい。』







武道のイメージからはかけ離れた優しい言葉使いと声、小さな身体

で何十年も稽古し続け剣術を極めたその老人から出た言葉には大空の

ような寛大さと、海のような深さを本当に感じた。



道場を出てから、我慢していた涙が込み上げてきたのを覚えている。




読んでくれたあなたに、良いことがたくさんありますように
　　　　パワーストーンブレス大好きディッキーより
　　　　バラティエ