ひばかり

午後八時三十分過ぎ
重く閉ざされたシャッターに、小雨が降りかかり
人の気配すらない。
同じチェーン店でも、街なかでは午後十時まで営業しているので
開いていると高を括っていたのだけれど
まんまと当てが外れたわけである。

数年後には、日本の三大都市と言われる市に吸収されようという町が
なんたる体たらく。まるで労働意欲が無い。
これ非常に腹立たしいことである。

私が欲しいのは、Ｂ４サイズのプリンター用紙。
仕事を終え、会社事務所へ戻るべく走らせるトラックの運転席で
これの購入を要する旨をふいと思い立ったのだけれど
自分の運転する２トントラックを
街なかの狭い駐車スペースに収めるのが、億劫であったので
一旦、会社に戻り、自家用に乗り換えた後
そこからおよそ二十分程走らせた
自宅より程近い場所に位置する１００円ショップにて
購入せん心積もりにあったのだけれど、少々考えが甘かった。
先に述べた様子で「本日の営業終了」

で、その後、数軒のコンビニエンスなど周るも
街なかではあれほど見掛けたパソコン関連用品はおろか
用紙すら影も形も無い。

すっかり意気消沈。肩を落としてして諦めました。

なるほど、昔ながらの農家が多いこの界隈では
未だパソコンの普及率が芳しくなく
それら関連用品を店に陳列したところで
民需乏しく消費効率が悪い。
そんなわけで陳列対象から外されているに違いない。

しかし、この界隈で暮らす住民は、夜間
一体何をして過ごしておるのだろうか？

まぁ、垂れ流したような阿呆面さげて時間も忘れ
カチカチとインターネットに没入するのも問題ではあるが
私が知り得る近隣住民の
“進化途上の人類然とした顔立ち”から察するに
静かな夜の憩いを、心豊かに書見して過ごすなど到底想像すら及ばず
大方、テレビの馬鹿げたバラエティ番組や、安っぽい連続ドラマに
瞳潤ませ、腹を抱えるくらいが関の山であろう。

まったく、生産性の無い無駄な時間ばかり食い潰しやがる
穀潰しどもが。

大体からして、こういった田舎とも都会ともつかぬ
中途半端な地域で暮らす御民ほど無礼で浅ましい輩もない。
彼らは、都会人の冷たさと田舎者の無神経さを持ち併せており
民度低く、愚劣の極みである。

例えば、この界隈の細い路地などで車同士対面する形で出くわした際
「お先にどうぞ」とこちらが脇によけてみる。
それに対し擦れ違いざま
当然返されるであろう「ありがとう」の会釈
これを気持ちよく受け止めるべく笑顔を用意しつつ待つのであるが
あろうことかこの愚民どもは、当たり前の様な顔でふてぶてしく
時に侵入者に対し飼犬が「がるる」とやるような目付きで通り過ぎる。

自宅向かいに住む、母親べったり初老のマザコン百姓などは
十年近くもお向かいで顔を合わせているにもかかわらず
先日、近所のホームセンター店舗内で出くわした際など
こちらが挨拶に声をかけるも、何処の誰ぞか判別つかぬ様子で
訝しげに見やるのみ。

これ、阿呆或いは廃人ね。

挨拶には挨拶で答える。これが文明社会に於ける一般的な常識であり
世間知らずの田舎者ならではの為せる業ではある。

最近近所にオープンした大型スーパーに於いては
エスカレーターを上った二階の本屋入口付近に
前述した愚民の鼻タレ子息どもがゲーム機片手に賊徒の如くたむろし
座り込み、目障りである。

それだけならまだ黙って見逃せるのだが、この調子づいた鼻タレども
店内を我がもの顔ではしゃぎ回り
揚げ句の果てには、私が使用中の旨を知ってか知らずか
トイレ個室扉を、どん、どん！と打ち鳴らすに至る狼藉振りである。

ここで「子供のすることだから」と大目に見ては
こういった手合いは益々調子づくわけで
断じて許すべきではない。

私の場合、即戦即決。
気を緩めず、これ以上無い程の凶悪なる目付き、形相を拵え
扉も砕けんばかりの勢いで叩き開き、睨みを利かせ
立ちすくむ鼻タレの足元に唾を吐く。

当然、必要とあらばそれなりに可愛がる言葉を
幾つも懐に忍ばせての行動である。

しかしながら上記、この“唾を吐く”という行為
これは後に清掃する者の身になって考えてみると
誠によろしくない行動であり、これ悪循環。

どうも愚民の中で暮らしていると
自分までもが悪疫に冒されそうで気色悪しきことこの上無い。
出来る限り無関心に、超俗的なる生活を送らなければならんな
と思った次第で、鼻タレが立ち去った後
誰も見ていないのを見計らい
私は備え付けのロールよりペーパーをもぎ取り
こそこそと汚した床に清掃を施した。

そう、ペーパー。私は紙が欲しいのだ。

あれこれ考えているうち、その探していた用紙を入手出来ぬのが
この界隈で暮らす愚民ども
いや、地域そのものの呪縛の仕業である気がしてならず
そう考えるとふつふつと怒りが湧き上がってくる。

走行中の車内、私は大声でこの近隣地域に対する悪態をつき
罵倒しながらの帰宅と相成ったのである。

しかし、帰宅した後
所有するプリンターの取扱い説明書を再度あらためてみたところ
どうやら私が探していたＢ４サイズの用紙には
対応していないことが判明。

わはは。

ということで疲れた。

本日、早目に就寝致します。




ヲシテネ。

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「・・・・・・・・・・。」