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ひばかり

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2006/10/26
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カテゴリ:カテゴリ未分類
aho666.jpg

約二ヶ月程前に携帯電話の機種変更をしたのだけれど
これがまったくいただけない。宜しくない。
まぁ、元々通信機の機能なんてものに然程拘りもしないし
それの操作法を説明書片手に覚え覚えして扱いこなす質でもない。

差し当たり、電話なんてものは、話し、かけ、さえ出来れば
後は多少機能が劣ろうが何等問題無いわけで
どちらかと云えば、如何に洗練されたフォルムであるか、だとか
うわっ面の格好良さが、これわたしの場合の選択基準
選択対象ではある。

で、今現在選択し使用している機種。
海外メーカーのものなんだけれど
これ、一言で云うなら、云わしてもらうなら、おっぺすなら

「電化製品はやはり日本製に限りますねぇ」

いやね
「こちらのほう、以前の機種のほうより機能的にも
かなり改善されておりまして、私共のほうでも御薦めの機種となりますが」
と、やたら ほう を連発する携帯電話会社営業所員の言葉に或溺せられ
選択&購入したこの機種。

更にこれの取り扱い説明書にある“便利な機能”なんて項目に触れ
さらと目を通したのみにもかかわらず
こりゃ、新しい機種であるし案外宜しいかもしらん
と、当初はカケラ程も無かった期待の念が
雲の切れ間より光の帯がさすがごとく仄かにちらり。

ところが、まぁ、実際に使用してみると、なるほど、なんだ、がっくりこん。

先に挙げた“便利な機能”とやらも国内機種では当たり前に標準装備されている
あえて特筆するまでもない御粗末なもの。
それにも増して頻発する、不具合、不具合、不具合。
まったく、不具合多きこと夥しい。

イヤホンマイクの接触不良から始まり
例えばメールの送受信、これに要する時間の長いこと長いこと
送受信が完了するまでの約1分間、全ての釦操作が不可能となるは
知らん間、アドレス帳に登録した番号に勝手に発信するは
細かく例を挙げればキリが無い程で
心にゆとりがある時などは、これも愛嬌やの、わはは
笑っておれるのであるが
苛付き、寝返りも打てぬ心の状況下に於いては
この痴れ者がっ!毛唐め!
と、この通信機及びこれに携わった全ての人々をも罵倒し、呪いたくなる。

更に本日、知ってしまった。悟ってしまったのだよ、わたしは。

この携帯電話会社より毎月発行される新機種及び
取り扱い機種を紹介する商品目録。
ふいとこれに目を通したのであるが
わたしが使用している通信機の姿、これが何処にも無い。
つい二ヶ月前は新機種として売り出されていたものが。
さらに不可解なのは同海外メーカーのそれ以前の型式機種は
掲載されていること。

此奴、業界から抹消されてしまったの?

短命だったのね。ってえことは販売台数少数
こりゃレアぢゃあないか。わーい。

喜んでる場合じゃない。

これらから推測するにこのあほ機種
頻発する不具合はわたしが使用する使用下のみならず
他使用者での使用下に於いても頻発。
結果、「こんなもの使いモノにならねぇ、金返しやがれ。
こんこんちきのすっとこどっこい」クレーム殺到。
慌てた会社側が取るもの取り合えず販売中止、イコール抹消。
概してこんなところだろう。

よって、この機種のあほさ加減は
よく「天然だねぇ」なんて中途半端な表現でつつかれ
許される範囲の表層的なあほではなく
より深層、根源的なあほだったのである。

つまり欠陥商品。

ならば話は早い。いざ、携帯電話会社営業所へ!
と、 思ったのだけれど、運転している車は2tトラック
街なかの営業所へ出向くのは駐車スペースなどの問題から
少々難儀である。

そうそう、そういえば、お客様センター なんていう通話無料の窓口がある。
まずは此処へ苦情申し立てをして、事の真相を明らかにしてやろう。

早速電話した。

ぷーっ ぷーっ こもった呼び出し音数回の後
ややあって、明朗、快活な女性の声。

「こちらはハードチンコ(携帯電話会社社名、仮称)です」
と、社名名乗りの挨拶から始まり
今現在、電話が混み合っている旨と
暫時経過後のかけ直しを促す意向を伝え終わると
再度「こちらはハードチンコです」と始まるエンドレス。録音テープ。

で、かけ直すのだけれど、やはり

「こちらはハードチンコです」更にまたかけ直す。

「こちらはハードチンコです」

「こちらはハードチ」

「こちらはハ」

「こちら」

この「こちら」の前に、さーっ、と微かな雑音を含む
無音の間(ま)があることを意識するわけでもなく
聴覚神経より連携する全ての神経が反応。
その、さーっ から即時、録音テープであることを察知。
瞬時にこれを切り、更にかける。かける。かける。

まさにイントロ当てクイズの速技さながら。

然してかけること数十回。
はは、我ながらしつこい。然し繋がらん。
こうまで繋がらんとなると
実際は録音テープをセットするだけしといて
電話番の餓鬼共、尻を掻きつつ茶をすすり
けたけたと世間話に明け暮れ放屁などしているのではなかろうか?
という疑念すら湧いてくる。

大体、あの録音テープの女の声
あまりにはきはきと屈託無さすぎて
「申し訳御座いません」なんて云われても
少しも申し訳無さが伝わってこない。

とて、鼻をすすりつつの涙声で弱々しく
「もっ、申し訳御座いません・・・ ひいぃ~ん、しくしく・・・」
などと迫真に迫られても気色悪いわけで・・・

然し、釈然とせんまま一日暮れた。暮れやがった。

まぁ近頃、私情、私生活に於いて
風波乱れ入り、平素より怒気の焔ふつふつとくすぶらせている状態なので
であるからして、こんな下らん、実に下らん事柄に対しても
体中沸騰せんがごとくにうち震えにゃならんのだ。

いや、そうに違いない。

いずれにしてもこういう状態は宜しくない。
これが元で精神に異常を来たし、きちがいにでもなってしまったら
人間の複雑なる構造上、携帯電話の様にたやすくはない。
こんな時は清しい風に吹かれて何も考えずリラックスするに限る。
幸いにして、わたしの精神は未だ正常である。

で、安息を求め俺、ベランダへ。

そういえば十五年程前だろうか、数人で友人宅へ押し掛けた際
その中の当時、長髪ロッカーであったサカグチ(仮名)という男が
何を思ったのか、突然衣服を脱ぎ捨て全裸になり
三階に位置する友人宅ベランダへ出ると
くねくねポーズを取りつつ「俺、女に見えるかなぁ」
と、まったく無意味であるけど、何故だか唐突にそんな出来事を思い出しつつ
そのサカグチの無意味なポーズを無意識
真似るつもりで右足を前に踏み出そうとしたのだけれど

がすっ、右足小指に疼痛。
エアコンの室外機に小指の爪を引っかけてしまった。
痛みにうずくまり、見ると血が滲んでいる。

ううう、蓑虫いとあはれなり。

カンカンと踏切の音。
近くで電車の通り過ぎる音。
通り過ぎたのに鳴り止まない。
と、思ったら隣人の言い争う声。

「人形を尻に隠すとは何事か!貴様!この国賊がぁ!」
怒鳴られた相手は怒りの表現のつもりだろうか、無言のまま
べん、べん、べ~ん! 荒々しく琵琶を乱れ弾きし始める。

詳細は解らぬが尋常の様子でない。
ま、知らん顔。くわばらくわばら。

ベランダ越し階下を見やると、またしても鳴り始めた踏切に堰き止められた
年経り、処々赤錆の浮いた白い軽トラックが一台。
しかるにその後ろ、我が目を疑ったのであるけれど
体長にしておよそ七、八十糎、ゆらゆらさせている尾も合わせると
三米はあろうかと思われる
巨大な深海魚の様な生物が停滞している。

その身体は青白く透き通り
脈動する内臓、骨格が仄暗い中でも明瞭に見て取れる。
どう誤認したところで犬猫の類ではない。不気味だ。

それの正体を特定するいとまも無く
遮断機が上がると、その生物は先行する軽トラックに後続し
まるで空中をゆらゆら泳ぐようにして行ってしまった。

その向こう、わたしの部屋の丁度真向かいに位置する
スーパーマーケットの駐車場には
停留しているヘリコプターを取り囲む人々。
彼らは揃いの白装束を纏っていて
上半身だけを見ると一見何の変哲も無い和服の様である。
然し、その装束の身丈、腰の辺りまでしか無い寸足らず。
それから下は陰部丸出しの半裸状態。
しかもこの集まりの大半は
萎み切った、或いは膨らみ切ったヨイヨイばかりで

見たくない。気色悪い。
しかし、何なのだろう?
あほの集団?信仰宗教?

と、突如 ばりばりと轟音を轟かせ
紫色ベースに辛子色の水玉模様が塗装彩色された
ヘリコプターが飛び立つ。

人々の輪はより周縁部へと広がり、沸き立つ鬨の声。
ヘリコプターの機体下部より、別れを惜しむテープのごとくに
弧を描き連なる腸詰。
泣き笑いの表情で見送る人々。

あとに残るは蕩蕩と広がる空ばかり。

美しいなぁ、緑色の空が。


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ヲシテネ。






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最終更新日  2006/10/26 11:47:51 PM
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