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ある内科医の独り言

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2006.05.17
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最近、あちこちのブログで取り上げられることが多くなった「当面の医師確保対策(案)について」だが、卒業を前倒しにするだの、医学部の定員を増やすだの様々な議論が交わされている。また、かのmedtoolz先生はこうした意見の是非はともかく、「どれだけ大きな反響を作ったか」が重要であり、昨今の情報発信技術の進歩に言及されている。

さてさて、ここからは僕の独り言。

医者の数が多いか少ないか、そんなことは現場の人間にはわからないのが本音だ。確かに「もう少し医者がたくさんいればなぁ…」と思う場面は少なくない。しかし、毎年同じ程度の医籍登録者があり、引退する年限も決まっていない訳だから現状では決して医師数が減っているというわけではないだろう。厚生労働省でもこうした議論は当然のことながら尽くされているのだが、あくまでも切り口は狭く、本質にはたどり着けていない。

統計的にみれば医師数は決して少なくないらしい。しかし、現場の感覚はとても医師数が多いとは思えない。このギャップはやはり仕事の内容が加味されていないことから生じているものだと思われる。

楽な仕事であれば働く医師数はそれほど必要ないだろう。逆に厳しい仕事であれば今以上に医師数が必要となる。昨今医師不足が叫ばれている背景の一つにはこうした必要以上の激務があるのではないだろうか。医師数を増やすべきなのか、それとも仕事の負担を軽減すべきなのか、いずれにせよ今すぐに解決できる問題とはとても思えない。

しかし一言いわせてもらうならば、医師数が不足しているから負担が増えた、ではなく「負担が増えたから医師数が不足した」という感が強い。特に小~中規模で展開する地方の公立病院などはろくなバックアップもないままに負担だけが増え、結果として医師数が減っていくという悪循環に陥っているように思える。救急の現場ではさらにそういった思いが強い。健康への関心が高くなり、テレビやインターネットで容易に種々雑多の情報を入手できる今、病院という場所は特殊なものではなく、いつでも気軽に出かけられる場所となった。

さらに、異常とも思える医師への訴追なども一因としてあるのかもしれない。

しかし、その結果必要のない受診者が増えたり、逆に必要な患者さんが受診できなかったりと弊害も起こっていることは事実だろう。「患者さんは素人」だからこちらとしても強くは言えない。でもちょっとした発熱や感冒症状だけで中規模以上の病院を受診しなければならない理由はない。

せっかくこれほどまでに情報発信技術が進歩しているのなら、受診について改めて考えさせる情報がもっとあふれてもいいと思うのだ。

単に数が多い・少ないといった算数的な議論ではなく、その背景にいったい何があるのかをちょっと立ち止まって考えるだけでもずいぶん変わるのではないかと思う。もし不必要な受診のために現場の医療者たちが悲鳴を上げているのなら、負担軽減だけで名実ともに医師数は充足することになると思うのだが…どうだろう?

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最終更新日  2006.05.17 11:59:24
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