今日猫逝く 16年目の冬
友達の猫が死んだとのことだった。16年前と少し前、京都の祇園で捨てられていた子猫を拾ってきて、下宿先で飼っていたのだが、1日実家に帰ることにした友達は、まあ一晩ぐらい大丈夫だろうと、食糧と水を置いて実家に帰る。 1月17日早朝。日本は終わった・・・そう思う揺れの中、下宿先は半壊となった。 猫は、死んだかもしれない、何とか、救出に向かって欲しい、そういう依頼を受け、生後2週間の猫を探しに原付を飛ばす。焼け野原となった菅原市場を抜け、鍵が不要になった部屋に入る。 シーンとしていたが、そこに、押入れから猫が跳び出て来た。全く人懐っこくない猫が、私の足元に絡みつき、顔を足に擦り付けてくる。 (そのことを死んだ時、友達に話したら、聞いてなかったと驚いていた)無理矢理、ボストンバッグに子猫を突っ込み、バイクに乗った。カバンの中からミャーミャー聞こえてくるが、外は、風は寒く、バイクは逆走、原付の2ケツ、問題なし、警察もそれどころでなく、まさしくカオス、煙が漂い、一方で人がコレだけ亡くなっているのに、何でオレは猫救ってんだ・・・という気も正直、ないでもなかった。 家に着き、猫をバッグから外に出すと、何事もないように、外に出て、そして、先程とは違い既に私を無視状態。おもろいな、私は思う。 1週間、猫を自宅で預かると、何故か、親父が一番仲良くしていたからおかしなものだ。名前まで呼んで仲良くやっている。猫も自分の居場所を見つけたようで、2,3箇所同じようなところにいる。引っかいてソファが破れる。知らなかったけど、ちゃんと用意したトイレで用を足す。 しかし、一番興味深かったのが、ふと立ち止まり、どこか遠くをじっと見つめると、暫くしたら余震が来ることだった。そして、余震が来たら、やはり、怯えているのであった。 それから16年、猫は、老衰で亡くなった。