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テーマ:暮らしを楽しむ(387745)
カテゴリ:投資・資産管理の本
這い上がれない未来
2ヶ月に1度のペースで、数人で同じ本を読み討論する会合を開いている。 次回の課題書籍は、下流社会。 参考に、書名が過激な「這い上がれない未来」を参考に読んでみた。 適当に日経新聞を流し読みはしていたが、昨年に政府が出していたらしい「日本21世紀ビジョン」の存在を意識しておらず、内容のキワドさにビックリした。 全資料をタウンロードして、目を通しておきたい。 <読書メモ> ○衝撃的な事実 ・日本の借金は1日約1000億円増えている ・2005年6月24日に財務省が公式発表した政府借金は781兆円(国債約480兆円+政府短期証券等)。 地方自治体の財政赤字は209兆円。両方を合わせると1000兆円に達する。またこの数字には年金、特殊法人等の隠れ借金は含まれていない。 →GDPの2倍を超える借金は、第2次世界大戦の日本政府の借金規模を遥かにしのいでいる。 「戦争」「革命」「ハイパーインフレ」以外の方法で、国家の巨額債務を解消される例は歴史上無い。 ・2007年から人口減が始まるという予測が、前倒しとなり2005年1~6月で人口が31,034ら減少したことが確認された。(2005年8月23日厚労省発表) ・格差社会の到来は、小泉改革が原因ではなく、経済のグローバル化と政府の借金が膨張したから。 ○偽りの未来「日本21世紀ビジョン」 ・政府(経済財政諮問会議)が2005年4月19日に「日本21世紀ビジョン」という2030年の未来図を発表した。 →政府の公式文書として、国家の破綻を初めてほのめかした歴史的な報告書(具体的回避策は示されていない)。 ・「2010年初頭までに国と地方の基礎的財政収支を黒字化した後、黒字を維持し、公債残高を引き上げることにより、小さくて効率的な政府を実現する」「万が一にも財政赤字の拡大が続くことになると、財政が経済を食いつぶすことになりかねず、最悪、日本経済は破綻することになる。少なくとも破綻を回避することは最低限必要であり、2010年初頭までの財政改革は、まさに喫緊の課題である」 →2010年までに財政再建問題を解決できなければ、小さな政府は実現できないと堂々と公表されている。 ・「2030年には少なくとも1000万人の人口減、65歳以上人口比率は、現在の20%から29%に上昇する」と予測されている。 →人口の1/3が高齢者となる社会は、世界で出現したことはない。 ・「日本のGDPは2014年頃に中国に追い越され、2030年頃にインドは肩をならべる」と予測している。 →2030年の世界については、ゴールドマン・サックスが2004年秋に出した『BRICsと夢見る-2050年への道』というレポートに書かれており、2003年には中国の3倍あった日本のGDPは、2016年に中国に追い越され、2030年には中国の1/3にまで日本のGDPは縮小するとされている。 ・「グーバル化のメリットを、日本の企業や消費者が享受できるようにするためには、世界経済との統合を強めることが必要である」とグローバル化=善と解釈されている。 →スティグリッツは「グロローバル化は人間を幸せにしない」とマイナス面を指摘している。 ○2050年、日本社会は消滅? 『2050年のわたしから』(金子勝著、講談社、2005年6月) 1990年以降の平均傾向をとって、線形のシミュレーションを用いて日本の未来を描いた結果、2050年には、数字がゼロに近づき、日本はほぼ消滅してしまう。 ・2054年には、特殊出生率は0.1まで低下し、誰も子供を生まない社会が出現。 ・2020年には、閣僚は全て世襲議員となり、衆議院選挙の投票率は2050年過ぎにゼロとなる。 ・2050年には、財政赤字はGDPの5倍に膨張してしまう、 ・2016年には、現在下がり続けている巨人戦視聴率はゼロになる。 ○官僚による「使い込み」と「食い逃げ」 ・郵貯・簡保合わせて約350兆円の資金があるが、うち140兆円は国債。210兆円は財投に投入されている。財投の半分は民間の区分では不良債権。政府が内実を明らかにしないので正確な数詞゛は不明。 ・国鉄の民営化では、国鉄清算事業団の借金は、結局、税金で穴埋めされた。 ・郵政民営化、道路公団民営化(借金40兆円)ともに、過去の官僚による使い込みの責任を回避するというもの。 ○小泉改革と関係のない「格差社会」の進展 ・『Newsweek』(2005.1.19)に掲載された,クレディリヨネ証券アジアの資料のよると、1995年に米国の輸入に占める日本の割合は16.6%、2004年には8.8%と半分になっている。それに反し、中国は1995年の6.1%から2004年には13.4%へと倍増している。 →つまり、1994年の市場最高の円高(1ドル=79円75銭)に、日本の輸出企業は海外移転を加速させ、国内の製造業を空洞化させてしまった。これが現在の日本社会の格差拡大の原因である。 ・ピーター・タスカは『不機嫌な時代』の中で、「米英では製造業の占める割合が小さくなっており、労働者の大部分がサービス産業や情報産業で働いている。肉体労働では知識レベルの差は少ないが、貧富の差が拡大するのは当然ていえる」という指摘をしている。 ○格差社会論議における研究図書 ・階級社会日本(橋本健二、アオキ書店2001) ・日本の不平等(大竹文雄、日本経済新聞社2005) ・日本の経済格差(橘木俊詔、岩波新書1998) ・日本の所得格差と社会階層(樋口美雄+財務省総合政策研究所、日本評論社2003) →全ての研究で、格差拡大を端的に示すデータが圧倒的に少なく、格差社会のはっきりした証拠はないとされている。 ○格差の広がりを示す指標 ・OECD(経済協力開発機構)が2005年2月に公表した「OECD諸国における所得分配と貧困」と題した「OECDワーキング・レポート22」 2002年の時点で、日本は貧困率(その国の平均的な世帯所得の半分以下しかない世帯の人口比率)が15.3%と27ヶ国平均10.2%を上回り、5番目に高い数字となっている。 1位メキシコ20.3%、2位アメリカ17.1%、3位トルコ15.9%、4位アイルランド15.4%、5位日本15.3% ・日本のジニ係数(所得格差指数:その値が大きいほど所得格差が大きい)は、OECD27ヶ国のうち10位となっているが、日本とイギリスだけが増大している。 1位メキシコ46.7、2位トルコ43.9、3位ポーランド36.7、4位アメリカ35.7、5位ポルトガル35.6、6位イタリア34.7、7位ギリシャ34.5、8位ニュージーランド33.7、9位イギリス32.6、10位日本31.4 『這い上がれない未来』 藤井巌喜著 光文社ペーパーバックス 2005年12月20日初版1刷発行 952円 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年05月21日 11時33分10秒
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