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高学歴ノーリターン
光文社のペーパーバックシリーズで、サクッと読めた。 高学歴者が割に合わない現状について、よく整理されていて、なかなか共感する点が多かった。 著者の中野雅至氏は、同志社大(文)を卒業後、市役所に2年勤務し、在職中に国家公務員1種行政職試験に合格し、労働省にキャリア官僚として入省したという、相当な「異色官僚」である。 キャリア官僚の報われない仕事ぶりが、紹介されていて、本当に報われないと同情した。 「農林水産省の屋上」が自殺の名所とは、初耳だった。 関西人らしいクダラナイギャグが散りばめられていて、笑えた。 <読書メモ> ○これまでの「格差研究」の概要 橘木氏は経済学者、佐藤氏は社会学者であり、格差研究をリードしてきたのは労働経済学と社会学の分野。 労働経済系は所得格差にスポットを当て、社会学系は所得だけでなく、学歴・職業威信(職業の社会的地位)にスポットを当てる事が特徴。 ・『日本の経済格差』橘木俊詔著(岩波新書2004年) →所得格差の存在を明らかにした研究 バブル崩壊で資産格差は緩和されたものの所得分売が不平等化したことを指摘 ・『不平等社会日本』佐藤俊樹著(中公新書2000年) →階層が固定化しつつあることを提示 格差を所得格差だけでなく、社会的地位や名誉というものを考慮 ・『日本の階層システム(1)』原純輔著(東京大学出版会2000年) →「学歴」「所得」「職業威信」の3つが揃った人が増えてきていると指摘 ・『日本の不平等』大竹文雄著(日本経済新聞社2005年) →日本の賃金格差の拡大は、労働者の高齢化による要因が大きいと主張。 ・『日本のお金持ち研究』橘木俊詔、森剛志著(日本経済新聞社2005年) →誰が金持ちかを分析。日本の金持ちの代表は「創業者」と「医者」。 ・『希望格差社会』山田晶弘著(筑摩書房2004年) →フリーター・ニートと高学歴労働氏やの格差を分析。格差を分析するに当り「夫婦」という概念を持ち出した。 ○増える負担 ・日本の潜在負担率(現在の社会保障・行政サービスを実施するために必要な国民負担率)は44.8%。 →給料の35.9%しか税金でまかなっていないので、残り10%近くは国債で調達している。 ○最も損をしている人々 1.一生懸命努力して一流大学に入った人 2.両親が一生懸命働いて教育投資をしてくれた人 3.所得的には中間層以下 ○支配的基準の変化 ・戦後:学歴>職業的威信>所得 ・現在:所得>職業的威信>学歴 → 「ピラミッド型学歴社会」から「ギャンブル社会」へ ・R・ライシュ(元ハーバード大教授) 「グローバル時代に入り、学歴と金儲けは関係なくなっている。大量生産から多品種少量生産の時代に移り、企業規模などに関係なく誰でもが市場にアクセスできる時代である」(『勝者の代償』東洋経済新報社2002年) ○ギャンブル社会の特徴 ・運と人脈が全て ・R・ライシュ(元ハーバード大教授) 「個人の職業的将来にとっての大学教育の実質的な価値は、何を学んだかということよりも、誰と出会ったかにある。名門大学であればあるほど、人間関係の有意性がある。」 ○ボンボン大学コネクション ・ギャンブル社会において有利なのは、人脈が得られるボンボン大学 現時点では、東の慶大、日大(日本一社長が多い)、西の甲南大、芦屋大 『高学歴ノーリターン』 中野雅至著 光文社 2005年12月20日初版2刷発行 952円 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年11月06日 15時36分40秒
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