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テーマ:連載戯曲(36)
カテゴリ:哀歌
第11場 真実
部屋で守のノートを読んでいる二人 圭介 ノートをめくる手が震えている 圭介 なんだよこれ・・・。 美咲 ・・・ 圭介 なんなんだよ・・・これ・・・。 美咲 ・・・ 圭介 守から何か聞いてないか? 美咲 首を振って 美咲 ・・・何も。 圭介 そうか・・・。 美咲 電話してみたら? 圭介 慌てて携帯を取り出しながら 圭介 そうだな・・・ 携帯で電話をかける圭介 圭介 ・・・・駄目だ。圏外。 美咲 そう・・・。 圭介 何処に行っちまったんだよ! 美咲 心当たりは無いの? 圭介 ・・・守とは10年振りだったんだ・・・会うの。 美咲 え?でも幼馴染だったんでしょ? 圭介 そうなんだけど、大学の卒業式の日にちょっと喧嘩して・・・。 美咲 それからずっと? 圭介 うん。でも会ったり話したりはなかったけど、引越の時や正月とかは手紙が来たし、お互い実家も知ってるから、何処で何をやってるかって事は分かってたんだけど・・・。 美咲 別に変わったところは無かったの? 圭介 変わったところ? 美咲 そうよ、10年も会いにくかったのに急に来たんでしょ? 圭介 変わったところか・・・変わったところって言えば、全部かな。 美咲 全部? 圭介 ああ。 美咲 どういうこと? 圭介 確かに様子がおかしいとは思ったけど、実際会うのは10年ぶりだし、10年も会わなければ雰囲気だってちょっとは変わるだろ? 美咲 そうかもしれないけど、それにしたって! 圭介 守は会社が潰れたからだって言ってた。そうとしか言ってないし、だから俺もそれを信じた。あいつが何も言いたくないのに俺が聞く必要はないだろ? 美咲 言い難くって言わないって事だってあるじゃない! 圭介 そうだったとしても、守が言わないことを言わせるようなことはしたくない。 美咲 冷たいよ・・・。だってもっと早く分かっていればさ・・・。 圭介 そうかもな・・・・。 圭介 悔しさを叩きつけるようにテーブルを叩く 圭介の携帯が鳴る 圭介 守だ。・・もしもし! 守 あ、圭介?電話くれた? 圭介 したよ!お前、今何処にいるんだよ! 守 あ~悪ぃ。ちょっと旅に行ってくる。 圭介 旅!?何処にだよ! 守 いや、別に決めてはいないんだけどさ。気分転換に。 圭介 いつ帰って来るんだよ! 守 あても無い旅だぞ。そんな緻密な旅行計画は建ててないから知らん! 圭介 知らんって・・・。 守 あ、あと、ノート忘れてったんだけど、まさか・・・読んでないだろうなあ? 圭介 読んだよ! 守 読んだの!? 圭介 読んだよ! 守 何で! 圭介 テーブルに読んでくださいと言わんばかりに置いてあったら読むだろ!普通!! 守 ごもっとも。 圭介 ああ。 守 全部か? 圭介 え? 守 全部読んだのか? 圭介 いや。 守 どのくらい読んだ? 圭介 まだ最初の方だけだけど・・・。 守 少し淋しげに 守 そっか・・・読んだか・・・・。 圭介 何で言ってくれなかったんだよ。 守 いや、言ったろ? 圭介 いつ? 守 え?言ってなかったっけ? 圭介 言ってないよ。会社が潰れたとは聞いたけど。 守 あ~それは言ったわ、けど言ってなかったっけ?小説書きたいって。 圭介 小説? 守 そう。 圭介 どれが? 守 酷いな、確かにつたない文章ではあるだろうけども、そんな・・・。 圭介 これ、小説なのか? 守 それ以外に何があるんだ? 圭介 嘘なのか? 守 何を言ってるんだ?ちゃんと目の前に原稿あるんだろ?目に見えてるもの捕まえて嘘って、どんなジョークだよ。 圭介 違うよ、中身だよ! 守 中身? 圭介 だから、この小説に書いてある内容はフィクションなのか?って聞いてるんだよ! 守 ほら、俺って脳の中で妄想を繰り広げるの得意じゃん? 圭介 ああ。 守 だからノンフィクションは無理。 圭介 そっか・・・・。 守 ああ、まあそういうわけで、しばらく旅に出るから心配されるな。じゃあ!また連絡するよ。 圭介 ああ・・・。 電話切れる 美咲 恐る恐る 美咲 嘘だったの? 2人 ほっとしたように 圭介 ・・・らしいな。なんだよ、信じちゃったじゃねえかよ! 美咲 本当に。 圭介 大体、ノンフィクションは書けないなんて言って、実際にあったことが多すぎるんだよ。そりゃ信じるだろ?って! 美咲 そうよねえ。 圭介 大体、源五郎とか実際あった店なのにまんま名前使ってるし。 美咲 それより、登場人物の名前が私たちと同じになってるもん。 圭介 使用料をとってやる。 美咲 本当よね。ところで守さんってフィクションは得意なの? 圭介 いや、得意って言うか、大体きっかけはなんか実際にあったことなんだけど、そこから膨らまして行くうちに現実とは遠くかけ離れたものになって行っちゃって、お互いに元の話ってなんだっけ?って考えなけれゃ思い出せなくなることもしばしば。だからフィクションが得意って言うより書けないんじゃないかなあ、ノンフィクションが、多分。 美咲 少し首をかしげながら 美咲 そうなんだ・・・。 圭介 どうしたの? 美咲 ん?なんでもない。 圭介 何? 美咲 何でもないって。 圭介 気になるよ。 美咲 大した事じゃないから。 圭介 じゃあ余計に教えてよ。 美咲 ・・・・ホントに大したことじゃないんだけど・・・これあんまり現実から離れてないなあって・・・。 ぱらぱらとページをめくる美咲 美咲 ちょうど今日で終わってるし。 つづく やる気変動アイテム使用中!!クリック1つでランキング上昇!? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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