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カテゴリ:Prison Colony
場面変わって回想
夏のある日 香西孝明(8) 母親 洗濯物をたたんでいる 孝明 ゴロゴロと横になりながらカブトムシ同士を戦わせている 母親 宿題は? 孝明 やったよ。 母親 じゃあ、どこかに遊びに行ったら? 孝明 いい。 母親 どうして? 孝明 別に・・・。 母親 何よ。 孝明 何でもない。 孝明 飼育箱にカブトムシをしまう 孝明 お母さん、えさ頂戴。 母親 えさ? 孝明 うん。カブトムシの。 母親 いいわよ、そんなの。どうせ、すぐに死んじゃうんだから。 孝明 そんなコトないよ。ちゃんと育てたら、卵も産むし、そうしたらまた来年孵るって言ってたよ。 母親 だったら、なんか自分で探しなさい。 孝明 分かった・・・。 孝明 台所へ向かい餌になりそうなものを探し始める 孝明 ねぇ! 母親 何? 孝明 カブトムシって何食べると思う? 母親 私が知るわけ無いでしょ?自分で調べなさい! 孝明 どうやって? 母親 教科書にでも載ってないの? 孝明 載ってないよ・・・。 母親 だったら、図書館にでも行って調べればいいでしょ? 孝明 分かったよ・・・。 孝明 部屋を出て行く 場面は戻って留置所 弁護士との接見中 弁護士 いま、言ったようにですね、少し調べただけでも突っ込めそうなところは幾つか挙がってるんですよ。あなたさえ協力してくれれば、執行猶予付きの判決までに持ち込めるかもしれないと考えてるんですが・・・。どうですか? 孝明 どうだっていいよ、別に・・・。 弁護士 え? 孝明 別に、どうなったって・・・。 弁護士 ・・・どうして爆弾を? 孝明 ・・・単純に興味があったものが爆弾だったってだけですよ。弁護士先生には法律に興味があったように、俺には爆弾に興味があった・・・ただそれだけです。 弁護士 手帳から写真を取り出し 弁護士 飯野広敏・・・彼が、あなたの作った爆弾とテロ活動を結びつけた・・・と私は考えてるんですが、如何ですか? 孝明 ・・・ 弁護士 検察はあなたをテロ首謀者の一人・・・つまり幹部の一人として裁くつもりでいるようです。でも、私にはどうしても、そういう風には考えられない。あなたは、ただ爆弾を作るだけの技術者だったんじゃないですか? 孝明 ・・・ 弁護士 「兜」・・・あなたが作った爆弾は警察内部でこう呼ばれていたそうですよ。 孝明 兜・・・? 弁護士 ええ、あなたが入れていた「角」のモチーフから・・・。 孝明 ・・・ 弁護士 警察では、過去5年20件の爆弾テロ行為に「兜」が関わっていると見ています。 孝明 ちょ、ちょっと待ってくれ。20件? 弁護士 ええ。 孝明 ・・・その20件全てに、角が入っていたと・・・? 弁護士 メモ帳に視線を落とし 弁護士 「角」が確認されたのは12件。それ以外は、爆破の状況等から同一犯と見られるモノが8件。 孝明 12件!? 弁護士 ええ。何か? 孝明 ・・・いや、なんでもない。 弁護士 もしかして、あなたが作った爆弾はそんなに多くないんじゃないですか? 孝明 ・・・ 弁護士 警察は、今回の事件と合わせて、今言った過去の爆弾事件に関しても立件を目指しています。・・・その為なら、ある程度のでっち上げも行うかもしれません。 孝明 ・・・ 弁護士 あなたが黙ってるということは、それらの事件に関しても認めるということになってしまうんですよ! 孝明 別に、良いって言ってるじゃねえかよ!もう、帰ってくれ! 弁護士 腕時計を見て 弁護士 ちょうど時間ですね。今日のところは帰ります。・・・ですが、これだけは覚えておいてください。あなが黙って何も要求をされないということは、警察が勝手にでっちあげるだけではなく、私も自分の都合の良い事実を作るということになりますからね。それが真実やあなたの気持ちとどれだけずれて行こうと・・・。 弁護士 立ち上がり出て行く 弁護士 それじゃ。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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