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テーマ:連載戯曲(216)
カテゴリ:どん・きほーて
第3場 確保
桐子、和人 公園に走りこんでくる 二人 肩で息をしている 桐子 追っかけてくる? 和人 後ろを振り返って 和人 いや、来てないみたい。 桐子 そう・・・。 和人 ああ・・・しかし、あのタイミングでお父さんが来るとは思ってなかったよな。 桐子 ・・・ 和人 だって、ちょうど、その話をしていたところにだもん。まさに、まさに!って感じ? 桐子 そうね・・・。 和人 なんだよ、怒ってるのか? 桐子 ・・・ 和人 そんなに怒るようなことじゃないじゃん。 桐子 あの時、直前までどんな話をしてるか覚えてる? 和人 何か話してたっけ? 桐子 結婚して、家を継ぐって宣言してたの!あなたが、それこそまさに!! 和人 そうだっけ? 桐子 軽くため息をつく 桐子 百歩譲って、あのタイミングで家を継ぐって宣言をしないのは、まだ許せるわよ。でもさ・・・ 和人 何だよ。 桐子 隠れるコトはないんじゃないの? 和人 隠れてないよ。 桐子 隠れてたじゃないの! 和人 違うよ。あの時は・・・喉の渇きを潤そうと思ったら自分のビールも前いたテーブルに忘れてたコトに気付いたから、ちょっと取りに戻ってただけだよ。 桐子 あのタイミングで? 和人 あのタイミングだからだよ。だって、ほら、結婚させて下さい!って言うんだよ?そりゃ喉だって渇くさ。 桐子 だったら、私が振り返った時、すぐに出てきてくれれば良かったじゃない! 和人 え?振り返った? 桐子 目が合ったでしょ? 和人 目、合った? 桐子 あなた、明らかにみんなの中に紛れ込もうとしてたじゃない! 和人 誤解だって!そんなコトしてないよ。 桐子 ・・・いい加減に認めないと、完全に私、あなとのこと見損なってるわよ。 和人 ・・・だってしょうがないじゃん・・・ 桐子 何が? 和人 心の準備も何も出来てないところに、お父さん乱入だよ?そりゃとりあえず避難しちゃうだろ?それは動物として実に普通の防衛本能だよ。 桐子 知らなかったわ。あなたにそんな防衛本能が備わってたなんて! 和人 俺だって、そのくらいは出来るよ。 桐子 いい?あなたの戦闘能力を100とすると、ウチのお父さんの戦闘能力は8000から10000よ?逃げる?ふつう。逃げたところで殺されるわよ。それに逃げ切れる訳もないし。 和人 逃げなきゃ、確実に死ぬだろ!だったら。 桐子 逃げても死ぬんだから、逃げずに死になさい。 和人 結局、死ぬのは動かないのかよ。 桐子 まあ、避けられないわね。 和人 じゃあ、結婚とか絶対に無理じゃないかよ! 桐子 私は、それでも結婚したいのかって聞いたつもりだったんだけど・・・。 和人 ・・・俺は、それでも結婚したいって答えたつもりだったんだけど・・・。 桐子 じゃあ、逃げないでよ。 和人 だから、しょうがないだろ?体が勝手に動いちゃったんだから。 桐子 もう・・・どうするのよ・・・。 和人 どうしよっか・・・。やっぱり、まだ探してるのかな・・・。 桐子 まあ、探してるわね。 和人 そっか・・・。 桐子 ええ・・・。 和人 でも、良かったな。とりあえずでも逃げられて。 桐子 そうね。でも、あの人達なんだったんだろ? 和人 え?知り合いじゃないの? 桐子 全然。 和人 でも、なんか、結婚するとかしないとか言ってたじゃないかよ。 桐子 それでも、知らないんだもん。 和人 なんだ?それ。 桐子 さあ・・・? 和人 まあ、とりあえずさあ・・・ 桐子 何? 和人 このまま、ここにいてもいつか見つかっちゃうんじゃないの? 桐子 そうよね・・・。 和人 じゃあ、とりあえず隠れない? 桐子 何処に? 和人 何処だっていいよ。夜だし、隠れてりゃそうそう見つからないだろ。 桐子 まあ・・・そうかもね。 和人 じゃあ、植え込みの後ろにでもいようよ。 桐子 ここに隠れるの? 和人 だって、ここに立ってたら見つかっちゃうし、今、何処にいるかも分からなけりゃ、動き回るのも危険じゃない? 桐子 そっか・・・そうね。 和人 じゃあ、隠れよう。 桐子 ええ。 和人、桐子 植え込みの後ろに身を潜める つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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