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カテゴリ:読書
そばかすの少年


そばかすの少年

私がこの本を知ったのは、竹宮恵子さんの漫画だったと思います。
カットだったか、何だったか・・はっきりとは覚えていませんが。竹宮さんの紹介で、本の存在を知った後、ずっと探し求めていたので。
角川からマイディアストーリーと言う赤いチェック装幀の文庫で、オルコットやネズビット、ポーターやケート・D・ウィギンなどの所謂少女もの?のお話が刊行された時には、飛び上がって全冊揃えてしまったものです。
今回、それらの文庫の中から。この本だけは、何がなんでも!と中古ショップ行きになる寸前の本の山から抜き出して、家に持ち帰ってきました。
(なので、私が持っている文庫とこのアフィリは違うものです)

昨日、懐かしい思いと結構忘れているものなのねぇ~~のぼやきの中で、再読していました。

自然豊かなリンバロストの森を舞台に、片腕しかない孤児のそばかすと。
沼地のエンジェルとの真実の愛を描いた作品・・・

と一言でまとめる事が出来るのですが。
それじゃあ面白くありません(苦笑)。

アイルランド人だと一目で分かる、そばかすだらけの少年。
赤ん坊の時に片手を切り落とされた形で孤児院の前に捨てられていたのだ。
片手だと言うので、引き取ってくれる人もなく。ようやく押しつけられた里親の所からも逃げ出した彼は、仕事を求めていた。

そして、リンバロストで材木業を営むマックリーンの扉を叩き、見事沼地の番人の職を得ることとなる。

誠実なそばかすの気性は、彼を雇ってくれたマックリーンや沼地の側に小屋を構えるダンカン夫妻の愛情をも勝ち得ていく。
しかし。その森は、昔からの宝石のような材木が眠る土地で。
荒くれ者達が一本切り出せば高額で売れる木を狙っている土地でもあったのだ。

広がるリンバロストの自然。
花や蝶、虫や鳥に囲まれて。
愛情に飢えていたがために、周囲に愛情の輪を広げるそばかすは、ある日つがいの珍しい鳥を見つける。
折しも、有名な鳥の写真家である「鳥のおばさん」のお供として。近隣の大金持ちの一人娘であるエンジェル(そばかすが付けた名前)も沼地へやってくる。

そばかすの豊かで美しい声や、紳士である態度に魅了されるエンジェル。
そばかすも、生まれついての貴婦人であるエンジェルを愛するようになる。
しかし、森の材木の切り出しの日。
エンジェルをかばったそばかすは、大木の下敷きとなってしまう。

エンジェルに対して、兄弟や友人としてではない愛情を持っていたそばかすは、自分が何者かも分からず、卑しい身の上では、エンジェルに不釣り合いであるとして。
このまま死んでしまいたいと思ってしまう。

エンジェルは、そばかすが捨てられていた孤児院に赴き、彼の着ていたベビー服を貰い受けようとするのだが・・・


かなり端折って、こういう内容です。
逆シンデレラと言いますか、そばかすは実は!!と言う急展開部分は、かなりご都合主義(゜゜)\バキッ☆と思わないでもないのですが。
読み終える頃には、そばかすとエンジェルがハッピーエンドに終わりますように!と思ってしまいますので。
良かった良かった!と思わない人は、おそらく居ないのじゃないかしら??

しかしまぁ・・挿絵が1つもなく、おまけにアイルランド訛りと言うのもあるのか?
そばかすの言葉に
「ああ、そんなことはねえ!そんなことはねえです!」
「考えてもごらんなさい」
が続くと、ちょっと読みづらい(゜゜)\バキッ☆
私が読んだのは、村岡花子さんの昭和39年初版・平成2年15版の角川文庫なので。
文章自体も古めかしかったかしら?

ただ。
そばかす、エンジェル、ダンカン夫妻に、マックリーン支配人や悪役であるブラック・ジャックももちろん魅力的には描かれていますが。
お話を色鮮やかに彩るのは、人間だけではありません。
このお話の真骨頂!は、リンバロストの溢れんばかりの自然描写ではないかと思います。
そう。ある意味、このお話の影の主人公は自然そのものなのです。

そばかすを悩ませた最初の頃の森の恐ろしさや、彼が愛情を込めて一角に作った伽藍の花の描写。
彼が餌を与える時に群がる鳥や小動物の動きなどなど。
自然や動物に目線が行った時、文章は流れんばかりに勢いを増します。
そばかすが、彼が魅了された森を怒濤のように(苦笑)話すのも、やむなきかな・・・と思ってしまうほどに。

私も花は大好きなので。読みながら、あれこれ花を思い浮かべて読んでいましたが。
こんなに色とりどりに咲いていたら、それはもうどんなに綺麗でしょう!と思っていました。
しかし、お国柄もあるのか、えーっと??となる花や知らない名前も次から次へと出てきたので。そこは想像で補ってしまいました(^^;。



だから、おそらくはゲームの攻略本は読んでも、小説は読まない姪達には、興味を惹く本ではなかったでしょう。
ただ、どんなに読みにくい本とは言え。後世に残しておきたい一冊じゃないかしら?と思うのです。

そばかすの誠意と勇気。そして、どんなに辛い時でもユーモアと真っ直ぐな正義感に溢れた心。
身なりや姿ではない紳士の精神。
そして、エンジェルの愛情深き、本物の貴婦人とは?と思わせる機知と微笑みに満ちた姿。

この二人の姿は、押しつけることなく全編を彩り。心の豊かさとは?真実の愛とは?と投げかけてくれているようです。
久しぶりに、読書をしたぁああ!と言う感じがしています。








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最終更新日  2009年08月10日 22時13分22秒
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