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テーマ:ガンの後の日常(82)
カテゴリ:癌との付き合い方あれこれ
ガンの親の子供は、大変です。うちでも、そりゃぁ、大変だったと思います。
家族がガンになった後、家庭崩壊する場合があると聞いたことがありますが、そうだろうと思います。無理を抱えた家をなんとか持ちこたえようとしながら、だんだん壊れていくのは、分かります。 無理を抱えそうになったら、ある所で、抱えないことにするしか選択はなくなる、と思います。親にとっては子供は背負ってやりたい大切なものだけれど、背負いきれない時、背負わないようにするしか解決策がないということは、あります。 今のことではないです。でも、ほんのちょっと前、そうでした。この子がいることによって、私の寿命が縮む。もう一歩、自分がもっと重い症状だったら、同居せず、治ってくるまで、祖父母のところにでも預けたい。そうした方がいい、というケースも、きっと実在しているでしょう。 でも、よく考えたら、自分が元気であった頃でも、乳児期とか、子供に振り回される日々に耐え切れないと思ったことはありました。そんな時には夫に預け、喫茶店に逃げました。本質的には同じです。病気の時でも、元気な時でも、親であっても、大事な子供のことであっても、背負いきれないほどに背負ってはいけないのです。親が壊れてしまっては元も子もない。 でも、背負ってもらうことが必要な時に背負ってもらえない子は、また、大変です。 私は入院が長かったので、その間は夫が子供二人を見ました。夫はよく頑張ってくれました。私が居なくても全く大丈夫だ、ということは、実証されました。それはそうなのですが、お父さんが頑張った分、子供たちもつっぱって頑張りました。入院まぎわの家には癌関係の本も急に増え、子供も、ガンという言葉を目にしました。意味をどの程度考えたのか分かりませんが。退院して家にいるようになっても、植皮の傷が生々しくて膝に登って座ることもできず、痛がるので顔に触ることもできないので、気楽にふざけることもできない借り物のようなお母さんでした。 入院中はつっぱっていた子供たち、お父さんに言わせれば大丈夫な子供たちも、母が家に帰って来ると、徐々に反動がきました。 上の娘は固くなっていました。だんだんと柔らかくなり、一時的に幼児に戻ったような時期もあり、心の深いところは分かりませんが、今は山は越えています。国語で心情理解の問題が分からないのは、関係があるかと思っています。不安や、苦しさや優しさについて、心を閉じてしまうことで乗り切ってしまったので、そういう問題を気持ち的に理解できない。でもそれは、徐々に理解するようになってくれると思っています。色々他にも課題はありますが、表面上はそう大きく崩れることはありませんでした。 弟の方が、もっと大変でした。私の退院当時、年長さんでしたが、だんだんと、保育園に行けなくなりました。 私の見たところ、精神的に疲れているようでした。本当に、サボりというわけではなく、園へ行くための力が出ないのです。小学校への入学を数ヵ月後に控えていました。この様子では小学生になれないのではないか、と思いました。毎日、おんぶして保育園まで送りました。おんぶして行けば、行けるのです。家において一日相手をするのは、私の体力・精神力がもちませんでした。毎日おんぶして行くうちに、だんだん元気になってきました。小学校入学後は、学校にもなじんで、自分で通学できるようになりました。 でも、やはり、心の力が出ないようでした。何か書いたり、作業をしたりするスピードが、著しく遅い。小学校の先生との面談では、他の子に意地悪をするのではなく、自分のものを傷つけたり、捨てたりする事が多い、とのことでした。絵を描くのも著しく遅く、画面の端に小さく何かを書いて、時間がかかってやっと出来上がってきた時に、バック全体を黒く塗ってしまう、とのことでした。 ランドセルのカバーも、破けていました。捨てそうになるのを何度も何度も修理して、つけなおしました。私はカバーを見るたびに、これはこの子が、自分の心は傷ついているんだ、と、無言で訴えている印だ、と思いました。捨てさせなかったのは、それでも、みんなと同じように学校生活を送らねばならないし、そうする力はある、と、息子に教えたかったからです。 家ではベタベタの甘えん坊でした。私によじ登ってくるのは、やらせておくわけにいきません。上に書いたように、自分の寿命を縮めるわけにはいかないから、邪険にもしましたし、この子をキライだ、と思うこともありました。甘えたい一心だから、言っても分かりません。息子とは、あなたのことは好きだけれど、痛くされるのはキライ、と、何度も何度も話しました。一年坊主のくせに、おっぱいを飲みたがりました。かあちゃんが死んだら飲めないから、と言った、と、会社の同僚に話したら、泣かしてしまいました。 息子のベタベタ甘えはまだ続いています。男の子は普通でも甘えん坊が多いらしい。でも、二年生の生活はそれなりに順調に進みつつあります。 先日は遠足があり、その絵が学校の廊下に貼られていました。人物が画面いっぱいに二人、力強い表情で描かれていました。背景は色々な花や建物らしいものが沢山書かれていました。かなり変わってきていて、安心しました。 友達や知った人に会うと、かあちゃんは病人だから、と説明していた息子ですが、最近はそれも無くなってきました。まだ一応療養中なので、おんぶの回数は減らしていきたいものだと思っています。かあちゃんが好きだから、と言ってくれるのも、あと何年もないかもしれません。とにかく細く長く生きて子供たちの行く末を見届けようと思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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