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市場拡大期にEOSがやるべきこと
プロ機EOS-1Dシリーズのメジャーアップデート、中級機EOS 40Dの発売と続いた今年のキヤノンだが、その間に本誌でも何度かインタビューを掲載したイメージコミュニケーション事業本部長で常務取締役の岩下知徳氏が、4月1日付けでグローバル環境推進本部と品質本部の本部長(兼任)に異動。イメージコミュニケーション事業本部長にはコンパクト機事業を統括していた真栄田雅也氏が就任した。真栄田氏は主にコンパクト機の指揮を執りつつ、デジタルカメラ事業全体を統括する。 そして岩下氏が担当していた一眼レフカメラ事業のトップには、かつて一眼レフカメラの設計・開発に携わり、近年はイメージコミュニケーション事業本部下のレンズ事業部で事業部長を務めてきた打土井(うちどい)正憲氏が担当することになった。 年内に発売される機種は、いずれも打土井氏がレンズ事業部長を務めている時期の製品だが、来年も後半以降になってくれば、製品にも打土井氏の意向が反映されてくるだろう。その打土井氏に、キヤノンの一眼レフカメラ開発の方向について話を伺った。 ■ 市場に合わせてラインナップの見直し イメージコミュニケーション事業本部 カメラ事業部 打土井正憲事業部長 ──4月から一眼レフカメラ事業を担当されるようになりました。発売予定の製品を含めたラインナップは、その時点で決まっていたものでしょうが、あえてラインナップ全体を自己分析してください。 製品ラインナップは市場を予測した上で作り込みますが、現状を分析すると、キヤノンがあらかじめ予測していた範囲以上に市場が大きく伸張しており、その結果、ラインナップにも見直しが必要だと考えています。 現在はプロ2機種、ハイアマチュア2機種、エントリークラス1機種の展開で、基本的なレイヤーは3層です。このラインナップ数も含めて、現状に合わせたラインナップの再調整を行なう必要があると考えています。 とはいえ、すぐに何かを急いで開発するわけではなく、現行ラインナップに対して必要な強化を図りつつ、少しづつラインナップの手直しをしていくことになるでしょう。 ──つまり、予想を超えた市場拡大を受けて、ラインナップ数を増やしていくということでしょうか? 製品ラインナップは、実は我々の戦略意図よりも、顧客自身の声が決めるところがあるため単純ではありません。本来、純粋に効率的な戦略を採ろうと思えば、きちんとニーズが集中しているスイートスポットに、ベストな製品を投入していけばいい。しかし、市場が大きくなってくれば、メーカーの都合良くスポットを押さえるだけでは製品数が足りません。 今年は他社もフルサイズセンサー搭載機を発売します。また、低価格機の市場も今以上に活性化してくるでしょう。加えて、キヤノンが一歩抜け出ていたイメージセンサーの品質に関しても、他社が追い付いてきたと認識しています。しかし、これこそが正しい競争です。良い意味での競争を経て、もっと高画質、もっと高速、もっと使いやすい製品へと繋いでいきます。 ■ 一眼レフの“取り柄”を大切に EOS 40D(レンズはEF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS) ──具体的な開発の方向に関して、いくつかのイメージはできているのでしょうか? 銀塩で写真をやってきた人がデジタルの世界に来て、一番便利だと実感するのが高感度撮影の利便性です。フィルムに比べると圧倒的に高感度の画質が良いうえ、フィルム交換なしで自由に感度を変更できます。 まさにデジタルならではの長所ですが、高感度以外にも、デジタル技術のブレークスルーによってカメラを変えることができると考えています。たとえばフィルムカメラでは、ゴルフのスイングを分析することはできませんよね。シャッター速度も連写速度も足りない。しかし、電子シャッターを用いれば、常識外の連写速度やシャッター速度を実現できるでしょう。 これはあくまでも例ですが、一眼レフカメラのように大きく、重い製品は、何か大きな取り柄がないと売れないものです。現在は画質の高さや即写性などもあって売れていますが、本質的には持ち歩きにくいものですから、それを超える取り柄を持たなければならない。 ──もちろん、そうした面も多分にあるでしょうが、一方で低価格化や機能のシンプル化といった方向へと向かう流れもあります。 市場が広がれば、当然、そこに対して適切な製品を出していきますが、一眼レフカメラの“取り柄”をないがしろにしてまで低価格化してはならないでしょう。 かつて、銀塩カメラの時代は、あまりに簡単かつ低価格な方向に急速にシフトしたため、それまで丁寧な説明とサポートを行ないユーザーとの関係を築いてきた良質の販売店が疲弊し、説明しなければ売れないカメラは売らなくなりました。 一眼レフカメラのように機能指向の製品は、製品の長所や使い方などを理解してもらわなければ、もう市場は広がっていきません。価格クラスにかかわらず、きちんと一眼レフなりの付加価値を持った製品である必要があります。 ──EOS 40Dの発表会では、今後はエントリーユーザーの買い換えや買い増しがあり、その受け皿となる製品が投入されることで中級機市場が拡大すると予測していました。一方でニーズが多様化しているため、果たして40Dだけではニーズを満たせないのでは? と思うのですが、いかがでしょう。40Dはスペックこそ素晴らしいものの、従来機の延長線上にしかなく、さらに適応ユーザーの範囲が広がるという印象は持てませんでした。 EOSシリーズ全体の流れで言えば、現行ラインナップをベースとして、それぞれに最新の製品を投入していかなければダメです。40Dは10D、20D、30Dと続く製品の後継機種ですから、ここはしっかりと従来路線で最新の性能を提供しました。この路線は堅持しながら、新しく何かに挑戦していくという方針です。従来機に関しては、それが気に入って購入しているお客様がいるのですから、中途半端にコンセプトをフラフラと変えるのではなく、きちんとアップデートしていきます。 40Dに関しては連写速度、センサーの質、それに操作性など、しっかりと必要な部分は押さえた上で、買いやすい価格帯に導入しています。価格が安いと言われていますが、価格だけではなく、一方できちんと基本性能を上げています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007年09月11日 13時33分09秒
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