朝日放送とテレビ朝日の関係を考える【4】
引き続き、朝日放送とテレビ朝日の関係について個人的な考察をお送りしています。さて、僕が「朝日放送とテレビ朝日は不仲ではないか」との疑念を持ったきっかけになった「野球中継の制作権」に踏み込んでいきます。疑念を持った発端は7月19日に甲子園球場で開かれたプロ野球オールスターゲームの第2戦をANNのネットワークで中継したことにあります。今回はゲストに有名男性タレントを置いたこと、終了まで完全中継しなかったために野球ファンの大きな反感を買いました。それ以上に大きな反感となったのは、甲子園球場があるにもかかわらず地元局であり準キー局でもある朝日放送に中継の制作権を与えずテレビ朝日が全権を握ったことにありました。オールスター戦のみならず甲子園球場からのプロ野球中継を全国ネットするさいは慣習として朝日放送が放送機材・アナウンサー・専属解説者を用意して同社から各地へ送出します。これは他の在阪局も同じです。しかし今回は放送機材の用意と送出だけで、アナウンサーもテレビ朝日から呼び、解説者もテレビ朝日専属の人を起用しました。朝日放送は何十年にも渡り阪神タイガースやオールスター戦の試合中継を制作し、時流に媚びず正統派の中継を続けエキスパートとして成長し視聴者の信頼を得ている,という自負があります。しかし今回は「制作協力」として表面上朝日放送がクレジットされただけ。明らかに在京局主導で進められている「スポーツ中継のショウアップ化」の押し付けです。関西圏の視聴者はもとより、全国の野球ファンが怒るのも無理ありません。「甲子園でのプロ野球中継=在阪局制作」という図式は全国的に刷り込まれているのですから。この一件以外にテレビ朝日には、前科があります。それは昨春大阪ドームで開かれたWBC壮行試合の中継。これも地元である朝日放送ではなくテレビ朝日主導で制作されました。ですが両局間の連携がうまく行かなかったのか放送事故を起こしました。それでケチがついて日本代表チームは本大会で「歴史的恥辱」「歴史的汚辱」で敗退したのです。その反省もソコソコにオールスター戦の中継をテレビ朝日が独断でコーディネイトしたことが、関西圏の視聴者の反感を生み、両局の不仲を印象付けたのではないでしょうか。もし阪神がセリーグ本優勝を果たして日本シリーズの放映権がANNネットワークに回ってきたら、同じことの繰り返しになりそうな気がします。そうなってしまったらなお一層視聴者の反感を生むでしょう。下手をすれば両局の摩擦や対立が拡大して、朝日放送が「ANNを脱退してJNNに再加盟する」と言い出す事態になりかねません。こんなことにならないためにもテレビ朝日は直ちに姿勢を改めるべきです。今回で、一連の考察は完結といたします。