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「エイダ・マルスティーン! 貴様との婚約は破棄だ! いつもこのアリスを虐めて!」 宴もたけなわ。 第一王子サリュート様は、腕に腰の細い少女を絡ませて近づいて来ました。 卓の上の料理に舌鼓をならしていた私は、すぐには聞こえず。 「話を聞け!」 私の腕を重そうに掴み上げます。 「このぶくぶくとした豚が!」 その一言で周囲の視線が一斉にサリュート様に向かいました。 「何てこと」 「豚のことをそんな口調で」 「あんな鶏ガラの様な女をつけて……」 やがて卒業の祝福のために国王陛下が豊満なお体を揺らしていらっしゃいました。 「今、婚約破棄とか聞こえたが?」 「はい、この豚の様に醜く意地悪な女には我慢ならず」 「……やはり国外に留学させるのではなかったな」 そう。 豚は神聖な、我々の血となり肉となる高貴なる動物です。 それを罵倒する言葉として使うなんて。 「お前もその貧相な身体では国は治められぬ。離宮へ行け。その女も下働きに使え」 「……!」 「婚約破棄は認める。豚の様に美しくまろみを帯びた令嬢への詫びも込めて」 その場の福々しい身体の皆様は、明らかにずれている王子の追放に喜んでいらっしゃいます。 さて、と私は再びパーティの料理へと向かいました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.21 00:28:24
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