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「フィアナ…… すまないが僕は君とは結婚できない。君の様な冷たく完璧な女より、情に厚い妹のイプシーの方に僕は惹かれてしまったんだ……」 パーティの席上、婚約者の男は妹を脇に抱えながらそうのたまった。 「では仕方ありませんね、イプシー!」 私は手袋を妹に投げた。 「はい、お姉様!」 彼女はそれを受け取ると、ドレスをばっと脱ぎ捨てた。下には訓練用の胴着。私もまた同じ様に脱ぎ捨てると、側に居たジョルジュがドレスを持ってくれた。 「行きます」 「ええ」 それから十五分ほど、私達は拳を合わせ蹴りを入れ、時には投げ倒し、戦った。 だがどうしても勝負がつかない。 お互いの身体があざだらけになり、疲労が目に見えてきた。 ここだ、と私は妹に渾身の一撃を決めようとした時――妹がよろけた。 まずい。このままでは致命傷になる! その時。 「よせ」 低い声と共にジョルジュが私の拳をやすやすと止めた。 「勝負はついたろう」 「わかったわ。そして私はあなたについていく」 「お姉様……」 私達は堂々と会場を後にする。 ぽかーんとした男の顔があったが知ったことではない。我が家の家訓は「強い者が全て」なのだ。 そして私は、私より強いジョルジュの腕を取った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.08 00:34:57
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